山下君の女装
蒼は山下に着せるための服を選ぶためクローゼットを開けた。クローゼットの中のスカートやワンピースなどをみて、山下は目を輝かせている。
「本当に女物しかないんだな。」
山下がクローゼットの中をみて言った。
「うん、山下もわかると思うけど、かわいい服って魔力があるよね。一度着ると、辞められないというか虜になるというか。」
「わかる、わかる。最初は母親のスカートこっそり着ているだけで満足していたけど、すぐに他のも欲しくなる。」
「やっぱり、そうだよね。で、どれにする?」
クローゼットから服を選び始めた。山下の希望も聞きつつ、サイズも合いそうなピンクのニットと黒のチュールスカートに決まり、着替え始めた。
「やっぱり似合ってないよね。」
着替え終わった山下が、姿見で着替えた自分をみて言った。
「スカートの位置が低いからだよ。スカートは腰で履くから、へそより少し上ぐらいの位置にしてみて。」
「これくらい?でも落ちてこない?」
「女子は骨盤の形が違うから大丈夫みたいだけど、男子だと落ちてくるね。それウエストはゴムになっているけど、紐が入っているから縛って調節してみて。」
「こんな感じかな?」
山下がスカートの位置を調整し始めた。
「もう少し上かな。この位置。」
蒼はひざまづいて、山下のスカートの位置を調整し始めた。
「蒼、山下君、おやつ持ってきたよ。」
ノックをした後、母が部屋におやつを持って入ってきた。ひざまづいている蒼の顔が、ちょうど山下の股の部分にあるところを見られて、
「お取込み中だったかしら?また後にするね。」
母は慌てて部屋から出て行った。蒼は慌てて母の後を追った。
山下の女装願望をかなえるために協力していたことを伝えると、
「そうだったの。まあ、蒼も女の子になったから、興味持つのもわかるよ。」
山下の女装については理解してくれたみたいだが、蒼がひざまづいていた理由については誤解されたままだった。その誤解については、後でゆっくり解くことにして蒼は部屋に戻った。
「ごめん、中断しちゃったね。」
そのあと、蒼は以前母から教えてもらったように、女の子らしく見えるように猫背を矯正したり、肩幅を細く見える方法を山下に教えた。
「最初よりは、男っぽさが消えた気がする。」
山下も効果を感じたところで、再びノックの音がした。
「山下君、良かったらこれ使ってみる?」
母は部屋に入ると、ウィッグを差し出した。
「蒼が必要かなと思って買っておいたけど、1年の間はスカート履かなかったし、2年生の時は地毛でどうにかなったから、使わなかったからよかったらどうぞ。」
山下はショートボブのウィッグをかぶると、
「似合ってる。せっかくなので、メイクもしてみる?」
母は蒼の時と同様にノリノリで山下の女装に協力してくれた。
「最後にリップをひくから、唇閉じてもらってもいい?これで、完成と。」
母はメイクを仕上げると、手鏡を山下に渡した。
「かわいい。自分じゃないみたい。」
山下が自分の姿に驚いている。そしてそのまま手鏡をじっとみつめて、自分の姿に見とれている様子を見て、蒼は自分も初めてメイクしてもらった時のことを思い出した。
「気に入ってくれたようね。それじゃ、女子会でもしようか。コーヒーと紅茶どっちがいい?」
母の淹れてくれたコーヒーと紅茶でおやつを食べながら、
「蒼は初めてスカート履いた時、嫌がっていたけど、すぐに好きになって自分のスカートが欲がったりとかメイクも始めたり、あっと言う間に女の子になっちゃた。」
母が思い出話の様に、蒼がスカート履き始めてからのことを山下に話した。山下には学校の決まりで女の子になっていると言っていたので、本当のことがバレるとちょっと恥ずかしい。
「森田は高校卒業したら男に戻るの?」
母にばらされてしまった以上、秘密にしておく必要はないので、蒼は本当の気持ちを山下に伝えた。
「まだ決めてないけど、多分女の子続けると思うよ。」
「じゃ、一緒に大学受かったら、その時はよろしくね。」
「うん、わかった。二人で女の子で大学に行こうね。」
そんな会話をしながら、嬉しそうな山下を見ると蒼も嬉しくなった。
そのあと、山下はメイクを落として帰っていった。
「受験頑張ろうな。絶対二人で合格しよう。」
帰り際に、山下はそう言い残した。山下の嬉しそうな笑顔に、蒼も嬉しくなった。やっぱりかわいい服には魔力がある。




