八話
「よーし、今日は魔法の実技をやってくぞ」
ゴードゥ魔法学園、名前には魔法とついているが文武魔どれか一つでも秀でていれば入学が可能。正確に言えば、それ以外でも一芸に秀でていれば入学も可能だけど。例えばスポーツとかね。
だから剣の才能はあっても魔法はからっきしの奴もいるし、その逆も。頭だけの奴も多いしな。
だが、何度も言うが俺は全てが最高クラス。この世界屈指の名門校でも特進クラスのトップ層である。
はっきり言って自慢である。
「ジーグ、先生ちょっと職員室に行くことになったから苦手な奴の面倒見ててくれ」
「はい」
まあだからこうして、係でもないのに頼まれたりするわけだけど。
武術が完璧でも魔法が全くダメな事は良くあることだ。両方極めるというのは難しい。だからこの学園では武術特化の人には簡単な魔法を覚えさせることにしている。逆に魔法特化の人には近接系の武術を教えている。
至ってシンプルな話。武器をブンブン振り回すだけでも良いが軽い傷は自分で治せたり、牽制、目くらまし、そんな事を自分でできたら確実に生存率は上がる。
簡単な魔法なら頑張って学べば習得できるのだ。
逆もそう、魔法士は遠くからガンガン攻撃できるが近接はやばい。だから懐に入られても前衛が来る少しの間でも武器で身を守れれば体制を立て直せる。
当たり前の事だ。だが大多数の人は片方を疎かにしがちだ。時間がない、特化型の方がいいと言って。
まあこの学園に入れるほどの何かを持っている奴にそんなバカはあまりいない。入学するまで剣一本でやってきたとしても、入学してから魔法を覚えようとする奴も多いから大切な授業だ。
この時間は基礎ではあるが、その基礎を疎かにする奴は足元を掬われる。魔法特化で特進クラスに入ったからと言って、この魔法の基礎の授業をさぼるような奴は次の入れ替えで下のクラスへ降格するだろう。
その点、マイ天使マイムーンは……
……
あるぇぇえ? いない? 噓でしょ? いな……
あ、いた。いた。良かったぁー
”降格するだろう”、を撤回するところだったよ。マイエンジェルの前では俺の発言などあってないようなものだ。
てか、もう元気に教え始めてるわ。ブリブリしながらね。反応とか、身振り素振りが一々ブリってるんだよなぁ。
てかやっぱり、魔法の技術もすげぇな。ホリィも俺と一緒で、オールマイティなんだよな。
俺と一緒で……
俺と一緒で……
「わたしもたいがいオールマイティだけどな」
「リテさんやぁ……あんたはまじでなんなんだよ……」
――
「二人共いいよ。後はその魔力を手に集める感じ――そうそう! 落ち着いてね」
「「ジーグ君ありがとう」」
「うん」
先生がなかなか帰って来ないけど、みんないい具合にいってるな。リテもまじめに……
「いいよいいよ、マツモトイイ〇! 真ん中もっこり、タチひろ〇!」
うん……ありゃ、ダメだ……
スーパーティーチャーホリィはどうだろうか?
「トモエイル君! その調子だよぉ、がんばれがんばれ。フレッフレ、トモエイル! 君!」
おーおー、元気に飛び跳ねておる。
飛び跳ね過ぎて、君つけるの忘れたな。
それにしてもゆっさゆっさ揺れておる……
今日も銀貨一枚……
バカ! ばか! 一生懸命教えているのにそんな邪な気持ちでホリィを見るんじゃない! ……にしてもトモエイルめ、あんな間近で見やがって……
トモエイル君は、剣術特化。見たところ魔力はけっこうありそうだけど、少し魔力の扱いが苦手そうだ。
スーパーティーチャーホリィが上手に教えているから、少しすれば上達していくだろう。
「トモエイル君、ホリィちょっと水の妖精さんに会ってくるから少し休憩しといて」
「……あ、ああわかった」
イケメントモエイル君は、色々と察したようでそれ以上何も言わなかった。
――
先生全然帰って来ないけど、サボってんのか? なんかトラブルか?
それから少し他の生徒を見ていると、急激な魔力の高まりを感じた。
これは、高まりというより……
暴走――すぐさま原因を探ると、それはトモエイル君からだった。
魔力の扱いが上手じゃないのに、魔力量が多いトモエイル君。自主的に魔力を練っているうちに、行き場を失った魔力が暴走し始めたのだろ。
これはまずい……下手に魔力量が多いからこのまま暴発したら――
修練所なんかひとたまりもないぞ……どうする……
まずは、クラスメイトの避難か……だが、トモエイル君をほっとくわけにもいかない。暴発したら間違いなくトモエイル君は死んでしまう。かと言って、あそこまで高まった魔力を制御するのは俺でも相当な集中力がいる。下手をしたら二人共、ドカン、だ。
どうする。そろそろ皆もやばい雰囲気を感じ始めている。トモエイル君に至ってかなりまずいと言うのを理解してきたようで、顔が真っ青だ。
このままパニックになるのはやばい……仕方ない、一旦トモエイル君を落ち着かせて、クラスメイトを避難させすぐに戻って来よう。こっからは時間との勝負だ――
「みん――」「トモエイル君落ち着いて!」
と、言いかけた瞬間、今まで聞いたこともない大きな声でホリィが叫んだ
「みんなも落ち着いて! 魔法係の人はクラスメイトを修練所の外へ避難させて! 避難が終わったらすぐに魔法科の先生を呼んで来て! 急いで!」
「わ、わかった!」
「リテ! と、ジーグゥー……ジーグゥーも残ってくれる?」
「モウマンタイ」
「もちろん俺も残るぞ!」
「……ありがとう」
ホリィ……なんて的確な指示。
こんな事言っていいのかわからんが、カッコイイ。
凛々しい。今まで感じたことのない、感情をホリィに対して感じている。
それほどまでに、今のホリィは美しかった。
まるで、絶対的カリスマで群衆を先導する革命家のようだ。
この土壇場で自分が選ばれたのが、頼ってもらえたのが誇らしい。そう感じてしまう程にホリィはカッコ良かった。
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