日曜日の部活~西野はるか~
10月初めの日曜日、バレーの試合のために西野はるかは市民体育館にきていた。勝てば久しぶりのベスト8となる大事な試合であるととともにもう一つの理由で、はるかは気合が入っていた。試合開始の時間になりコートに入るとき、観覧席に目をやると蒼ちゃんと涼ちゃんがいるのが見えた。制服で体育館まできている私たちにあわせて、二人とも制服で来てくれている。声をだすと周りに男だとばれてしまうから、手を振ってくれている。
蒼ちゃんと涼ちゃんが試合の応援にくることを昨日理恵から聞いて知った。理恵はレギュラーのセッターだが、私はレギュラーではないので出番があるかはわからない。せっかく応援に来てもらっているから、1度でいいからコートに立ちたい。
1セット目を落とした2セット目の中盤、はるかは交代でコートに立った。観覧席にいる2人に目をやる。2人とも私を見ていたみたいで、目が合い手を振ってくれた。何かやれそうような気がする。
試合が再開され、相手のサーブをレシーブした後、ボールがセッターの理恵に回る。理恵があげたトスをはるかはスパイクするためにジャンプする。打つ瞬間、相手のブロックの間に隙間があるのが見え、その間を通すようにスパイクする。狙い通りブロックの間をぬけ、得点につながった。コート上の理恵とハイタッチした後、観覧席に目をやると、二人とも拍手してくれていた。いいところを見せられて良かった。蒼ちゃんたちの応援のおかげか、今日は調子がいいみたいだ。
結局試合はセットカウント1対2で負けセッターの理恵は責任を感じて落ち込んでいるが、はるか自身は3セット目も交代で出場することができ、満足いくプレーもいくつかできたので個人的には満足な試合であった。
試合後、軽い反省会をしたのち解散となり、ロッカールームで制服に着替えて、体育館をでると、外で待っていた2人を見つける。
「待たせてごめん~」といいながら、理恵と小走りで2人もとへ向かう。
「お疲れ様。試合惜しかったね。理恵ちゃんもはるちゃんも頑張ってたね。」
と蒼ちゃんが言ってくれた。
昼ご飯は天気も良かったので、近くのファーストフードをテイクアウトして体育館横の公園で食べることにした。公園のベンチで、蒼ちゃんの隣に座って食べ始める。
「はるちゃん、かっこよかったね。スパイクも3本きめたし、こぼれ球を飛びついてコートに返したのも、すごかったよ。」
蒼ちゃんがほめてくれた。何本スパイクを決めたか覚えていてくれるあたりが、真剣に試合を見ていてくれたとわかって嬉しい。
食べ終わった後、駅まで一緒に歩く。前を理恵と涼ちゃんが歩き、その後ろを蒼ちゃんを並んでついていく。
「手つないでいい。」と蒼ちゃんが小声でお願いしてきた、
返事の代わりにはるかは手を蒼ちゃんの方へと伸ばした。
手をつないで、その瞬間蒼ちゃんのほほが赤くなったのが見えた。
蒼ちゃんが私を好きなことには気付いている。私も蒼ちゃんのことは好きだ。でもスカートを履いた男子が好きというと変な感じがして、全面的に蒼ちゃんの好意を受け入れられない。
でも今日は応援に来てくれたし、蒼ちゃんの応援で力をもらえたので、手をつなぎたいという蒼ちゃんの希望を叶えてあげることにした。
みんなとは駅で別れ、電車で帰宅する。家の最寄り駅についた後、駅ビルに入っているファストファションのブランドの店の飾ってあるマネキンが着ている秋物のスカートに目がとまる。
はるかはスカートを履かなくなった原因の出来事を思い出した。中学1年の今頃の季節、珍しくスカートで登校したはるかを見た男子生徒から、
「西野がスカート履くと、女装した男みたいだな。」と言われた。確かにその頃はベリーショートで、バレー部に入って肩幅も広くなっていて、けしてかわいい女の子ではなかった。
女の子らしくなろうとそれからは髪は伸ばしたが、スカートはその言葉がトラウマになって今だに履いていない。
女装した男そのもの蒼ちゃんや涼ちゃんは、女の子に溶け込むために懸命に努力している。ときにはスカート履いていることを揶揄されながらも、毎日スカートを履いている。
女の子なのにスカートを履かない私。一度似合わないと言われただけで、スカートを履ける権利を自ら捨ててしまうのは、蒼ちゃんたちに申し訳ない気がした。
そう思いながら、はるかは店内へと入る。




