校外模試
11月中旬の日曜日、蒼は校外模試を受けるために日曜日にしては早起きして家をでた。校外模試ということで市内の予備校でうけるので、私服でも構わないということになっているが、服装で悩むよりは制服の方がいい、学校と同じ平常心で臨めるので制服がいい、という意見もあり制服派も結構多い。蒼も制服で行くことにした。
大学別のプレオープン模試ということで、同じ志望校のはるちゃんたちも同じ模試を受けるが、県外の蒼は自宅近くの予備校で受けることにした。そのため、はるちゃんたちとは別会場となっている。
会場の予備校に入り、指定された教室に入る。少し古い高校の教室よりも大きくてきれいな教室だった。
試験が始まる前にトイレに行こうと男子トイレに入った時、トイレにいた人全員んが蒼の方を見た。ハクジョ男子になじみのない蒼の地元で、女子の制服で男子トイレに入ると異様な注目を浴びてしまい、蒼は制服にしたことを後悔した。
あわてて個室に入り、逃げるようにトイレから出たが、試験開始前に変な汗をかいてしまった。
試験前にトラブルはあったが、午前中の数学のテストを終えて、午後のテストに備えて、蒼は自分の机でお昼ご飯を食べることにした。トイレは面倒だが、1階まで降りれば多目的トイレがあるから、そこですることにしよう。
午後の英語のテストに備えて、英単語帳を見ながらサンドイッチを食べていると、
「ひょっとして森田?」
急に話しかけられて、ふりむくと中学の時の同級生がいた。
「山下?久しぶり。」
高校に入ってから合わなくなったが、山下とは中学時代仲良くしていて、家も近かったことからお互いの家を行き来してよく遊んでいた。
「白石高校って、本当に男子でも制服スカートなんだな。でも、森田似合ってるよ。」
「ありがと。森若さんにはこの前会ったよ。」
本当は制服がスカートなのは2年生だけで、3年生は自分の意思で着ていることはだまっておいた。たしか、山下と森若さんは同じ高校だったはずだ。
「そうそう、森若さんから聞いたよ。森田が、女の子になって、彼氏ができて、パパ活してるって。」
「ちがうって、それ森若さんの誤解だって。」
蒼は説明して、誤解をとくことにした。
「そうなんだ。女の子になったから、ひょっとして中学時代狙われていたかもと思ったけど、恋愛対象は女子のままで彼女までいるんだ。同じ大学志望なら、大学でまた会えるかもね。」
誤解がちょうど解けたところで、午後の英語のテストが始まる時間になったので、山下とは連絡先を交換してそこで別れた。
夕方、テストが終わり家に帰って、テストの復習をしていたところに山下からラインが届いた。内容を確認すると、久しぶり会えたことだし、また家に遊びに行ってもよいか聞いてあった。まあ、勉強の息抜きに中学の思い出話をするのもいいかなと思って、来週の日曜日に会おうと返事をした。
日曜日、山下が家にやってきた。玄関からリビングを抜け、蒼の部屋に行く前に母に挨拶をした。
「山下君、久しぶり。見ない間に大きくなったね。蒼もだいぶん変わったから驚いたでしょ。」
「見た目かわいい女の子でも、中身はかわらないので変な感じです。」
蒼はお世辞とわかっていても、男子からかわいいと言われると照れてしまう。照れているバレたくないので、早めに蒼の部屋に山下を連れて行った。
「森田、私服も女の子なんだな。」
「うん、髪型にあわせると女の子の服着ていないと逆に変だからね。それに普段から女の子していないと、学校でボロがでるからね。」
蒼は今日は室内用のワンピースを着ている。本当は女の子の服の魅力に気づいて好きで着ているとは言えずに、仕方なく着ているという感じを出していった。
「ところで、相談なんだけど・・・」
山下は下を向き、恥ずかしそうに語り始めた。
「俺も女装してみたいんだ。だけど、似合わないし、どうやってやったらいいかわからなかったけど、この前森田と再開して、森田がこんなにかわいくなれるんだったら、自分もできるのかなと思って。お願い、女装のやり方教えて。」
山下の突然の告白に、
「女装したいって、いつから?あと女装がしたいの?女の子になりたいんじゃなくて?」
「小学校高学年のころかな?女子のスカートがかわいく思えて、自分も着てみたいと思うようになってきた。かわいい服が着れるというところでは女の子になりたいけど、別に男が好きなわけではないから、トランスジェンダーとかではないと思う。」
本田さんや佐藤さんと同じ境遇みたいだった。ただ、山下は言い出せず、自分の仲だけで葛藤していたようだ。
「だったら山下もハクジョ受けたら良かったのに。ハクジョなら男子でも制服はスカートだからって理由でハクジョ受けたって子、何人かいるよ。」
「知ってたけど県外だったし、偏差値も高かいから諦めた。正直、森田が白石高校合格したって聞いたとき、うらやましかった。」
蒼は白石高校に入って以来、男子の制服がスカートで、嘲笑にされたり、同情されたりすることはあっても、羨ましがられたことはなかったので、不思議な気持ちになった。
「話してくれて、ありがとう。私のでよければ貸してあげるから、スカート履いてみる?男でもかわいくなれる方法があるから、教えようか?」
「いいの?」
恥ずかしそうに下向きながら話していた山下が、ようやく顔を上げた。




