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『ムージュ号の発進 & 言葉の発信』  作者: Jupi・mama
第一章 プロローグ編
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4.『Moon暦726年3月16日(金)』

4.『Moon暦726年3月16日(金)』


「リリーさん、向こうの情報がこれだけはっきりしたから、艦長にプライベートで連絡を取ってもいいと思うけど……私は早く知らせた方がいいと思うけどね」


『そうね。早く知らせた方が賢明かもね』


 リリーさんがそう言ってくれたので、私は艦長に初めてプライベートナンバーを利用して連絡を取ることにした。これは艦長に直通の番号である。


「艦長、今お時間はよろしいでしょうか」


「大丈夫よ。何かあったの?」


「大事な話しがあります。勝手を言って申し訳ありませんが、プライベート通信に切り替えていただいてもよろしいでしょうか」


「分かりました。こちらから切り替えて連絡します」


「ありがとうございます」


     ☆ ★ ☆


「キャプテン、今切り替えたわよ。大事な話しって何?」


「少々話しが長くなりますがよろしいでしょうか」


 私はそう言ってから、亡くなった仲間が生きていた事実をかいつまんで艦長に説明をしする。


     ☆ ★ ☆


「そういうことが起こっていたなんて信じられない。どうして助けられたのかしら? 包み込むという表現も不思議だけど、彼女たちが生きていてほんとうによかった。キャプテンも精神的に辛かったのね。私はその話題を口に出して言えなかったのよ。艦長もキャプテンも同じ立場です。悲しいことも辛いこともあるからお互いに乗り越えなくてはね」


 艦長がそう言ってくれたから、彼女は私の辛さを理解してくれたのだと思い、そういう言葉を聞いて、私の心の中が熱くなってしまった。


「……ありがとうございます」


 私は彼女の言葉を噛みしめながら、それ以外の言葉が出ない。


「彼女たちの意識の中ではキャプテンの言動が刻み込まれてたのね。マーシャさんはそのことをよく理解してキャプテンに直接連絡をしたのね。キャプテンの今までの努力の賜物です。素晴らしいことです。これが成功すればキャプテンの存在が上でも認められるし、私の立場もよくなると思う。ありがとう」


「……はい」


 私はそう返事をしたけど、艦長にありがとうと言われてしまい、了解しました、とは言えずに一瞬返事に困ってしまう。


「今回のことはいい方向につなげようね。異星人がこちらの言葉を理解して、仲間の命を救ったことは素晴らしい事実です。キャプテンの存在がサームナッカ号に知れ渡るチャンスね。これを利用しない手はないわね」


「その……それはどういう意味なのですか」


 私はそう尋ねてしまったけど、彼女が何のことを言っているのか理解できない。


「キャプテンの昇進のチャンスです。これは私が考えるから何も知らない振りをしていなさい。この話しはここまでね」


「……了解しました」


 私が今度はそう言ったけど、意味が理解できないのでこの言葉以外の返事はできないのだ。


「マーシャさんは次元の違うパワーを持ち意思の疎通もできて、こちらの状況もある程度理解しているけど、人類からしてみると異星人なのよ。自分の存在を隠してもこちらに攻撃を仕掛ける気がなくても、キャプテンを仲立ちとして友好関係を結んでもらわなければ、もし、交戦する状況が起きるとこちらの不利になるわね。キャプテンには悪いけど、最悪の事態という可能性も考えることが艦長の仕事なのよ」


「……はい、勉強になります」


 私は勉強の言葉を今時は使ったけど、艦長は部下の危険性のことも考えている。


「艦長の仕事は最低限度の損失で多くの部下を守ることです。覚えておきなさい。犠牲も必要なのよ。キャプテンの判断は正しいのよ」


「……ありがとうございます」


 私はそうお礼を言ったけど、少ない犠牲で多くの仲間を助ける意味は理解できるが、艦長はキャプテンの立場というものを私に教えてくれ、私のことを気づかって話しているのだとも思ってしまう。


「こちらから連絡が取れないのは残念だけど、向こうから確実に取れるということね」


「はい。ここでは地球の自転や公転や大気圏が邪魔してるみたいで把握が難しいそうです。リリーさんが二十一時以降にジョナの時計に電波を送ることで、こちらの居場所が確実に判断できると言ってました」


「微量の電波でもキャッチできるのね。驚異的ね。私も今聞いた内容を整理しなくては、突然の話しで今後のことが考えられない。次の連絡までは十日ほど時間が必要ということね?」


「それも分かりませんがエネルギーを必要としてるみたいで、彼女も頻繁には連絡が取れないと思います。私たちもどうしたらいいのか分かりません」


「彼女の弱点はエネルギーなのね。この話しも貴重です。艦長の仕事は状況判断も必要なのよ。これもよく覚えておいて」


「了解しました」


 私はそう言ったけど、彼女がいちばん必要としているエネルギーのことが弱点になるなんて、私は考えてもなくて、やはり、艦長の立場とはそういうことまで考えなくてはいけないのだ。


「これはほんとうに重要な話しね。これはプライベートにしなくては外に漏れたら大変なことになるわね。私たちが友好的だと思っても、外部の人間が理解できなくて恐怖感を募ったら大変なことになる。とても貴重な情報をありがとう。キャプテンのお手柄よ。私もよく考えて近いうちに連絡するからね。マーシャさんが友好的な人でよかったわね。話しは変わるけど、この事件のお陰で上での『ムージュ号』の建造が始まったから、現在製造中の船を変更してニッシー大尉に担当させたのよ。新しい名前を考えといてね」


「ありがとうございます。名前は『ムージュ号・二世』です」


 私は即座にそう言ってしまったが、この名前は以前から考えていたことで、リリーさんと出会ってから、今の私はここがすべてなのだと思っているので、この船の名前を変えるつもりはない。


「さすがキャプテンね。ボディーと一緒で完成が楽しみね。大尉にまたお世話になるわね」


「はい。よろしくお伝えください」


「キャプテンが迎えに行くには少尉の階級が必要です。『ムージュ号・二世』は中型船に変更するように大尉に伝えましょう。会議で決定すればすぐに取りかかってもらうからね」


「ありがとうございます」


     ☆ ★ ☆


 巨大ミミズ事件ではリリーさんが自爆の判断を下し、私は了解しただけで、私が彼女みたいに瞬時に判断を下せたのだろうか、とそのことがとても気になり、別の選択をすればここはどうなっていたのだろうか。

 

 巨大ミミズ事件は一月二十五日(水)に発生し、十三学年は全員二泊三日の予定で上の世界の下見に行き、誰もここにはいなくて、私を含めて十二学年のマーシャル隊の出番であり、ほかの仲間はキャプテンの存在をどう思ったのだろうか。



読んでいただき、ありがとうございます。


引き続き次話もよろしくお願いいたします。

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