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高校の制服がスカートだった件  作者: humihumi1234
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中間テスト

二者面談の翌日の昼休み、蒼は母の持たせてくれた弁当を涼ちゃんと西野さんの3人でいつものように食べていた。

「昨日の面談って何だったの?」と西野さんが聞いてくる、

「スカートには慣れたかと、今の学校生活について聞かれた。制服がスカートになって楽しい女子高生生活を送っていますって答えたら、先生も安心したみたいで、あとは雑談。好きな子いるの?とか勉強頑張ってる?とか。蒼はどうだった?」と涼ちゃんが答える。

「同じような感じだったよ。」と蒼は答えながら、涼ちゃんは「女子高生」を演じている自分がわかっているみたいだから、先生はあえて何もいわなかったんだなと思った。


 昼休み終了10分前の予鈴が鳴ったところで、涼ちゃんと一緒にポーチをもってトイレに向かう。トイレをすませて、洗面台でポーチを取り出す。女子のポーチには絶対入っていないであろう電気シェーバーを取り出し髭を剃り、さらに念を入れてコンシーラーを塗る。

 朝丁寧に髭を剃っても夕方過ぎには少し髭が伸びてきて、あまり動かず他人から観察されやすい電車やバスの車内では男だとばれるのを防ぐために帰りはマスクをしていたが、本田さんに教えてもらったこの方法でマスクが不要になり快適だ。

ハクジョの2年生はスカートというのはこの地域の人はみんな知っているみたいだが、男だとばれると変な興味の視線でみられることが多いので、ばれないことに越したことはない。


 先に髭の処理をおえた涼ちゃんが、

「蒼、今日テスト勉強で残る?」と聞いてくる

「うん、残るよ。あと1週間しかないしね。あと西野さんが1組の東野さんって子をつれてくるって。」と蒼が応える。


 白石高校では、女子高だったハクジョの時代から、テスト前は数名でグループをつくってそれぞれの得意科目を苦手な人に教えあう習慣がある。進学塾の少ない地方都市にある学校が、都市部にある学校に対抗するためにできた習慣らしい。

 苦手な人も先生よりも気軽に質問できる同級生に教えてもらえるし、また教えることで教えた側も理解が深まるというWin-Winの関係だそうで、始まったのがいつなのか分からないぐらい続いている。



 1年の時は当時は涼介だった涼ちゃんともう一人の3人でやっていたが、その一人が文系クラスにいったので、理系クラスで新しく勉強グループを作る必要があった。西野さんも同じように一緒に勉強していた子が文系クラスに行ったので、4人でグループを作ることにした。部活動が停止となるテスト1週間前の今日からグループで勉強することになっていた。


 放課後2組の教室に東野さんが入ってきた。ポニーテールが似合うかわいい感じの子だ。制服はネクタイとスラックスの組み合わせで、今日の西野さんと同じだ。

「初めまして、1組の東野理恵です。西野さんとは同じバレー部です。」と挨拶されたので、蒼と涼ちゃんもそれぞれ挨拶する。

「私1年の時も男子がいないクラスだったので、ハクジョ男子と話すの初めて。一緒に勉強できるようになれて嬉しい。」


 蒼の学年には8人しか男子がおらず、2年だとこの2組に3人、隣の3組に3人、そして文系クラスの5組に2人なので、男子と一緒のクラスの方が少ないので、東野さんみたいに男子と絡んだことがない女子も多いだろう。

「ハクジョ男子」初めて聞く単語に蒼は疑問を持ったが、すぐにこの高校の男子生徒のことで、さらにいえばスカートの制服を着ている男子のことだろうと推測がついた。白石高校と名前をかえてもまだそんな風に地元では呼ばれていることに、ハクジョのブランド力を感じる。


 教室内では別のグループが勉強をすでに始めており、蒼たちのグループも4人そろったところで机を合わせて勉強を始める。


蒼は苦手の英語について、得意と言っていた東野さんに質問する。

「東野さん、この英作文だけど答えこれで合ってるかな?」

蒼の書いた英作文をみながら、

「理恵でいいよ。東野って4文字もあって長いからから、みんな理恵って呼んでいるからそっちのほうが慣れてるの。この英作文だけど、仮定法だから、主節の時制がちがうよ。」

数学の問題を解いていた西野さんが、

「森田さんも今度から下の名前でいい?私はバレー部だとはるってよばれているから「はる」って呼んで。で蒼、この問題どうやって解くの?」

「じゃ、はるちゃん。この問題は、対数の真数は正だから・・・」

と4人グループ内では下の名前で呼び合うことになり急に親密さが増した。


 完全下校時間である19時に4人そろって学校をでる。バス通学の涼ちゃんと理恵ちゃんは校門前のバス停でお別れして、電車通学の蒼とはるちゃんの二人で駅に向かう。もちろん校門前のバス停からも駅に向けてバスはでているが、歩いて10分もかからないので、雨が降っていない限りバスを待つより歩きで帰る生徒の方が多い。


 二人並んで駅に向かっている道中、はるちゃんが話しかけてきた。

「私たちって逆だよね。男子なのにスカートの蒼と、女子なのにスラックスの私。」

「はるちゃんはずっとスラックスだよね。」と前からの疑問を蒼は口にする。

「別に男になりたいトランスジェンダーとかじゃなくて、単にスカートがあまりすきじゃないだけ。中学もスラックスとスカートの選択制だったから、ずっとスラックス。スカートここ5年以上履いてないな。蒼の方が私よりもスカート履いてるね。ところでこうやって二人で並んで歩いて、下の名前で呼び合っていると付き合っているみたいだね。」

とはるちゃんが笑いながら言った。

「付き合っているみたい」その言葉に蒼は驚いたけど、多分冗談だろうと自分に言い聞かせて深追いせずに流すことにした。


 電車では逆方向のはるちゃんとは改札で分かれ、帰りの電車に乗る。家に着くまで間ずっとはるちゃんことを考えていた。

「付き合っているみたい」は冗談だろうけど、冗談でも口にする以上蒼のことは好意的に思ってくれているんだろう。冗談だったとしても、そんな風に思ってくれていたことがわかってうれしい。

でも言葉通りだと、蒼の方が女子になっちゃうけど・・・


中間テストを月曜日に控えた土曜日、いつもなら学校は休みだが、蒼たちの勉強グループは学校に集まってテスト勉強することなっていた。

 蒼は朝食を手短にすませて、着替え始める。今日は気温が高いので、ブレザーは着らずに、ブラウスの上からスクールベストを着てリボンを付ける。クローゼットの姿見でみると、ブレザーの時とは違うかわいさがある。


 駅前の交差点の信号待ちの時に「ひょっとして、森田君?」と声をかけられた。

振り向くと中学3年の時同じクラスだった森若由紀子がいた。

 白石高校の以外の知り合いに初めてスカートの姿を見られたこと、しかもそれがよりによって中学時代片思いだった森若さんだったことに動揺して、

「森若さん、ひさしぶりだね。」と答えるのが精いっぱいだった。

逃げだしたい気持ちでいっぱいだったが、森若さんは

「白石高校って噂で聞いてたけど、本当に男子でもスカートの制服なんだね。」

と話しかけてきたので話を続けざるを得ない。

「2年生の男子はスカートなんだ。」と答えると、

「中学の時は気づかなくてごめんね。女の子になりたいってわかってたら、応援したのに。でもようやく着たい制服着れるようになってよかったね。」

と、森若さんは完全に蒼のことをトランスジェンダーと勘違いしているような発言をした。その誤解を解くには駅までの距離は短く、彼女の高校は蒼の高校とは逆方向なので駅の改札で別れた。


 電車の中で英単語を覚えようと思っていたが、森若さんに誤解されたショックで動揺して頭に入らないまま、学校の最寄り駅に到着した。

 こんな落ち込んだ気分の時は甘いものでも食べて気分を変えよう、そう思って蒼は駅前のスーパーに入ることにした。おいしそうな新発売のチョコレートが目に入り、それを一つとってレジに並ぶ。数人が会計後、蒼の順番がきて交通系ICで清算しようとすると、残高不足のエラー音が鳴った。

「すみません。現金でお願いします。」といつもなら声ばれするのを防ぐために小声で話すが、焦ったこともありいつもより大きな声になってしまい、後ろに並んでいた地元高校の女子高生にも聞こえてしまった。


 現金で支払ってお釣りを受け取る間、その女子高生が一緒に並んでいた友達との会話が耳に入る。

「あれって、ハクジョ男子だよね。」

「スカート履いてまでハクジョに通いたいのかな?絶対恥ずかしいよね。」

「胸のふくらみってひょっとして下着まで女物なの?気持ち悪い~。」

蒼はお釣りを受け取ると、逃げるように店外に出た。


 朝からショックなことが続いたが、落ち込んでばかりではテストは乗り切れないので学校に到着した後は、気分を切り替えて勉強を始めた。

 12時になり昼食を4人で食べながら、蒼は朝の出来事を話す。みんなからは気にすることないよと励ましを受けたところで、

「涼ちゃんはそんなことないの?」と蒼は聞いてみた。

「あるかもれないけど、気にしてないから覚えてない。」

と涼ちゃんは明るい女子高生のような回答をくれた。今日も蒼が男であることをバレたと思って、後ろの女子高生の会話を聞き取ろうとしたから、聞こえてしまっただけで、何も気にせずやり過ごせば良かった。


「ところで、涼ちゃんと蒼は私服もスカートなの?」

とハクジョ男子と初めて交流をもった理恵ちゃんが質問してくる。

「春休みからずっとスカートだよ。休みの日もスカート。自分のもあるし、母から借りることもあるよ。涼ちゃんは?」

「私もずっとスカートだよ。着せ替え人形みたいに、姉が休みのたびに服を選んで持ってきて、それを着てる。」

「みんな私と逆だね。」とはるちゃんが笑いながら言った。


 それからまた勉強に取り掛かり、午後3時過ぎに理恵ちゃんが

「ちょっと小腹がすいた~。休憩しよう。」

と休憩したいといい出したので、おやつ休憩をとることになった。

おやつを食べながら、理恵ちゃんが

「蒼って好きな人いるの?」と女子トークの口火を切った。

昨日の一件ではるちゃんを意識していることもあり、蒼が返事を躊躇していると、

「あ、その反応はいるね。っていうか、蒼の場合、恋愛対象は男子になるの?それとも女子のまま?」

「さすがに女子のままかな。」とひとしきり女子トークをして再び勉強に戻った。


 午後5時すぎにテスト範囲は一通り終了して、あとは暗記物と演習問題の繰り返しは各自自宅でということになり、解散となった。昨日と同様、はるちゃんと一緒に駅まで歩いて帰る。

その道中、はるちゃんが

あおい、これだとなんか呼び捨てっぽいからあおちゃんでいいかな?今日の朝は大変だったね。」と朝の件をもう一度慰めてくれた。

「涼ちゃんみたいに気にしないようにするよ。」と蒼が答えると、

「スカートって女性の特権なのかな?この高校にいるからかもしれないけど、私は男子のスカートってあんまり抵抗ないけど。スカートをはける権利が譲れるなら、蒼ちゃんに譲りたいな。スカート履いている蒼ちゃん、好きだよ。」

「ありがとう。少し気が楽になったよ。」と蒼は礼をいって駅の改札で別れた。



 また帰りの車内、蒼の頭の中で昨日と同様にはるちゃんの「スカート履いている蒼ちゃん、好きだよ。」の言葉がリフレインしている。

 最初にスカートを履いた日、自分でも似合っていないのはわかっていた。それからスカートの位置を調節して、姿勢も整え、髪型も変えて、褒められたことはうれしかった。しかもはるちゃんから。


 朝のいやな気分が消え、むしろいい気分で帰宅した蒼であった。

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