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Cosmos Endless World Online ~最凶PKは平和主義~  作者: 妖哨音/華月
第〇章
2/18

勝てない子

はい、他人視点です。あはは、という感じです。頑張ります。

俺は「ゼロのハナ」が嫌いだ。最前線にいるにはあいつがするの半分の数のゲームだけでも、人との繋がりを全て断って、一日を全て費やさないといけなかった。勉強自体は不得意というわけではなかったから大丈夫だったが、それでも確実に不規則で過労(?)死しそうな忙しさだった。そして、ゼロのハナは神出鬼没で、どこでレベル上げをしているのか全く分からない。本当にプレイしている時間的に、複数人と言われた方がしっくりとくると思う。


いずれにしても、ゼロのハナは、当たり前のように最前線にいて、()()()笑って他のプレイヤーといた。どのゲームのゼロのハナも作っているのか、自然なのか分からない笑みを浮かべていた。不気味な笑顔だと、俺は常々感じていた。凶悪な何かを笑顔の裏に隠し持っていそうで、何度も息ができなくなるかと思った。


他の人達がついて来れないと分かるとあっさりと切り捨てる。何にも執着せず、損得だけで他人を見て、自分にとって損だということを確認次第何も言わずに放置する。スパイ系は、脱出に時間がかかるダンジョンに置いていく。


それが当たり前であるかのように。ゼロのハナがまだ踏破していなさそうなダンジョンも、全て一発で踏破し、全てを把握しているかの様に動く。いっそ、運営側の人間だ、と言われても誰も疑えないくらいまで、彼は異常だった。そして、それがさも当然かのようにエリアボス討伐やラスボス討伐において、MVPをさらう。


2番目に強い音鬼(おとき)は、「勝とうと思えば、ウチでも勝てるから大丈夫」と言っていたが、そういえば一回もボス系統を1番目に攻略できる時でさえ攻略していなかった。確かに特殊ボスは殆ど全て音鬼がMVPで倒していたが。彼女がプレイしたゲームの特殊ボスの内、倒さなかった特殊ボスを上げる方が簡単である。


ゼロのハナが、「音鬼は、特殊喰らい(ユニークイーター)って呼ばれているけど、彼女自身は面白い動物さん(モンスター)じゃない限り真面目に倒したくないらしいから。それと、身体が覚えているのだと思う、思考よりも先に確実に倒せる方法を実行しているから」と言っていたのを思い出す。「音鬼が本当にMVPを取ろうとしたのなら、彼女がそうなるよ」とも言っていたから、実力は本当に拮抗しているのだろう。


ゼロのハナと同様に戦意を喪失してしまうぐらい強い。そしてゼロのハナ同様、1度もPKなどに殺されたことがない凄腕プレイヤーだ。


誰も勝てない。勝てるわけがない。そんなプレイヤーは他の種類のゲームにもいた。


カードゲーム類7連覇中の「死の夜」(デス・ナイト)、ボードゲーム類6連覇中の「夜咲」(よざき)、そしてアクション系シューティングゲーム類5連覇中の「死玲」(シャーマン)。老若男女、正体不明のプレイヤー。ただ、同一人物である可能性は示唆されていた。「死」か「夜」の文字があるからだ。


それは、絶対にソレには勝てないのではないか、と言うような情報だった。他者はずっと2位で、勝てない。なんでだ、と毎回と思っていた。強すぎて、ゲーム類ではよく上位入賞していた俺も言われたことのある、チートではないのか、という声が上がった。例えば、死の夜(デス・ナイト)は本来なら普通のカードを、切り札レベルの強さにしていたからだ。使われる側としては笑うしかできなかった。


そして、ちゃんと彼らの使い方を見ながら対戦している人や、分析の得意な観戦者はチートではないと断定した。そういう一握りのプレイヤーの中には、途中から対策を取り、ギリギリの勝負にまで持ち込む者もいた。最終的には、負けてしまうが、一方試合にならない分、観戦者としては、とても楽しむことのできる試合となっていた。


殆どの者は、勝つことはもう無理だなぁと割り切った。何故なら、近年は2位と3位までもが不動だからだ。カード類も、ボードゲーム類も、アクション系シューティングゲーム類も、2位は「ぜんてぃ」が、3位は「をArbre e()nchevêtré(まる樹)」が取っていた。Arbre enchevêtréにおいては、毎回死の夜(デス・ナイト)達に準決勝で当たってしまうから3位であると言われていて、ぜんてぃよりも強いと言われている。


Arbre enchevêtréと死の夜(デス・ナイト)達の試合は本当に拮抗している。だが、どこかArbre enchevêtréが一歩引いたところからゲームをしているし、ちゃんと試合を見ていれば彼が縛りプレイをしていることが分かる。縛りプレイをしなかったら、Arbre enchevêtréが勝つのでは?と思うぐらいには、彼はとてつもなく強い。


「ゼロのハナ」がCosmos Endless World Onlineをプレイできない間は久しぶりに、かなりのんびりと自由気ままにゲームをした。そしてまた、学校に行きだした。一応受かった学園に、高等部から通う。どこか普通とは違う、異様な雰囲気を感じるが。


そこでは、1人の少女……少年?を苛めていた。全くもって事情は知らないが、苛めている側は、主犯のくせにすごく悲しそうな眼をしている子と、絶対に話したほうが早いと言っている子がいたと言うことが印象に残っている。大規模な苛めで、何が目的なのかは全くもってい意味が分からない。


苛められている子は何も感じていないとでも言うかのように、静かだった。先生達は、仕方がないから、と言っているが、何が仕方がないのだろうか?人が苛めているのは、止めなければならないのではないのだろうか?俺が言っても、聞く耳を持たないどころか、苛められている子に近寄るな、と主犯の子に独占欲剥き出しの目で言われてしまった。


そしてそこには、同級生には、1人頭がおかしいくらい良い子がいた。ゼロのハナに似た雰囲気を持ち、CEWOに誘ってみても「ごめんね、僕はちょっとできないや」と言われた。何か裏がありそうだったけれど、深入りはしない事に決めた。彼も、勝てない部類だった。絶対的な何者かのオーラを纏い、完璧な計算し尽くされた笑みを浮かべる少年ということが正しいだろう。


そんな彼が、今、偉く機嫌が良く、咲きすぎた花のように笑って、俺の隣にいる。

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