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暁の史記  作者: 焚火卯
三章
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プロローグ『裏切り』

三章、スタートです。

「は? ふざけてんの」


「あの~、ジブンもあまり意味が分からなかったんですけど」


 なんとも無機質な部屋だなと、来る度に増して思わされる。いつか慣れる日は来るのだろうか。

 もちろん、無機質なのには理由がある。

 部屋のレイアウトや家具の趣味から人相を割り出されないようにするため━━というのが、もっともらしい理由だろうか。

 とと、逸らしてしまった。まあ理由が理由なだけに、もっともらしい言い訳を立てたくなるのだ。なにせ笑われてしまうような理由なのだからね。

 ワタシたち三人で使うこの部屋が、こんなにも無機質な理由。

 それは、三人の個性が強すぎて、好き勝手にすると大変なことになってしまうからである。

 だから協議して、当たり障りの無い部屋になったのだ。

 馬鹿げているだろう?

 大の大人が揃って、際限というのを見定められない。という、まあ自虐なのだ。


「聞いてんの?」


「えっと~、シカトはちょっと傷つくんですけど」


 思い耽っていると、再度同じ二人から声が飛んでくる。もっとも、ここにはワタシを含めて三名しかいないので、彼女ら以外の声が飛んできたら怪奇現象である。

 そして、ここで彼女という単語が出た。ならば紹介するのが筋だろう。

 先ほどから語気が強めな女性。彼女は━━レーア・ジオメトリ。

 薄紫の混じった黒髪は広がるように伸びており、自分の肉感的な肢体を見せつけるような服飾からは高慢さが伺える。ちなみに、己の豊満な胸を抱きながら不遜に腕を抱いているときは、相当キレているので注意が必要だ。今はその状態である。


 対して気だるげで、しかし、確かな芯を感じられる女性は━━ネイア・アナリシス。名前の響きが若干似てなくもないが、別に姉妹ということはない。

 むしろ、性質としては全くの逆だ。彼女はとても内向的である。

 透き通る銀髪は前下がりに切り揃えられ、怠けるように頬杖を付いている。あと胸も小さい。

 ワタシは、彼女が背筋を正している姿を見たことがない。もしかしたら、もう背筋の正し方を忘れているのかもしれない。


 ともあれ二人の紹介は以上だ。ちなみにワタシは━━ダイス・アルジェブラという。一応名乗っておこう。

 付け加えると、ワタシは『彼』である。まったく肩身が狭くて仕方がないのだよ。


「おい! なんとか……」


「━━ちゃんと、聞いているとも。もちろん説明もするのだよ」


 しびれを切らしたレーアが、胸ぐらに掴みかかろうとするところで、ワタシは反応を返す。

 するとネイアは大きく舌打ちをし、行き場のなくなった腕を再度抱えた。


「まず初めに断言しておきたい。━━ワタシは君たちと戯れるつもりはない」


「それはつまり~」


「━━最初に言った通り、ワタシはこの一件から、降りさせてもらうのだよ」


 二人を見つめて言い切った瞬間、レーアは目の前の机を足で叩き割った。机の下に足を入れ込んでいたネイアはひょいと椅子の上で脚を畳む。


「それで、はい分かりましたなんて言うと思う? アタシたちがさ!」


「思わないのだよ。むしろ、一度聞き返したことに驚いてるぐらいなのだ」


 肩をすくめて左目を伏せると、その方向にいたネイアが魔法をぶっ放す。それをひらりとかわし目を開けると、ネイアが撃ち放つように指をワタシに向けていた。


「容赦がなくて傷つくのだよ」


「まあ~、もうどうしようもなさそうでしたので。━━あと、思ってないよね」


 椅子にちょこんと座りながら、指で照準を合わせる彼女には、もう交渉という単語は抜け落ちているのだろう。意外にも、そういうところはレーアより早い。


「別に~、仲よしこよしって関係じゃないですし? どちらかと言えば敵の方が近かったわけで」


 照準を合わせているのとは逆の手で、ネイアは自分の髪をくるくるといじくる。ちなみに彼女の危険信号は、この行為だ。


「━━でも、ジブンたちはダイスのことを信頼してた」


「━━━━」


「というわけで~、いっちょやりますか」


 ネイアがまた魔法を放つと、それが開戦の合図となりレーアが牙を剥きながら襲いかかってくる。

 狭い部屋で二対一。しかも相手は国内でもトップクラスと猛者だ。

 ワタシ一人じゃ、まるで歯が立たない。


 ━━さてと、どうしようかね。

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