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暁の史記  作者: 焚火卯
三章
80/124

第二十四話『宣戦と宣誓』

 相見えてから敵対し、戦闘し続けていたネイア・アナリシス。

 存在自体を感知していなくとも、いる予感はあったレーア・ジオメトリ。

 まだ全容の見えない、想定外の闖入者であるダイス・アルジェブラ。

 いったい誰から対処すれば━━、


「━━ああ、もう、知らないからな!」


 そう不満とも憤慨とも取れる気持ちを吐き出しながら、最初に対処したのはレーア・ジオメトリだった。

 何か確信があったわけではない。ただ、彼女がダイスの命を脅かそうとしていた。

 だから、フレンは動いたのだ。


「ふっ」


 飛来するレーアの腕を取り、地面に組み伏せる。

 関節を捻りながら叩きつけ、浮き上がったところを横に蹴って━━、


「振り抜いてはダメだ!」


 ダイスの声が届く。しかし、フレンの蹴りはそれよりも早くレーアを━━砕かなかった。

 見れば、膝から先の脚が失われていて、


「━━っ!」


 直後、フレンは苦鳴を噛み潰し、超速で廊下の外へ飛ばされていた。

 理解を成し遂げる前に、外で滞空していたネイアとぶつかりそうになる。


「ちょ、流石に無理です~」


 当たって砕ける直前、ネイアは転移を発動し間一髪でフレンを避ける。

 最悪、殺しかねないスピードだったので避けるのは正解だが、しかし、フレンの身体から勢いが減衰することはなく、美しいまでに直線を描いて飛んでいく。

 だが、ネイアと邸とフレンが一対二ぐらいの距離になったとき、フレンは優しく受けとめられた。

 背に感じるのはのは、生命の源である大地。それが浮かび上がりフレンを受けとめた。


「他に拘うなんて余裕じゃねーか」


 フレンを受けとめるのに意識を割いたダイスは、復帰するレーアの猛追を受ける。

 地雷原を走り抜けているかのような爆音が鳴り響いていた。


「さてと~、いい感じに分断されましたが……」


「━━さっき、触れられたな」


 浮かぶ壁面の大地から伸びている根に片足で立ちながら、フレンは手に架かる一筋の光を見つめる。

 それは陽光を吸い込み輝く、美しいネイアの銀髪だった。


「思えば、避けたのも妙だ。避けたということは接触の可能性があった……」


「━━━━」


「案外、簡単に届くかもしれないな」


 光明━━ネイアの髪ほど細いものだが、それでも一本通ったのは確かだった。


「な~に勝ち誇った顔をしてるんですかぁ~。まだまだ、遠いと思いますが?」


「そうだな。━━だから、近づけていく」


 根を起点に背面跳びをし、大地の裏側に回り込む。そして、その上半分を散弾のように蹴り飛ばした。

 当たれば確実に血煙になるような攻撃だが、もちろんネイアには当たらない。

 消滅する。消滅していく。だが、それはネイアの正面にあるものだけだ。


「露骨に見せれば対処は可能と━━」


 大地の一粒がネイアに到達したのを観測するのと同時に、フレンは残しておいた下半分を足場に飛び出す。

 正面切って━━ではなく、ネイアを越えた土塊の一つにだ。

 そして、そこに爪先をかけて空中で旋回。死角からネイアを掴んだ。


「そん━━」


「落ちてこい」


 空中戦の利を阻害するため、ネイアを邸の方向に投げ飛ばす。

 しかし、貫通してしまいそうな速度のネイアを、レーアが衝撃を受け流しキャッチした。

 ━━その隙をダイスが逃さない。


「━━━━」


 自分ごと大地を押し上げて、屋根を突き抜けたところで止まる。その隆起した大地から蔦が一本伸びて、フレンはそれを伝ってダイスたちに合流した。


「無茶を言うが……ここからは合わせてほしいのだよ」


「だいぶ無茶だな。だが、任せておけ」


 地に足が付いている状況ならば、一番速いのはフレンだ。早急に立て直し、レーアに向かって突貫する。

 しかし、


「避けたな?」


 レーアはネイアを抱えたまま、転移を発動する。

 二人には何故か攻撃が当たらない。しかし、彼女らは回避も行うのだ。

 そこには条件が必ずある。

 それを解明するためにも━━、


「使いたまえ」


 フレンの行く手に、ダイスが先んじて土を固めて作った剣を、空に描いていた。

 その柄を握りしめ、この剣が生み出せる最初で最後の斬撃を放つ。


 ━━世界がぶれるような衝撃とともに得られたことは二つあった。


 一つ目は、やはり衝撃に耐えきれず剣が消滅したこと。

 二つ目は、その斬撃が彼女らに届かなかったことだ。

 しかし斬撃は消滅したのではなく、二分され、邸を縦に切断したのだった。


「レーアの魔法に関して、一つ事実を教えておくのだよ」


「攻撃が当たらないやつか?」


「いかにも。━━あれは、位相の変換だ」


 フレンが吹っ飛ばされたのも、位相が変えられたと聞けば説明がつく。

 つまり、フレンは自分の蹴りを自分で受けたのだ。


「できればもっと早く言ってほしかったな」


「申し訳ないとは思うのだよ。しかし、相性を量りたかったのだ」


「相性?」


「そう━━」


「━━アタシらのこと、べらべらしゃべってんじゃねーよ」


 空間が撓み、不自然に切り取られたレーアの腕が伸びてくる。

 それを脚で跳ね上げて、本体に向かおうと━━、


「━━待つのだよ」


 ダイスの囁き声が、風に乗ってフレンの耳にだけ届く。


「最低限の情報だけ語るが……全力の君とレーアが戦えば、君以外の全てが死ぬ」


「━━━━」


「後は君の判断に委ねる」


 レーアに向かう足を加速させ、フレンはネイアに焦点を合わせた。

 投げ飛ばしたときのダメージはない。だが、一矢報われたが故の躊躇いはネイアに植え付けられた。


「死角を作らないように必死だな」


「どう思ってくれても~。それが一番強いので」


 煽りには対して乗っかってこなかったので、行動で焦らせることにする。

 フレンは屋根を滑り降り、邸の最上階の窓を突き破って、まだ無事な廊下に入る。

 目の前の扉を引きちぎり上に投げて、途上の家具も蹴り上げて、フレンは向かいの窓を破り屋根に戻った。

 ━━同時に、下から家具が飛んでくる。

 粉砕した屋根も舞い散って、目眩ましになった。


「━━━━」


 ネイアがフレンを見失ったのを、逃すほど愚かではない。

 万物を切り裂けるような手刀を構えて、致死にならない程度の力で振り抜いた。

 ━━それが、盛大に空を切った。

 外したのではない、避けられたのだ。

 ネイアは視認していない手刀を回避すると、フレンに手を伸ばしてくる。

 触れてはいけないと直感しているのに、咄嗟に避けられない。

 未知の死香がやって来て━━、


「━━セイル・レーン」


 魔法の詠唱とともに、超高圧の水が列をなしてネイアを切り裂かんと襲う。

 致命的な一撃は当たらないが、意識はそっちに向かった。その隙に手首を払って、危険信号の発生源を遠ざける。

 それから、魔法を使ってフレンを救ってくれた人物に目を向ける。


「フレンちゃん、結構危なかったんとちゃうん?」


「メレブン! それにフラムも! あと、変な馬!」


 いまだ正体の分からない馬にフラムが跨がり、メレブンは背に立っていた。


「フレたん! フラムたちも戦う!」


 一度、逃がしたフラムが復帰してくる。正直、危険な場所だから来てほしくはないが、メレブンが一緒で彼が連れてきていいと判断したので、それを信用する。

 その代わり━━、


「メレブン、ちゃんと守れよ」


「もちろんや。任しとき」


 ━━ネイアには、まだ隠している切り札がある。


「当然と言えば当然か……」


 そうぼやきながら、フレンは気を引き締め直す。

 さっきのはまさに間一髪だった。だが、それだけではない。

 今度は立場が逆転した。━━躊躇いを植え付けられたのは、フレンの方になってしまった。


「互いに厄介ですね~。レーアの方ほどじゃないですけど。━━あの子はまた、別のアレですけどねぇ」


 視線の先にはレーアとダイスと━━ルステラが居た。

 距離的には離れていないが、とりあえず分断は成功している。

 しかし、あちらは少し噛み合わせが悪そうだった。


「ちょっと、大雑把すぎるのだよ。ワタシも巻き込むつもりかい?」


「頑張って避けて」


 二十ばかりの火球が発生し、ルステラを起点に拡散する。

 それは乱れながらレーアの行く手を阻み、止まった彼女をルステラが追撃した。


「へぇ、あんたもそういう戦い方か」


「よく驚かれるよ」


 足裏を腕で受け止めるが、パワーの差が大きくレーアは吹き飛ばされる。

 並みのパワーでは、ルステラの徒手空拳を捌くことはできないのだ。

 浮いたレーアの身体が、乱れ飛ぶ火球の一つに激突━━否、どちらも目の前から消滅した。

 火球の方は、視界の端から迫っているのが見えて━━、


「━━レーアを!」


 ルステラは山勘で回し蹴りを放つ。手応えを手繰ると、腕を上げそれを受けるレーアの姿があった。

 今度は飛ばされないように、しっかりと足腰に力を入れていた。

 一方で火球はルステラに到達する前に、ダイスが水で包み込み無力化させてくれていた。


「流石の身体能力って感じだな。恵まれてて羨ましいよ」


「……どうだろうねっ」


 振り上げた脚を戻し、ルステラは下から拳を振り抜く。しかしそれは、レーアの頬を掠めるに終わる。

 続いてレーアは、振り抜かれた腕を取りルステラを投げ飛ばす。


「どん」


 レーアが呟くと、ルステラの鳩尾を中心に爆発が発生する。

 その爆風を風で散らして、内部からお返しに炎を弾丸のように射出した。


「ちっ」


 落ち着いた薄紫色の髪を広げながら、レーアは最小の動きで回避。位相を転換し炎の弾丸を、持ち主のもとへ帰らせた。


「━━ワタシは消火係じゃないのだけれどね」


 炎の弾丸はダイスが水で包み込んで消してくれる。そのおかげで、逆さまだったルステラは安全に着地できた。

 実際、飛んでいるものを捕捉して魔法をぶつけるというのは、並みの魔法使いなら行えない。

 ━━彼の魔法技術。その一点だけは確実に信頼できる。


「……そう言えば」


 忘れていたが、彼は転移を封じるという提案をしてきたことがある。

 フレンはそこが引っ掛かり、信用が切り崩されたと言っていたが、この状況に陥ってしまった以上、頼るべきではないのだろうか。

 たとえ、交渉決裂の一因になったと言えど、技術的な観点から見れば有効なのは確かだ。


「ねえ、ダイス。転移封じはどうなったの?」


 一応レーアに聞かれないよう、編み終わった転移術式を用いてダイスの隣に移動する。

 転移を用いながら、対抗策を当てにするというのは変な感じだが、一旦棚の上に置いておく。


「ちょうど、ワタシも同じ話をしたかったのだよ。……そのことに関してだが、今は条件が整っていない」


「どうやったら出来る?」


「結界を構築するために土地の範囲を導出したい。だが、きっちりでなくともある程度の精確さが求められる。……はっきり言って無理なのだよ」


「━━━━」


「だから、ここでの理想は退かせることだ。━━来る」


 弾丸のようにレーアは真ん中に飛んでくる。おちおちと話し合いもしていられない。

 術式を編みながら、ルステラは必死に思考する。

 退却という浮かび出たプラン。しかし━━それはダメだ。

 退けば彼女らは強行してしまう。ノンダルカス王国への侵略を、強行してしまう。


 ━━ダイスの存在が生み出したモラトリアムは、既に失われたのだ。


「ダイス!」


 首を振るジェスチャーで、さっきのプランに対する回答をする。

 届きはしたが、レーアがダイスの方へ向かってしまい、さらなる反応は返ってこない。


「わたしは━━」


 ここでちらっとフレンの方を見る。あっちもあっちで激戦だ。

 攻めきれないのは、やはりネイアの魔法の原理が判明していないからだろう。事実、フレンは既に耳が欠損してしまっているのだ。

 だが、このまま戦っていればいずれ━━、いずれ━━。


「━━わたしもちゃんと、いるんだからねっ」


 レーアの脚を刈って、浮かせたところを暴風で吹き飛ばす。

 数メートル遠くにやって、その間にルステラはダイスに近づいた。


「魔力残量だよ!」


 一度は取り下げた案を、別の論拠を挙げて復刻させる。


「なに?」


「今、二人は相当使ってるはずだよ。だったら退いても、すぐには立て直せない」


「つまり……」


「猶予ができる」


 転移という反則技を禁止することができない以上、彼女らはほぼノーリスクでルステラたちと戦い続けられる。

 だが、戦えば戦うほど彼女らの力は制限されていくのだ。

 だからこそ、味方のことも考えて、あえて退かせるというのは妙案だった。

 ━━ちなみにルステラの魔力は、特殊な事情で勘定しなくてもいい。


「体感で後どれぐらいだと思う?」


「半分強といったところなのだよ。しかし、あまり追い詰めすぎると彼女らも本気を出してくるだろう」


「むしろ、好都合なんじゃ……」


「ここにいるのが、フレン・ヴィヴァーチェのみならそうなのだがね。━━この混線具合ならば、綻びが出て死者が生まれる」


 カバーすると言っても、やはり限界はある。

 なおかつ、ダイスが想定してる死者はレーアとネイアも含まれているだろう。

 彼の信用は、大して交流したわけでもないのでほぼ変動していない。

 しかし、現在、彼は彼女らと敵対しているのは確たる事実となった。戦いの中で、彼の語ったことも大方回収されていた。

 なればこそ、彼の彼女らに対する気持ちも無視はできない。

 死人は出せない。


「でも、どうやって退かせる? どうやったら損益を与えられる……?」


「いやいや、ここは発想を転換させた方がいいのだよ。彼女らには……」


「━━ずいぶん仲良くなったみてーだな」


 復帰してきたレーアが、二人の間を破り裂く。まさに破裂だ。

 もはや屋根とも呼べぬ頼りない駆使して、どうにかやり過ごす。

 片やダイスは空に大地を生成しながら、直線まっすぐフレンの方へ走っていた。


「行かせねーよ」


 走るダイスに立ち塞がるはレーア。彼女は、いつも一番に彼のところへ向かっていく。


「そう言えば、レーア。魔力の程度はどうなんだい?」


「てめーに教える筋合いがあるかよ」


 このとき、この瞬間、この刹那、レーアの意識がネイアの方へ向いた。 おそらく、誰も気づかないであろう微細な反応。

 ━━ただ一人、ダイスだけがそれに気づいていた。

 何故なら、彼は意図的にそれを呼び起こしたのだから。


「ああ、君は……」

 

 レーアが腕を伸ばすが、しかし、肘から先は観測できない。その先は空間を越えて、別の場所に出現しているからだ。

 別の場所。

 攻撃意思があり、なおかつそれが起死回生の一手になり得るのであれば、切る場所は一つに集約される。 フレン・ヴィヴァーチェ。

 彼女を排除するだけで、勝利は確約されるのだから。

 だから、レーアは、


「━━━━」

 

 腕の先が遠いところ━━フレンの背後に現出する。

 残った手足でレーアはダイスの牽制だ。

 悟っても届かせないためのものである。

 実際、ダイスはフレンのところには届かない。だが、目の前のレーアには届かせられる。

 だから、ダイスの勝ちだ。


「アズ・ミレ━━」


「━━君は本当に単純なのだよ」

 

 ダイスは捨て身で、レーアの作った捻れた位相に腕を突っ込んだ。

 爆発が、衝撃が、破壊が、粉砕が、全身を襲おうとも、彼は歩みを止めなかった。

 そして、異なる位相の先の手の中で、二人は指を絡め合う。それは、あるいは情熱的とも呼べるもので、

 

「━━ルム」

 

 魔法の詠唱が完了し、世界はその通りに変換される。

 アズ・ミレルム。それは、特定の物を世界から切り離す魔法。

 すなわち、


「ダイス……?」

 

 指定した対象の封印だった。

 レーアが捻れた位相から手を引き戻すと、そこには刺々しい結晶が握られていた。

 その瞬間、ルステラは脳内にあらゆる考えが巡った。

 ただ一つ言えることは、

 

「そんなの……」

 

 ルステラは動くことを諦めたのだった。

 何かを成し遂げたように、遠ざかっていくレーアたちを、空中機動力のあるフラムが追いかけようとして、メレブンが必死に止めていたのが見える。

 そうだ、追ってはいけない。

 追っても無駄だから。

 

「損ではなく、得を与える……」

 

 発想の転換とは、すなわちそういうことだ。

 彼女らを退かせるために、ダイスは身を切った。

 退却に賛成はした。だが、だが━━、

 

「━━そーしとけ。アタシらもこれ以上やり合うつもりはねーよ。予定通りとは言えねーが、概ねここでやることは終わった」

 

「━━━━」

 

「だから、次は『魔法連盟』本部でだ。せっかく勢揃いしてんだからな。失ったもん取り返せなくなる前に、正面切って来るのがいいと思うぜ」

 

「━━改めて宣戦布告ってことかいな」

 

「それもあるが、半分は宣誓だな。━━アタシらが勝つ」

 

「ええ度胸や。ちゃんと負かせたるよ」

 

 今度こそ完全にレーアとネイアの姿が消える。

 ルステラは、困惑で呆然とするしかなかった。

 今のは本来、存在しなかったはずの会話だ。

 彼女らが、もうルステラたちに拘う理由は無くなったのだから。

 そうでなければ、何が掛け違っている。

 そして、それはたぶん━━フレンが死を失敗するところまで戻らないと、修正できない気がした。


「とりあえず安心やー、なんてアホみたいなこと、流石に呟けんやろね」

 

「むしろ状況は悪い……のか? 私は間違えたのか……?」

 

「あるいは、間違えてたかやね。さっきは乗っかったけど、あの態度は明らかに変や。助かった事実があるとはいえ、目の前の幸運は総じて落とし穴や」

 

「かといって、踏み出さない選択はない。……アメリたちのこともあるだろうしな」

 

「やっぱ、分かるん?」

 

「不自然なほどに出てこないとなるとな……。言っとくが放置するとかないからな!」

 

「分かっとる分かっとる。フレンちゃん含めたら満場一致や。そうでなくともこれは譲れん」

 

 結局のところリアリストのような振る舞いをしていても、メレブンは従兄であるのだろう。


「だから、ルステラ……ルステラ?」


「ん? ごめん、ぼーっとしてた。なに?」

 

「『魔法連盟』の本部に行くしかないって話だ。私はもうこれしかないと思う」

 

「そうだね。行こっか。━━今度こそ、決着をつけよう」


 運命が。

 瞼の裏のどす黒い運命が、ルステラたちを嘲笑っている。

 嗤っている。

 だけど、その張り付くような嗤いを、ルステラはどうすることもできなかったのだった。

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