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高校の制服がスカートだった件  作者: humihumi1234
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後期試験

蒼が入学式用のスーツを買うために、スーツ量販店に母ときていた。入学式や入社式を控えてスーツを必要とする人が多く、平日でも混雑していた。平日でこの調子なら土日はもっと混雑しているだろう。蒼のために、わざわざ有休をとってくれた母に感謝した。

「初めてのスーツなので、採寸お願いします。」

 母が店員さんを呼び止め採寸をお願いした。定員さんがメジャーをもって蒼のもとへとやってきた。

「すみません。こんな格好しているけど、男なんです。」

 母が小声で定員さんに伝えた。ベージュのニットと茶色のスカートの蒼を見て、

「そうなんですか。全然気づきませんでした。でも、大丈夫ですよ。」

 とくに驚くこともなく淡々と採寸してくれた。

「入学式でしたら、ブラウスや鞄などセットになっている入学式用セットを勧めしています。こちらの列の中から選んでください。」

 採寸後、定員さんに案内されてスーツを選び始めた。スーツなんてどれも一緒だと思っていた蒼だが、実際選び始めると思いのほか種類が豊富で悩んでしまう。

「蒼、これにしてみたら。試着してみよ。」

 母が一つ選んで、蒼をつれて試着室へとむかった。

「中に試着用のシャツもあるので、よかったらどうぞ。」

 蒼は試着室に入り、服を脱いでスーツに着替えた。試着室の鏡で自分の姿を見てみると、制服と違いタイトスカートのスーツはちょっと大人っぽく見えた。

「お母さん、どうかな?」

「いいんじゃない。」

 母も気に入って様子だった。

「パンツの方の丈をみますね。」

 蒼たちの満足そうな様子を見て、セットとなっているパンツを店員さんが持ってきて蒼に渡した。蒼は再び試着室でパンツスーツに着替えたて、裾の具合を店員さんにみてもらった。

 スーツの受け取りを来週にして会計を済ませてお店を出た。気が付けば、お店に入ってからかなりの時間が経っていた。


「ちょっと遅くなったけど、お昼にしようか?おなかすいたから、すぐそこのファミレスでもいい?」

 母と一緒にスーツ量販店の隣にあったファミレスに入った。お昼のピークを過ぎたこともあり、すんなり席へと案内された。

 テーブルにあるタブレットで、蒼はハンバーグセット、母は和定食セットを注文した。料理が来るのを待っている間、母は蒼に尋ねた。

「蒼、高校卒業しても女の子のままでよかったの?高校生ならハクジョ男子ってことですんだけど、大学生で女の子の格好していたら変に思われるかもよ。」

「わかってる。でも大丈夫だよ。理解してくれる人もいるだろうし、理解してくれない人は気にしない。」

「最初は男ばれして落ち込んでいたのに、蒼も変わったね。」

 女装を理解しなかったり、見下したりする人はいる。けど、そんな人に受け入れてもらえるようにするよりも、最初から受け入れている人とだけ付き合えばいい。

 そんなことを教えてくれたのは、涼ちゃんだった。その涼ちゃんは、いまごろ後期試験を受けているはずだ。蒼は、心の中でエールを送った。


 それから1週間後蒼は、桜の咲き始めた公園をはるちゃんと一緒に散歩していた。

「はるちゃんもスーツ買った?」

「買ったよ。タイトスカートって初めてだから歩きづらいし、座る時も気を使うし、あんまり好きじゃないかな。」

「はるちゃんらしいね。入学式一緒に行こうね。」

「蒼ちゃんのスーツも楽しみにしておくよ。」

 桜をみながら公園の中を歩いていると、スマホからメッセージの着信音が鳴った。蒼は、鞄からスマホを取り出しメッセージを読んだ。

「涼ちゃん、後期試験合格したって。」

「私にも届いてた。よかったね、これで4人一緒に大学生になれる。」

 蒼もはるちゃんも自分が合格したことのように、涼ちゃんの合格を嬉しく感じた。蒼たちが合格おめでとうの返事をしたとき、すでに理恵ちゃんからの返事がとどいた。

「はるちゃん、理恵ちゃんが今から会えないかって?どうする?」

「涼ちゃんにおめでとう言いたいし、行こう。」


 蒼ははるちゃんと一緒に、待ち合わせのファミレスに向かった。ファミレスに入ると、すでに理恵ちゃんと涼ちゃんは着ており、蒼たちをみつけて手を振ってくれた。

「涼ちゃん、おめでとう。」

 蒼が涼ちゃんにお祝いの言葉をかけた。

「デートの邪魔して悪かったね。でも、蒼ちゃんにはお世話になったから合格したことを直接伝えたくて。ありがとう、蒼ちゃん。」

「そんなお礼を言われるほど教えてないよ。」

「蒼ちゃんが教えてくれた証明問題と似たような問題がでたよ。あと、英語も理恵ちゃんに教えてもらったおかげで英作文もできたし、小論文のテーマも『トランスジェンダーのトイレについて』だったから余裕で書けたよ。」

 前期の数倍厳しいと言われる後期試験だったが、涼ちゃんには幸運の女神が舞い降りたようだった。

「これで理恵ちゃんと一緒に学校に行けるね。」

 涼ちゃんが頭を理恵ちゃんの方に傾け、理恵ちゃんに頭を撫でてもらっている。理恵ちゃんも嬉しそうにしている。

「そうだ。遅くなったけど、みんなで卒業旅行に行かない?泊りは無理だけど、日帰りでどっかに行こうよ。」

 理恵ちゃんが思いついたように言った。

「いいね。どこ行こうか?」

 蒼をはじめ、みんな同意した。楽しい旅行になりそうだ。


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