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四話


「リテ、おはよう」

 

 俺はもう当たり前の様にリテと呼ぶことにした。なんか話が合うから気を使わなくていいし、仲のいい女友達を得た気分だ。

 異性との友情は成立しない? 俺はすると思っている派です


「おう」


「ホリィは?」


「あぁ、水の妖精に会いに行くってどっかに行ったぞ」


 水の妖精? ……あぁ、なるほど、お花摘みって奴か。


 朝から可愛いな、ホリィは


 早くお目にかかりたいわ


「けっこう時間かかってるし、デカいのが出てるのかもしんねーな」


「おいー! そういうこと言うなよ! もっとオブラートにいけよ!」


「くっくっく」


 ほんとにこいつは。マジで見た目はきれいなのにな。


 真っ赤な長い髪、赤い瞳、キレイな肌、お胸……十人が十人振り返るような美人なのに……


 まぁ、逆に話しやすくていいけどさ



 っと……


「ほらこれ、昨日の分だ……」



 俺はそういって、銀貨を一枚リテに渡した



「あ? なんだこの銀貨は?」



「何って……こないだ言ったろ、使()()()()銀貨払えって……だから、その分だよ……ホリィの分は後で直接渡すから……」


「マジで夜使ったのかよ……きぃーも」

 

 絶対零度を軽く超えた視線を俺に向けるリテ。そこらのゴブリンならその視線だけで瞬凍していることだろう……


「……って冗談だよ! 噓に決まってるだろ! やめろよ! その軽蔑のまなざし! 本当に冗談だからな! 若い男子のちょっとお茶目ないたずらだろ! 本気で受け止めるなよ! 精一杯のボケぇ! がんばって考えたのぉ! そこまで言わせんなよぉおお」


「その必死さが逆に……」


「ちゃうちゃう! 一生懸命考えたちょっとセクハラ込みの冗談だから! 勘弁してくださいよぉ、リテさーん」


「どんなシュチュエーションだった?」


「……教室でホリィと三人で」


「……きぃーも、ガチの奴……」


「ちげーから! ただのノリ突っ込みってやつだよ! 勘弁してくれよ……」



 そんなくだらないやりとりをしていると、マイエンジェルがやってきた。


 やっぱりいつ見ても可愛い。


 銀色の髪は日の光を浴びて絹糸の様に輝き、純白の素肌はまる純水で育った白百合の様に美しい、そして全てを見通すような碧い瞳。

 

 たまらんな……



 ちょっと前までトイレで、踏ん張っていたとは思えん程……ってそれはいかんだろ、それは。


 流石に妄想の中とはいえ、本人を前にそんな想像はいかんだろ。


 うん、いかんよジーグ……


「なになに! なんでそんなに盛り上がってるの? てか、いつの間に二人はそんなに仲良くなってたのぉ?」


 え?


 俺はその時、マジで時間が止まった。喧騒が止み、世界が引き延ばされたように錯覚した。遠くから客観的に自分を見ているような……

 とにかく整理が追いつかなった。

 

 だってホリィが俺のイス半分に座って来たから――

 一個のイスに俺を押し出すようにホリィが座り、一個のイスを半分こしている。その距離わずか数センチ。

 ホリィの席は俺の斜め前だから、わざわざ俺の所に座らなくてもいいんだよ? なのになんで俺の所に? え? なにこれ? もう告白……っといかんいかん、リードをしっかり〆んと勇み足のワンコが飛び出して行ってしまう……


 それにしてもメチャクチャ近い! メチャクチャ近い! メチャクチャ幸せ! 


 クソいい匂いする! なにこれ? え? 女子ってこんないい匂いすんの? すげぇ優しい香り


 しかも、ちっちゃな椅子を二人で座ってるから二の腕が当たってるんだけどぉお! 俺の理性が家でしちゃうぅぅうう!


 それに横に顔向けたら、顔がくっつきそうで向けない! 


 ホリィの距離感が近すぎて、ドキドキ学園が止まらない……


 ……な、なんだ、ドキドキ学園って……


 と、とにかく、やばい……体密着してる……何度もいうがメチャクチャいい匂いする。


 今人生で一番鼻が活動してる、バレないようにめっちゃ嗅いでる



「いや、ジーグがなぁ、昨日な――」「っ! ヤキュウ部同士!」


「え?」


 俺は、神速の反応を見せリテの言葉(密告)を遮った。心臓がドクンドクンと大きく飛び跳ねる俺を見て、少し楽しそうな表情を魅せるリテ


「いや……同じヤキュウを愛する者同士、話が合ってさ……仲良くなったんだよ……なぁリテ!」



「……そうかもなぁ」


「あぁ! なんか隠し事してるぅ! しかも、リテって呼び捨てになってるしぃ! えーんえーん。ジーグゥーが意地悪するよぉ」



 こらこら。やめないかマイエンジェル


 出てない涙を俺の腕で拭かないでおくれ。腕を掴んでグリグリ顔を擦る度に俺の心臓は爆発してるよ。もう俺の心臓はグスタフを通り越してるぞ?



「おいおい、あんまりくっつきすぎるなよ。ジーグが興奮しすぎて、なんか机が持ち上がってきたぞ? なんか棒でも伸びてきたかぁ? あぁあん?」



「ん? ジーグゥーはなんも持ってないよねぇ?」


「も、ももも、もちろん。何も持ってないよ?」


「確かに、手には持ってないよな。てか、机を持ち上げるほどのモンももってねぇか?」


「はぁぁあん? 持ってますよぉ? 凄いのいますけどぉ? フェンリルいますけどぉ?」


「?」


「おぉお、伝説の召喚獣ときたか。素晴らしいねぇ」


「ねぇねぇなんのお話? ホリィついていけないんだけど?」


「おう、後でじっくり聞かせてもらおうぜ? 放課後、ジーグのおごりで晩飯行こうって誘われてれるからよ。銀貨ももう()()貰ってるし」


「おい! 二枚もって」


「いいだろ?」


「……いいけどさ」



 ニヤリ……

 

 俺は誰にも見られないように、小さく口角を上げた。


 ま、まぁちょっと、計画とずれたけど、恥ずかしい想いしてまで銀貨一枚払った価値はあったな。



 二枚目はぼったくられたけど……




 文武魔揃えた俺の計画はこうだ。


 →こないだのノリで銀貨一枚払う

 →なんだかんだ言いあう

 →一盛り上がりする

 →ホリィにバラさない代わりに晩飯をおごれと言われる

 →ホリィも誘われる

 →渋々内心ウキウキで、了承する



 我ながら完璧。脳内自主練ではもっと完璧な流れになるはずだったんだが……


 銀貨一枚余計に払ったのは少し痛いが、必要経費だと割り切ろう。


 なにせ、愛しのホリィとディナーに行ける――


「私はいけないよ……」



 ――その時、俺の人生は終わった。世界から光がいなくなり闇が支配する世界へ変貌し、歓喜の歓声たちは絶望が木霊する地獄と化した

 ちょっと何言ってるかわからない……


 ゆっくりと、声が聞こえる。なのに周りの風景はいつも通り。

 理解が追いつかない。

 胃の中に土嚢をぶち込まれたような気分……


 好きな人に拒絶される。


 誘いを断られる


 拒絶……拒絶……


 唯一の救いの女神、リテ神を拝見する



 爆笑……俺の死に顔をみての爆笑……



 ゲームセット……


 後は灰となって流されるのを待つのみ……



 ……


 ……



「……だって、ホリィはまだジーグゥーに誘われてないもん。誘われてないのにいけないよ、ぐすん……」



 延長! 延長! やっぱり延長ぉおおお!

 光も歓声も戻って来て! 土嚢は帰っていいから!


「リテだけ誘って、ホリィの事は誘ってくれないの?」


 超至近距離での上目遣いやばっ

 出てない涙拭ってる

 そんな碧くて綺麗な瞳を向けられたら……昨日までが限界だと思ってたホリィへの気持ちがさらに限界を超えて行ってしまうよ。


 んーメチャクチャいい匂いする、ってそれはもういいか……


 ん?


 ……あれ? 俺は大丈夫か? 朝何食ったっけ? 臭いの食べた? こんな近距離に来るってわかってたら、昨日適度に運動して汗流して、十分な睡眠取って、朝軽く散歩して、日光を浴びて、シャワーを浴びて、朝食にはリンゴでもかじってきたのに。


 こんなに近づけるなら、ちゃんと準備してきたのにぃ! 今日の俺はホリィと近づいても良い俺だったか? ホリィ? ちょっと待って本当の俺はもっといい感じの俺なんだよぉ? 

 

 信じてくれぇ! ホリィ!


「もちろん、ホリィも来てほしい! てか、ホリィに来てほしかったんだよ!」


「わーい! やったぁ! いくいく! 絶対にいくよぉ」


 あぁ……嬉しくてはしゃいで飛び跳ねるのは、それはそれで可愛いんだけど……






 二の腕密着タイム終わっちゃったぁ……



 

 





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