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三話

 なんで? なんでなんで? 

 

  え? 今なんて?


 教室の窓から見えるのは、新緑が眩しい校庭の景色。春の柔らかな陽光が、微風に揺れる桜の若葉を照らし出し、時折、白い花びらがはらりと舞い落ちる。遠くの空はどこまでも青く澄み渡り、希望に満ちた学園生活の始まりを象徴しているかのようだ。そんな穏やかな風景とは裏腹に、俺の心は嵐の海のように騒いでいた。

 って……いやいや、なに語ってんの。落ち着こう落ち着こう。

 

 いきなりバレるわけない。そんなのありえないだろ。


 一旦落ち着こう。


 俺は常に冷静な男だ……冷静と冷静の間で生きる男。


 クールオアクール、クールかクールなんだ……


 ……

 


 ……



 ふぅー、大丈夫だ。これはあれか? えっとぉあれだな……うん、



 たしか、四百年前の魔法戦国時代の英雄ノブリの側室にボッリィって言うお姫様がいたはず。

 

 うんうん、いたいた、けっこうマニアックな人物だけど、なんか物語にも出てきたりして知ってる人は知ってるって感じのやつだ。


 うん、それだ、それを言ってるんだ。

 そこから会話を広げようとしてるだ。

 俺が歴史好きなの知ってるからだな。


 あぁーそっかそっか、よかった。

 ホリィの友達とも仲良くなりたかったし、良かったぁー



「あぁ、あの英雄ノブリの――」「ちげーよ、私の幼なじみのホリィのことだよ、んなぁ側室なんてどうでもいいんだよ」


 あ、ボッリィの事はしってんだ、へぇー

 てか、なんで急にそんなに口が汚くなってんの?


 ……


 ……



「そぉ、そ、それは、どういう、どういう、視点から捉えた、話かな? 俺が思うに、人類学的にも、哲学的にも、詩的にも、あと、えっとぉ……」


「グタグタうるせぇな、ジーグ、お前はホリィに惚れてるだろ?」



「ぐっ……な、なにを根拠に……」


 


「私はな、ホリィの幼馴染だ、ずぅーっと一緒にいる。だからわかるんだよ、ホリィに惚れてるやつの事が」


「そそそんなの、個人の感想であって、なんの根拠にも……」


「そりゃそうだ、お前の心が()()わかるわけじゃねぇからなぁ。だからこうして直球で聞いてんだよ。んでどうなんだよ? ホリィが好きなんだろ? ジーグゥーって呼ばれて耳まで真っ赤にしてえらく嬉しそうにしてたじゃねーか?」



「グスタフっ」

 俺は心で吐血した。


「あ? なにいってんだよ?」


「うるさい、俺には答える義務はない……とだけ言っておこう」



「なるほどなるほど……でもいいのかぁ? さっきの会話を聞いてたらわかると思うけど、私とホリィはクソ仲良しだぞ? そんなクソ仲良しのクソ幼馴染は味方にしておいた方が良くないか? あぁあん?」



 何回クソって言うんだよ、言葉わりぃな……でもリテさんも可愛いんだよな……


 って違う違う。


 ……確かに、メリットはありそうだよな。好きな人の仲良しさんが味方になるってけっこうなメリットだよね? 



 ――妄想中――



「ジーグ昨日な、ホリィがお前の事カッコイイって言ってたぞ?」

「グスタフっ」



「ジーグの事夢で見てキスしたって言ってたぞ?」

「グスタフっ」


「なんかお前と一緒に帰りたいって言ってたぞ?」

「グスタフっ」


「ジーグ昨日な、ホリィがお前の事、あの落ち着いた低い声が、まるで春の小川のせせらぎみたいで、なんだか安心するって言ってたぞ?」

「グスタフっ」


「なんかお前と一緒に、放課後の帰り道、夕焼け空の下を、ゆっくりと並んで歩いてみたいって言ってたぞ?」

「グスタフっ」


「ジーグのもう一人の息子を見てみたいって言ってたぞ?」

「グスタフっ」




「グスタフっ」

「グスタフっ」

「グスタフっ」


 ――



「おい、ニヤニヤすんなよ気持ち悪りぃな、どんだけ妄想してんだよ? 流石にホリィは息子が見たいとかいわねぇーぞ?」



「んな! え? なんで? まさか変なスキルで俺の純情(妄想)を!」



「私は人の妄想が見える! ってちげーよ、ただの勘だよ勘。てか、そんな事考えてんのかよ」

「考えてねーわ! 具体的な大きさとか数字言った方がいいかな? とか考えてねーわ!」



「……やっぱりやめようかな。お前の味方すんの」



「いや! ……待て、……お願いする」


 俺がお願いすると言った時の、リテさんの笑顔は凄かった。可愛かったとかの意味ではない。

 あくどかった、下衆だった、醜悪だった、下心満載だった。策略と謀略が渦巻き、まるで獲物を前にした肉食獣のように、じっとりとこちらを見つめている。


「お! やっぱりホリィに惚れてたか。あのブリブリ具合が可愛いのか? あぁあん?」


「ど、どこだっていいだろ。あんだけ可愛いんだから好きになったって不思議じゃ……ない」


 そう。不思議じゃない。顔かよ、って言われるかもしれないけど。そうだよ! と言っても良いくらい可愛くて、可愛くて好きになってしまったんだから……しょうがないじゃないか


「おーおー素直なこって」


「だけど、なんで俺の味方なんてしてくれるんだよ? はっきり言ってリテさんになんのメリットもないし、ぶっちゃけ俺とリテさんって全然仲良くもないし……」


 多分今まで挨拶もあったか微妙なレベルだ。ホリィと話すときは基本二人で話してリテさんは会話に入ってこない。


 存在は知ってたし、ホリィからも聞いていた。ただそれだけの関係。こんな恋の仲介役を買って出てくれるような仲ではけっしてない。


 なんでだ……


 ……



 はっ! まさかこれって……よくある、恋を応援するふりして、実は俺の事が好きなパターン。

んで、俺がホリィの事で落ち込んでる時、夕焼けをバックにあの赤い髪を靡かせながら優しく声を掛けてくるんだ。



 ――妄想中――



「なに落ち込んでるんだよ……お前が笑ってないと――きちぃーよ……お前には私がいるだろ? 私じゃダメか?」



 いや、ダメじゃないんだけど……だけど、ホリィが好きだからさ……いや本当にリテさんはめっちゃきれいだし、是非ともお願いしたい部分もあるんだけど。やっぱりホリィが好きだしさ。


 ごめん、でも慰めてくれて嬉しいよ……


 

――


「んなパターンねぇよ! ジーグなんて興味の欠片もねーよ」

「なんなんだよ! なんで心読めるんだよ! この年齢の男の子の心読むなよ! ガラス細工の比じゃないくらい繊細なんだから」


「お前のにやけ顔から色々伝わってくるだけだよ」


「ちっ」


「理由は良くある奴だ。面白そうだから。分かりやすくていいだろ? 私は人の恋を応援するのが好きなんだよ」


 あくどかった、下衆だった、醜悪だった、下心満載だった、そんな笑顔で話すリテさん。


 まぁ俺ももう引き下がれない所に来てしまったから仕方ないが。 


 じゃあ契約内容の確認と行きましょう――


「具体的には何してくれるんだ」



「ホリィにお前を売り込むような事はしねぇぞ? 私がするのはちょっとした情報を流したり、言っても問題なさそう事をおしえたりするだけだ」



「……」



「なに渋い顔してんだよ。それだけでも、価値があるぞ? ホリィが嫌いな事はしないで済むし、逆に好感度が上がることはできる。困ったら相談にだって乗ってやれるしな」


「……」


「変に調子に乗って告白しないで済むしな」


「ぐっ……」


「まぁ便利な情報屋だとでも、思ってくれたらいい。対価は観察という形で貰うからよ」


「……わかった。よろしく頼むよ。リテさん」


「これから、仲間になるんだからリテで構わねぇよ。私もジーグゥーって――」「それはダメ」



「くっくっく。わーったよ。んじゃまぁ、よろしくな? 恋愛戦線……チーム恋線結成――」「それもダメ」


「かっかっか。せいぜい楽しませてくれよな」


「リテが楽しめるかわからんが。俺は全力で頑張る」


 こうして俺は邪神と契約してしまった。


「おうおう頑張れ。あ、あと一つ私に惚れんなよ?」


 そういうリテの笑顔は正直可愛かった……イタズラっ子がイタズラを成功させたような、可愛らしい笑顔で言って来た。

 これがホリィと出会う前だったらちょっと――


「ばっ……ばかぁー、んなことあるかぁ! ホリィ一筋だわ! そのパターンもあるあるだけど、今回はないわ!」

「そうかそうか、使うなら夜の妄想だけにしてくれよな?」

 

 いや……ないな。ないわ……いきなりこんなネタぶっこんでくる奴ないわ


「お前、そういうことを女子が言うなよ」


「顔真っ赤にして、胸を見てるお前に言われたくねぇよ。……今夜あたり使われそうだな……おい、一回使ったら、銀貨一枚払えよ? ホリィの場合もだぞ?」



「つ……つっ、使うかぁ!」



 こうして俺は力強い味方? を手にした。




 

 次回! 銀貨二枚!!








「面白い!」「続き読みたい!」など思った方は、ぜひ感想、ブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします!

していただけると自分でもビックリするくらいモチベーションが上がります! 



ぜひよろしくお願いします!



明日も二十時位に投稿します。

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