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第十一話 国に立つもの

 「それで、王妃様はどういったご要件でしょうか」

 「そうね、決闘での言動について聞こうと思ったのだけれど、理由はわかるわよね?」


 やっぱり聞いてくるよな、人を殺したかどうか。人の実力は人を殺したかどうかで実戦の差が生まれる。人を殺せばその重みを知る。それを知らないものは緊急時への対処ができないものが多い。


 「そりゃまぁ、冒険者で対人戦をやればいつかは通る道ですよ、その経験談もあります」

 「そうですか……その歳で、いえ具体的には?」

 「始めて二年、つまり五年前ですね、空賊討伐に参加したことがあるのですが、その時に……周りも余裕がありませんでしたから、何人、殺したんでしょうね、確実とは言えませんが、殺しました」

 「五年前、つまりは十ですか……分かりましたではその分を差し引いて話をさせてもらいます。私はフェイトくんのことは許していません」


 それはそうだろう。昇格も首輪の意が強く、殿下に非が多かったこともあり公的には許した。けど、それはあくまで政治的な側面であり、クラルスという一人の母親としては許せるわけではないだろう。


 「それでも息子の不手際で迷惑をかけたことここに深く謝罪させていただきます」

 「謝罪されるような立場ではありません」

 「そこは、わきまえるのね」

 「あれは決闘であり、公爵令嬢および皇女殿下の代理として動いたまでです、今とは状況が違います」


 立場が違う、状況が違う、決闘と今では何もかもが違う。この場において僕と姉さんは本来頭を下げ上げることはない方が良い。それを非公式だから、お忍びだからと許されているのはこの人の器量の良さなのだろう。


 「そうね、立場、こう言ったらなんだけど、子爵家の子なら、愛人でもよかったのよ、あの子今まで女っ気がなかったから。言葉での説得、そこから実力行使、やり方としては問題はないわ。でも王家の人間の名前を覚えずにいることも問題だし、何より言葉の節々にある無礼な態度、それはいただけないわ。そこまでの経験と心身があるのなら、もう少しうまくことを勧められたのでは?」


 まぁ確かに、少なからずばかにするような発言はした。それでも頭が冷えなかったのだから仕方がないと言える。


 「フェイトくん、いえ、これはエリスちゃんにもいえることだけど貴方達の政敵は多いわよ、あれでもヒュドールに期待していた人は多いの、公爵家との橋渡しをしていたことから警戒心は強いわ。二人ともこの先のことは考えているの?」


 一応、姉さんは恩人にあたる、貴族として独立はしているけど、恩人の家族だからか心配はしてくれるようだ。


 「ないですよ、強いて家のでしたら、このまま冒険者を続けます。これが私たちの生きる方法ですから」

 「分かりました。……ではこの話らこれで終わりにしましょう。ヒュドールのクラスはAでしたね?」

 「そうだけど、行くの?母さん」

 「決闘で負けたのにも関わらず、まだ関わりがあるようですので、一言言いに行きます……お騒がせしました」

 「ありがとうございました」


 一礼をして出ていったクラルス様、どちらにせよこれ以上は僕達が出る幕ではない。おそらく公的に息子を叱りに行くのだろう。これで懲りればいいがまぁ決闘で大敗したのにも関わらず、関係を続けているのだ。たとえ母からの言葉でも懲りることはないのだろう。



――――――



 「さて、ヒュドールあなたが指揮をしての出し物は、喫茶店でしたよね、なんですか、この法外な値段は」

 「何か変でしょうか?値段は下げたのですが、内装はカトレアが案を出してくれましたよ」


 我が息子ながら何を言っているのだろう。外での、平民が扱う値段を知らないのね。そこはまだいい、教えていなかった部分もあるのだから。けど、なぜ子爵と居るのか、決闘で負けて、近づくことを禁止されているはずなのに。


 「その女をここに呼びなさい、すぐに問い詰めます」

 「母上も私達の関係を邪魔するのですね、それではあわそられません」


 思わず机を叩いてしまった。けど、いつまで子供気分でいるのかしら。


 「今すぐに連れて来なさい!」

 「い、嫌です! 俺たちの関係を認めてくれるのなら――」

 「決闘騒ぎを起こしておいて何様ですか!近づいてはならないと言われたのに関わっているのはそちら、全面的にあなたが悪いです!」


 話が進まない、学園に入る前はまともだったのに、人一人の介入でこうも変わるのか……やはりストレンジ家は警戒したほうがいい、どこまで見ているのかはわからないけれど、国の政に対してかなり敏感ね、こちらに取り込むべきではあるけど、それをさせない意思表示をさせている。


 「分かりました、まだ頭が冷えていないようなら、仕送りについても考えさせてもらいます。それと、ストレンジ家は関わるのなら細心の注意をしなさい……国を背負って立つものとして、今の貴方ではそれができるとは思えません」

 「…………」


 今のヒュドールでは危険すぎる。カトレアといったかしら、ずいぶんとやりてなお嬢様ね、王家の貴族を言葉巧みに誘導して、両立させるなんて、使い方次第で毒にも薬にもなる。

 けど、ストレンジ家と子爵が両立できないのが救いだね、それどころか、ストレンジ家の方が勝っている。平民がだ。貴族に対して、王族を味方につけた貴族に対して、平民が優位に立つ。これほど警戒するべきものはない、本来ならば実力や政治に対する理解から、正式に貴族として迎えたいものね。



――――――



 「……なぁ…」

 「どうした?スペシオ」

 「お前は二つ名とかないんだな」

 「二つ名?」


 唐突な質問に僕は首をかしげる。


 「そう、エリスさんもあるだろ〈底冷〉が」

 「私の敬称ならぬ別称ね、底は言わずもがな身分を指す、そして冷は私の守護獣、体育祭の模擬演習からつけられたね、たぶん今年もやるだろうけど、フェイトは出られないかな」

 「なんで?」

 「ほぼ推薦だからね、でもまぁフェイトに二つ名をつけるなら〈百鬼夜行〉だね、たしか技にもあったでしょ?」


 確かにそんな物もあった、一度しか使っていないしもう使いたくもないけど、あれは反動と代償が大きすぎるのが問題だ。もともと守護獣は守護霊と同じようなものだと天照大御神は言っていた。そして、人が扱いきれるものじゃないと、霊獣が多かったが総勢百の守護霊による重撃はうでを潰した。空賊退治に使用したものだ。人を直セス攻撃することはないが、自分への痛みがこれだけ殺したんだと言うように、腕を締め付けてくるのだから。


 「そうだね、もう使いたくはないけど、でも最近空賊が問題になっているから使うかもしれないな。三馬鹿貴族も嫌でも現実を見るだろうな」

 「三馬鹿貴族?」

 「あまり口外するなよレッド、女に籠絡される馬鹿という意味で姉さんが付けたんだよ」


 僕には甘いけど、直接的でないにしろ僕が標的になると暴走を起こすことが多い姉さんは、この決闘騒動が終わった後にはそう呼ぶようになっていた。使うのは僕と姉さんだけの2人だけのほうが多いのは、立場があるからだ。廃嫡されたとはいえ、国を背負って立つ者たちへの暴言等は言ってはいけないのである。まぁこっぴどく怒られただろうな、ビオラさん曰く、かなりの敏腕らしいから。

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