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第十五話 玉藻之前

 「……フェイト」

 「うん、わかってる」

 「獄――狐火――」


 姉さんに頷きかけた瞬間、狐火が飛んでくる。それらを余さず全て新調した武器で相殺していく。自分には当たらなくとも、後ろにいる護衛対象に被害が及ばぬように全て叩き落とす。最初は子爵へ飛んだものは無視したが、三馬鹿貴族が護ろうとするので、結果的に護ることに。


 「ちょっと!なんで私のだけ撃ち落とさないのよ!」

 「テメェは王家とは関係ないだろうが!よって護衛対象にはならないんぁよ!三馬鹿もいい加減分れ!ソイツとお前らじゃ命の価値が違うんだよ!」

 「口論しながらでもこちらへの警戒を解かんとはさすがやなぁ……」

 「この場で狐の守護獣を使ったことは謝ろう、だがこちらも護衛としてこの場にいるんでね、最低でも明日の商談に影響のないようにはしたい」


 厄介すぎる、人を騙すのが本文の妖狐、狐耳と一本の尾、九尾とは断定できないが、守護獣とは断定できる。大天狗と同じ出力か、幻獣なしで何処までできるかな。


 「玉藻様!」

 「おや、遅かったなぁ…まあよい、明日の商談君等も来てもらうで、それが条件や、」

 「わかった、それではまた……」

 「…………」


 気配が消えるまで警戒を揺るぐな、今来た狐の女もかなりの手練だな、警戒する分には十分すぎる所作だ。他には?人数は、実力は、どこからでも来る可能性がある…………


 「はぁっ…はぁっ…はぁっ…」

 「なにあれ、幻獣よりも怖いんだけど」

 「幻獣の圧に加えて商人としての力があるのも理由かな」


 宿に着いたが、警戒するべきことが多すぎて精神的にかなりの負荷がかかった。夏も終わったというのに、大量の汗でシャツがびしょ濡れである。怪談話で背筋が凍るとはよく言うが、これはそれとは別の恐怖だ。仲間には引き込めなさそうだ。


 「フェイト、遅れてきたあの幻獣何かわかる?」

 「白い毛に四の尾なら、天狐だね、僕じゃ相性悪すぎるかな」

 「じゃぁ私だね」

 「おい、戦うつもりか?」

 「いや、念には念をってね、ある程度の用意は必要だから」


 商人相手に武器を持って戦うのも変だがアレ相手にそれはできない思考だ。妖狐は人を騙すのが半分だから。


 「悪いけど今日は早めに寝させてもらうよ」

 「私も、精神的に疲れたかな」


――――――



 「ようきてくれはったなぁ、ちゃんと護衛の子も来ているようで関心関心、それじゃあ付いてきたってや」

 「はい、よろしくお願いしますね玉藻商会様」

 「うむ、主要貴族は毎年ここで買い物してくれるから感謝してるんやで?まぁ今年はちょいと特殊みたいやけど」

 「キツネを信用しろというのも変な話でしょう」

 「いいなぁ、しっかりと理解しとる。だからこそや二人だけ異常な業を持っとるがゆえに惜しい、才がないのが惜しいんよ、」


 才か、確かにないな。それでも周りが努力をしないから上に立てている。商人の鑑定眼はなめたらだめだな。物だけじゃなく、人の本質を理解する眼を持っている、才能や性格から天職を割り振れるのができる商人だ。


 「空賊が活発化しているのもあるけど、今回は隣国についてやブロッサムやないで、ユピテルの隣、つまりはあんたらの国と関係が最悪の国ミッドガルドや」

 「公国が?」

 「そや、種族差別がかなり激しい国でなによりユピテルから分離した貴族、私との相性が悪いからなぁ。頼んどきたいのよ。なんせこの姿やしなぁ」


 ミッドガルド、意味は人間が住む世界という意味。まぁ正確にはコームミッドガルド公国という名前だ。剣聖が一度も勝てない強い騎士がいるらしいが、最近は情報がないと言っていた。その計画は低くていいかもや。


 「軍事強化が顕著なんや、まるで戦争の準備をするようにな、それと、魔獣を操る道具があるという噂もある。今からの用意じゃ間に合わんよどうする?」

 「戦争もかかわるとなると、私一人の考えでは難しいです、軍事運用道具は公国に流れれば問題ないので」

 「そうか、なら前座は終わりや、といいたいところやけれど、そっちが手持ち無沙汰やろ、付いてきたってや」


 ふむ、僕と姉さんだからできることか、僕たちの才能を教えてくれるのかそれとも別の何かかまぁ…最低限守るものは守るとしよう。


 「そっちのちっこい方」

 「さすがに失礼じゃないですか?」

 「ほれ、まぁ…質が上がっただけやけど」

 「……」


 刀か、それも短めの、確かに先ほど買ったものよりは質がいい。よく切れそうだ。ただ装飾が少し派手な気もするが。


 「そっちの嬢ちゃんはこれかな?」

 「……」

 「なんや?さっきから両方黙って……それに葛葉と鈴鹿も」


 鈴鹿、鈴鹿御前か?伊勢と近江の境にある鈴鹿山に住むとされる伝説上の女性で女神・天女、女盗賊、鬼など、伝承によって正体が様々だったがここでは狐の形をとるのか、確かにゲームとかでの鈴鹿御前は狐の形をとっていたな。一部鬼もあったみたいだけど、それよりも葛葉といったか?

 葛葉、葛の葉、そして葛の葉狐、安倍晴明の母とされる狐の名だ。室町時代に作られた安倍晴明出生説話【信太妻】、【信田妻】の登場人物、葛の葉という名がついたのは歌舞伎の時だが、安倍晴明の母といえば天狐と言われるがこちらも創作においてだ、けどそれ以上に天狐は厄介すぎる……


 「玉藻之前様、」

 「様はいらんよ、なんや?」

 「今日は商団と合う約束でもありましたか?」

 「?!ないよ、五人くらい残したってや、聞かねばならんことがあるから」

 「了解!」


 あまりやりたくはないが、商品破壊されて難癖つけられとも困る。少し本気で殲滅するとしよう。姑獲鳥に怒られるかもしれないけど、それでも長引かせるよりかはマシだと思う。


 愛宕太郎坊 ×比良山次郎坊×鞍馬山僧正坊×飯綱三郎×大山伯耆坊×彦山豊前坊 ×白峰相模坊 ×大峰前鬼坊 ×鴉天狗×白狼天狗×木の葉天狗×酒呑童子×熊童子×虎熊童子×星熊童子×金童子×魏石鬼八面大王×大獄丸×鬼童丸×茨木童子×女郎蜘蛛×土蜘蛛×七歩蛇×野鉄砲×魍魎×大ムカデ×瀧夜叉姫×餓者髑髏×狂骨×馬骨×雷獣×狐火×管狐×狐憑き×ヒバシラ×煙々羅×鎌鼬×姑獲鳥×送り狼×火車×迷い火×不知火×鵺×ヒヒ×猫又×化け猫×赤衣×木霊×古椿×牛鬼×蟹坊主×手長×足長×雪ん子×一目連×ハンザキ×蛟×赤舌×河童×海坊主×磯ナデ×影鰐×アカエイ×濡女×イクチ×幽霊船×船幽霊×川姫×橋姫

 「まだ百に届かないか一刀全断――百鬼夜行――」

 「それ、怒られない?」

 「反動ないから今回は大丈夫、店のとに何人、人化は分からないけど転がってるます、」

 「百に届かんて、今何体、随分な圧でてたで、」

 「確か六十八、名の通り百欲しいんですがね」


 まぁ守護獣だって意思がある、付きたいもの守りたいものに付くだろう。有名どころである雪女とかがいないのは場所もある。けどこういうのが定期的にあるのかこの商会長居したくない……


 「うん合格や、それに旧友の気配もするしな付いて付いてやる、七十一やな一々襲撃食らうもめんどくさいし、国絡み以内での商談は部下だけで済むしなあ」

 「……」

 「随分警戒するなぁ」

 「狐を信用できるわけないでしょう」

 「なおさら合格や」


 「……――我が名はフェイト・ストレンジ新たなる守護獣として玉藻之前を迎え入れたい――」

 「――我が名は玉藻之前、フェイト・ストレンジの新たなる守護獣として迎え入れさせてもらう――」


 「これが守護獣との契約」


 守護獣との契約、名で縛るだけだが。言葉に発して言霊となり、契約となる。今この場にいる人間では僕と姉さんしか見たことがなかった。それでもって他の二人も同じように契約をして、軽い使い方のレクチャーをする。


 「狐はやっぱり使いやすいのか近いづらいのかわからん」

 「数は?」

 「炎、獄、幻、浄だから四だけど」

 「使いづらい?それ」

 「そこから他の守護術を考えると?」

 「ああ…」


 僕と姉さんに対しての話は終わったらしく、今は待合室で姑獲鳥に拘束されている。


 「のんきに話しているのはいいけど、自分が何したか理解してる?」

 「反動なかったからいいでしょうが」

 「だめです、前回腕にヒビを入れたことを私は忘れていませんからね!それに…もう失敗を怒り成功を正面から褒めてくれる人はいないでしょう」

 「「…………」」

 「世間一般では貴方達は子供です、素直に怒られなさいな、それとも反抗期?」

 「ずるいなぁ」


 親がいない中での僕達のいまの親は守護獣達だ、その中でも姑獲鳥は一番お母さんをやっている、こうなると親離れが難しいことを実感する。


 「終わりました……」

 「……姑獲鳥か、」

 「玉藻之前、なるほど今度は二人を誑かそうと」

 「人聞き悪いことを言わないでほしいねぇ、付いていくだけや何の文句がある」

 「喧嘩は契約解除だよ」

 「フェイトの顔を立てておきましょう」

 「そうやな」


 これで問題となる、修学旅行の前半が終わった。

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