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19 小さな悩み事


 ワルイージュにタイをひったくられた後。

 それはそうと、研究テーマを何にすべきか俺は思案に暮れていた。


「あ。浅そうな人……」

「お。眠そうな人……」


 考え事にうってつけな日当たりのいいベンチを見つけたので腰を掛けると、どうやら同じことを考えていた奴がいたようで図らずも相席する形となってしまった。

 ファンシーなツートンヘアがチャーミングな、リトルでプリティなガール。

 ミーのクラスメイト、ピコリー・ピコリーだった。


 ベンチに座って短い脚をぶらんぶらんさせる様子は膝に乗せた上でギュッとしたくなる愛らしさがある。

 だが、小人族は長命種だ。

 こんなナリで齢3ケタなんてこともありうるのだから不思議なものだ。


「お前も考え事か? 魔道具の新作に行き詰まっているなら俺がアイデアを貸してやってもいいが」

「あ――」

「浅そうな奴のアイデアは要らないよな。みなまで言うな。傷ついちゃうだろ」


 小さな口にパーを突きつけ、なんなら耳も塞ぐ俺である。


「そう……。ボク、考え事。というより悩み事かな……」


 眠そうなまぶたがゆっくり閉じてから、さらにゆっくり開かれる。


「ボク、ダンスパーティー出る……」

「そうか。勝手なイメージで悪いが、お前には社交の場より薄暗い研究室のほうが似合っていると思うぞ」

「ボクもそう思う……。でも、故郷の族長から文が届いたんだ。式典にはなるべく参加しなさいって。ボク、一族の星なんだってさ……」


 毛虫より小さなピコリーの眉が熱湯でもかけられたようにグニャリと歪んだ。


 獣人族は、力自慢。

 ドワーフ族は、手が器用。

 そんな種族的な強みを小人族は持っていない。

 強いて言えば、「合法○リ」として一部から絶大な人気を勝ち得ているが、まぁ、これは強みというより弱みだろう。


 とにかく、幼い見た目も相まって小人族は何かと軽視されがちだ。

 だからこそ、ピコリーのような神童(?)を輩出できたことは一族の誇りなのだろう。

 それで、社交の場に押し出してなるべく多くの人に見せびらかしたい、となるわけだ。

 とうの本人からすれば、迷惑な話だろうけどな。


「身勝手……。魔道具を作る危険な子だ、ってボクをハブりものにしたくせに。手のひらがドリルなんだ……」


 どんぐりを頬張るリスのようにぷくーっ、とするピコリーはやはり可愛い。

 しかし、……ドリ、なんだって?

 魔道具の名前か?


「そもそも、ピコリーはダンスできるのか?」


 素朴な疑問をぶつけてみると、


「振り付けは一度見たことあるから覚えてる……」


 さらっと、すごい答えが返ってきた。


「でも、衣装ない……」


 小さな指が着崩した白衣の裾をつまみ上げる。

 着崩したというか、サイズが大きすぎるだけだな。

 引きずっているせいで裾がどろんこだ。

 その白衣でダンスパーティーはオススメしないが、普通に制服でいいんじゃないか。

 学院の催し物なんだしさ。


「なんですか、このガキ。蹴っていいですか」


 いつの間にか、ルマリヤがいた。

 えらく険のある表情を浮かべ、リンゴでも持つようにしてツートンヘッドをむんずと掴んでいる。

 蹴るなよ?

 どうして蹴ろうと思う?

 こんなに愛くるしいのに。


「学院のベンチで若様と日向ぼっこは、私の『若様とシたいこと100選』の一つです。こんなちんちくりんに初めてを奪われるなんて屈辱です……」


 そんなどうでもいい理由で人様の頭を掴むな。

 そこには、国家機密級の才能が詰まっているんだ。

 ついさっきまでいた紫の縦ロ女なら好きなだけ蹴ってくれてよかったのだがな。


「……」


 ルマリヤの翡翠の瞳が俺の胸元をじっと見つめている。

 タイを失ってはだけた胸元を。


「まさか事後ですか!?」


 言うと思ったよ。


「それも青○……」


 ごごごごご、と謎の地鳴りが轟いた。

 震源地はもちろんルマリヤだ。


「深そう、闇が……。ボク帰る……」


 怒れるメイドに恐れをなして、ピコリーはそそくさと逃げ去るのであった。


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