人紛いと怒り
また増えた文字数に目を背ける僕です。キーワードを少し変えました。実話はまだまだ入らない予定です。もう一人の主人公が出てくる第2章の時からかな?
「零夜、殺気が凄いよ?」
陸翔達が僕の所に追いついたらしい。でも、今は心底どうでもいい。今現在、僕の心の中に渦巻いている怒りは、そういうことを気にするような暇はない。なんなら、僕の記憶を忘れさせるようにフィーアに言った、もしくは命令?した奴が、もし存命なら(人紛いの寿命は長命種と同程度)、というか殆どの確率で生きているだろうけれど、絶対に殺す。なんのために指示したのかは一切分からないけれど、僕の中からフィーアを消していた罪はかなり重い。逆に軽いはずがない。僕の生きる気力に活力なのだから‼︎それを奪うとは、死んでもいいと思っている事と同義だよね、うん、なんてうざったらしい自殺志願者かな?腹立たしいったらありゃしないよ。
じっくりと、ゆっくりと時間をかけて苦しみ悶えさせながら殺してやろう。僕の逆鱗に触れたのだから、このぐらいしても構わないだろう。なんなら、僕の与える”罰“としてはかなり優しい方だ。まぁ、どこまで命令してフィーアに何をさせていたのか次第で天牢行きか氷結地獄行きかとかって変わるけれど。輪廻から外す事は確定として。あとは、何をしようかな?別に、拘束具を使うのでもいいけれど、せっかくこっち側にいるんだから、呪いの類でもいいよねぇ?面白そうだし、馬鹿みたいに騒ぎそうな奴らだし。人紛いは人間側の人権を取ることが多いけれど、魔人側の人権も取ろうとしてくるから、それでよく揉める。魔人にも当て嵌まらないのに図々しい事だよ、ほんと。
もし、これがフィーア自身の行動だったのなら、絶対に逃げられないように囲ってやろう。僕以外のことを考えられないように堕落させれば、また僕の記憶をけすなんていう凶行には走らないよね?分からないことが積もり、積もっているけれど、やる事の道標だけは見えている、っていうこの状況は相変わらず、おかしな話なんだろう、な…………。僕にとっての普通が、他人にとっての異常なんてもう仕方のない事だと受け入れてはいるけれど。少しだけ、寂しいなんて思ったことが他人に知られないように小さくため息を溢す。
「何か知っているのに、何も言わなかった人紛いは絶対に許さない。知らなかった奴はどっちでもいいとして」
「人紛いって何?俺は、どういう事なのか意味不明なんだが?」
「おい、陸翔。俺が教えるからこっちに来い。今、零夜はかなり機嫌が悪いからな。最悪殺されるぞ」
しれっとムグルマが失礼なことを言ったような気がするけれど、まぁいいか。別に、何を言おうが言わまいがムグルマが言うのは大体合っているし、彼は僕ら側だったはずなので、大丈夫だと思う。うん、多分ね…彼も少々愉快犯な性質で、タチが悪いからね…………。タチの悪さは特に酷いという訳ではないのだけれど、時と場合の計算高さのせいで最悪レベルでタチが悪いと思ってしまう。でも、人紛いに関してはかなり詳しかったはずだから、任せてもいいだろう。
人紛いも勿論、人から生まれてくる。しかし、胎内にいる間に遺伝情報が傷ついたり、なんらかの原因で増加されたり、人為的に改変されたりする事によって、一定確率で発生する。少し遺伝情報が違ったりするだけであるのに、人紛いは、人間と根本的に違う生物だ。ただ、いかんせん人と殆ど同じような生物なので、ぱっと見では分からない。その上、人紛いは魔物や魔人達にも似ている。さらに厄介な事には、大体の人紛いは自分自身がそうである事を知っている。
そして、行動の制限を知らないうちに自分に課すため、人間と違うということを他人に認識されず、なんとかなることが多い。それでも、何かをやらかす人が多々いる。尻拭いなんて彼奴らはすることを考えていないから、僕ら側にとって傍迷惑な奴ら。それだけで終了していたはずなのに。舌打ちをして、飛び出したい気持ちを抑える。判明していない人紛いがまだまだ大量にいるという事はわかっているから、他の人たちにも伝達しといた方がいい。まぁ、僕がする前に音緒が連絡していそうだけれども。そのため、僕がするべき連絡はこの世界を有効活用した、人紛いの洗い出しのための指示内容。
今回の件が特殊なだけに、本当は連絡したくもないところにまで連絡しないと行けなさそうなのが本当に嫌な所か。彼奴らに何を要求されるのか、分かったら楽なんだけれどな……。気まぐれで要求してくるから勘弁してほしいんだけど。僕も十分気まぐれな気分屋さんだけれど、彼奴らには敵わないレベルである、絶対に。なんなら彼奴らの気まぐれは国一つを潰すことがある。そんなことを要求してきた時点で、武力行使による説得に変えるから、ま、いいけれどな。
ーねぇ天魔、人紛いの洗い出しに参加してくれる?要求は幾らかなら、飲むからさ?ー
ー畏まりました。こちら側の要求の件については、また後ほど追って連絡させて頂きます。ー
ーうん、お願いね?要求次第では、武力行使に全力で至るし反故するけれど、さ?ー
やけにすんなりと通ったのがめちゃくちゃ怖いんだけど……。僕に繋がっているのは何があっても天魔のトップだけだから、あの捻くれ者の奴が?って、あれれ?天魔のトップが新しくなってる?別に前のトップはまだまだ若かったはずだけれど。あぁでも、天満は世襲制じゃないし1番強い奴って変わるか、普通。逆にずっと変わっていないのは、主神と邪神、記神、滅神による4トップだけか。最も、最近はずっと行方をくらましていたり、見えない所で暗躍していたり、と傍迷惑な事ばかりしているけれどね?
それでも、ルールは回っているからトップはいらないというわけではない。分からない事ばかりではないから、なんとか回っているというだけであって、かなり■■の中では問題になっているのだろうな。でも、トップに頼りっきりになる組織は長い事は持たないし、放置でいいやと思って盛大に放置されていたな。みんなは面倒だし?というだけのことで放置していたんだろうな。笑えない事情だよね、絶対にこれは。記神と滅神は、2人でいちゃついてんだろうな、今頃。動員させようとしたら、何を言われるか。今から気が重いけれど、僕の目的には犠牲になってもらうしかない。
「僕も大概か。笑えないのは物理的にも精神的にもだけれど、笑えたとしても、今は笑えそうにないや」
ー久しぶりだね、■■■と■■■。もしかしたらもう情報が出回っているかもしれないけれどさ、人紛いを1人残らず探して。これは、命令だから、絶対だから。ー
ー分からないよね、君がこういう事になるとは。感情は戻るか分からないけど、探してみたら?人紛いの件は僕らもイラっときていたから大丈夫だよ。ー
ー分からないことがあれば、聞け。一定以上は分かるからな?俺らも十分なサポートをさして貰うよ?わかりやすい説明ができるとは思わない方がいいが。ー
良かった。彼らがすぐに分かっていてくれて。分からない事ばかりになるのは本当に嫌だったからね。世界図書館は使えるけれど、使わない方がいいからね。何故ならば、使えばより楽にはなるけれど、証拠を出すことがかなり難しくなる。そう、かなり面倒な問題になっている。内容量を絞ることはできるけれど、要らない事まで出てくるから、更に絞ることにも疲れる。世界図書館は、あまり向いていない事を今から人力(?)で行うこととなっている。まぁ、僕はまずはこのゲームを楽しみながら遊ぶけれどね。
◇◆ムグルマ◆◇
玲夜の気分を害している理由はなんとなくは分かる。彼にとっての精神安定剤の如きフィーアとの記憶が蘇ったのだろう。フィーアが■■のトップだとしても、人紛いのトップではない。人紛いのトップは玲夜の怒りをかなり恐れているからな。人紛いが迷惑をかけたから、とフィーアとの記憶ごと消し去った。それは、彼の怒りを余計に大きくする事に他ならない、自殺行為なのに。 不穏な気配のせいで、魔物の量が多くなってきている。索敵範囲に入った中でも、魔人が複数人いるみたいだし。玲夜の気配に連れられてきたのだろう。
「陸翔、本当に人紛いについて1つも知らないのか?」
「え、初めて聞いた単語なんだから、俺が知っているわけないじゃん」
「あ、そう。お前なら知っていてもおかしくはない単語の1つなんだけどな。人紛いの伝承が何故か途切れていることに問題があるか、これは」
人でありながら、人智を超える術を使い、人の形をしていながら、別の生物になる。人よりも上の知能を誇る生物。というぐらいの説明は貰っていると思ったのだが。俺が勤めている学園は、そういう奴らの集まりなのだが。人紛いよりも、魔人の方が圧倒的に多いが。人間は、本当の天才が幾人かいるぐらいだ。教師陣には、人紛いなんて新垣以外にはいないし、新垣も悪魔の部類になったから、実質はいないと同じだ。
「お前、なんで学校が受け入れたと思った?別に、お前の点数はめちゃくちゃいいというわけでは、この学園ではなかっただろ?なんなら、合格者の中では最低点の部類だぞ」
「それは、薄々と分かっていましたけど……、僕を受け入れる利点なんてなくないですか?零夜ならともかく」
「彼奴は幼稚園からずっといるぞ?それに、学級長や生徒会長を歴任しているからな?暇になってきた時の色々な意味で刺激的なサプライズイベントが人気だったな」
自分で企画したくせに、人に全てを任すというやり方で実施していたな。男子が女装して、ダンスを踊るという催しの時は、男子なら上半身は気にしないでいいよね?ということで透けて見えてたな。一部の男子が発狂していたことが、記憶に新しい。生徒会役員と風紀委員の男子はかなりの迷惑を被られていたが。それで、女装癖に目覚める奴がいたのは誤算だった。ネコに目覚める奴もいたらしいから、玲夜は本当にろくな事をしない。まぁ、俺が言えることではないが。
「玲夜のことはいいとして、お前自身分かってるんじゃねぇのか?視えるんだろ、魂とか霊体とかその他諸々。」
「確かに視えますけど、視える人には視えるんじゃないんですか?」
「その視える人が魔人だったり人紛いだ。さらに詳しく知るには、魔眼の持ち主じゃねぇといけないけどな。見えない細部まで気を付けて計算し尽くすには必須だな」
人紛いは聖人だのなんだの言われるからな。神の御神託に関しては人紛い・人間・魔人関係ないが。御神託を連絡道具として扱う奴らが大半という悲しい現状を知っているのは、魔人側だけだが。ちゃんとしているのはハーピィぐらいだな。人間や人紛いに連絡を取る必要は一切ないから、本当に気まぐれで御神託を告げるぐらいしか、使わない。それにこのスキル、御託宣の使い方は人によってそれぞれだし、できることもかなり違う。
「え、それだけで人紛いになるんですか?霊感とかそういうのは、関係ないんですか?」
「その霊感は人紛いが儲けるために勝手に言ったことだ。関係ないところにまで言う奴は、大体が冥土入りしているから安心しろ。それに、お前は要らないオプションのついている人紛いだからな、監視の目が届くところにいた方がいいんだよ」
「心を抉るように言わないでください。要らないオプションってなんですか?」
魅了持ちだなんて使い道がなさすぎる。玲夜のおかげでなんとかなっている部分があるが……社会には出せないな。匿ったりするにしても、利点が全くと言っていいほどないから、確実に捨てられるだろうな。キャバクラやホストになる奴が多いが、この様子だと、会社勤めをしようとしているのではなかろうか?この学園に限れば、勉学においては、下位層だが、世の中で考えれば圧倒的上位層だ。そして、魅了を打ち消すスキルを常時放っている人がいなければ、全員洗脳されてその会社が終わる。それを防ごうとして、常時一緒にいさせるのは話が別だ。魅了を打ち消すスキル、不変を持っているのはかなり少数派だから、不可能に近い。
この魅了を制御できる奴なんてほとんど存在しないし。問題物件がそのことを知らないとか意味分かんねぇし。ちょっとは制御の方法を教えるか。まぁ、人紛いの探索が先だけれども。あの様子じゃ、早く捜索した方がいいな。
「魔人の反応があったとは思ったが、紫苑か。元気にしてたのか?」
「えぇ、■■■■様の濃い気配を察知したのでここに参りました。かなりお怒りの様子ですが、何が原因で?お答えにより、我々のとる行動がかなり変わりますし」
「一言で言うと、人紛いのせいだ。フィーアとの記憶を抜かれていた玲夜の記憶が蘇った。それと同時に指示をされて記憶を抜かれたと推測した玲夜が怒り狂っている。今からは、人紛いを全て探し出せってさ」
紫苑は鬼人で、従魔の中でもかなり強い部類に位置する。邪神の七聖獣の一柱である。邪神なのに、聖獣と呼ばれる理由は深くは突っ込んではいけないと思っている。だが、最凶レベルに強いから基本はスルーしている。最も、邪神の従魔だからなのかは分からないが、堕落はしていないが性欲は強かったはず。邪神の従魔の大半は雄というか男だったはずなのだがな?まぁ、あの邪神のところだからしょうがないという事のなのだろうと、割り切るしかないだろう。
「ふぅん?人紛いの皆殺しではなかったのですか。皆殺しになってもおかしくないことを人紛い共はしましたのに。■■■■様の御慈悲は寛大すぎますね。さっさと殺して、苦しめてあげることが良識の内だと思うのですが」
「それを、俺に言うのは意地が悪いな。まぁ、流石に今のトップは馬鹿な事は言わねぇと思うけどよ?理不尽な要求ばかり言う前回のトップは触手がうじゃうじゃいるポー二の里に捨ててきたからな」
「捨てる以外の選択肢はなかったのですか…………。いえ、まぁ普通でしょうが職種はちょっと違うと思いますが?」
「良いんだって、彼奴の自業自得だから。快楽人形にでもなっとけばいいんだよ、彼奴は。彼奴がどうなろうが知ったことではないし」
そう、本当にあのゴミクズ野郎がどうなろうとも、もう俺らには一切関係がないから気が楽だ。にしても、どうやって人紛いを炙り出そうか?サービス開始からもう3ヶ月とはいえ、まだまだプレイしていない人はたくさんいる。人紛いは、特にプレイする事を躊躇う傾向があるから、人紛いですらプレイしたいと思うように盛り上げなければいけない。そう思わせるために、どのような作戦を取るのか。邪神の頭には、ちゃくちゃうとそのための準備進んでいるのだろうな、と思う。そして、頼もしさよりも恐怖が勝る。彼はいつもあのような感じだからあまり気にも留めていなかったが、彼の本性を知ってしまえば、戻れない崖の先にいることが分かる。彼の機嫌一つで、人の首はた易く飛んだ行ってしまうだろう。
邪神自身は恐怖政治を行っているわけではないので、かなり有耶無耶にされてしまう部分だろう。特に邪神の七聖獣の3番手、邪淫の大蛇は隠蔽や隠密に特化しているため、証拠隠滅されてしまう。完璧とは程遠い奴らは、その傘下に入る事を余儀なくされてしまうのだ。
古の神々と古の魔人、古の獣を除いては
■■■■ーなんでみんな好かれようとするんだろ?馬鹿なのかなぁ?ー
■■■ー………ー
■■■■ー僕の事、どうでも良かったんだよね、知ってる。ー




