1/25
はじまり
「よってファルシオン・ハヴィーナの王子の称号を剥奪し、流刑に処す」
ファルシオンは馬車のなかで目を覚まし、悪い夢を見たのだとほっとした。
しかし、手首にはまった枷と、近くに座って項垂れている男達を見て、数日前に実際に起こったことを夢で繰り返したのだと気付いた。
第三王子だった自分はもう居ない。反逆罪で辺地へ送られる、ファルシオンという魔力なしの憐れな男が居るだけだ。
「飯の時間だ」
馬車が停まる。ほんの少しの粥が配られるだけだが、ひと口でもいいから食べないといけない。昨日、馬車の隅でふたり、痩せこけた罪人が死んだ。
これから送られる場所を考えれば、飢えて死ぬほうがましなのかもしれないが。