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ある黒のドラゴンの転生記  作者: 文月 水涸
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凪斗の夢

 見上げれば青空が澄みきっていた。

「今日も天気がいいなぁ」

今年、街の学校へと進学する事が決まった。村の学校では成績トップになったことにより異種として扱われていた凪斗だが先生たちが味方になってくれている。あの夢とは大違いだ。

「おはようー、凪斗」

「おはようございます。アンシュ先生」

真っ赤な髪の男は凪斗に駆け寄ると有無を言わさずギュ~ッと抱きしめた。この先生は特に凪斗を可愛がってくれてる。

肉厚な抱擁に先生は本当にハグが好きだよなぁと苦笑した。

「卒業して街に行くと訊いたのだが…先生は先生は、ーーーーーやはり淋しい~!」

わんわんと泣く大男は毎回のように凪斗に告げる言葉がある。

「絶対、ぜぇ~たい…変な女の子に騙されないようにね?凪斗は可愛いからね!先生、心配だよぉ~」

どこをどう見たら可愛いなるのか凪斗には解らないが。どうも聖神力がある人間には凪斗はそう視えるらしい。

「大丈夫ですよ。騙されません」

そう、聖女には近づかない。特にティアラという女には絶対に。

彼女に出会い惹かれたのが一番の原因だと思ったからだ。あとハーブも。

父の所属の聖騎士隊も実は遠慮したい。

と、いうか絶対に近付きたくない。

「ブォルト学園に入学かぁ…名門中の名門校だよね~」

ぐすんと鼻をすする先生に『冗談じゃない!その学園は貴族、王族など集めた超エリート学園じゃないか』真っ青になった。進路を決めるのに色々と調べてわかった事だ。そこは聖騎士を目指す者は必ず進むべきと言われる学園だ。そんな怖い所には行きたくは無いし近寄りたくない。

「やだなぁ~先生。俺は普通がいいんです。それにそこは聖騎士とか聖女が目指す学園でしょう?行きませんよ。俺は…商人になりたいんです!だから商業の学校へ手続きしてますよ」

「商人?!」

はいと凪斗は頷いた。この大陸より、はるか東には凪斗と同じように黒髪の人間が住む国がある。ならば、そこへ向かえば…黒髪だからと嫌がらせを受けず、もしかしたらドラゴンだということもバレずに普通に平凡に暮らせるかもしれない。

そう、普通に暮したい。俺は普通に暮したいんだ。誰にも束縛されず、のんびりと。

「商人…凪斗がなぁ…」

首を傾げる大男。どうも商人の凪斗は想像できないらしい。可笑しいなぁとぶつぶつ呟いている。

「それよりも先生、俺が借りる寮なんですけど…変なんですよ」

凪斗は鞄から紙を出すと先生に見せた。実は両親から一緒に住もうと誘われたが断ったのだ。断ったので先生に頼んで寮を希望したのだ。出来ればバイトもしたいのだが。まぁ街に出ればいろいろ出来るだろうと今から楽しみだった。

「…個人宅というか…名前が貴族みたいなんですよね」

「だって貴族だもの」

え?と凪斗は目を見開いた。貴族???

「まさか、先生…?」

うんうんと頷く先生。

俺は寮を希望したよね?あれれ?

「可愛い生徒をワケのわからない輩が住む寮なんかに行かせないよ~そこはね。…、…、先生の従姉妹のそのまた従兄弟の更に従兄弟…かなぁーーーーー?う~ん、とにかく信頼できる方の邸宅なんだよ。向こうも承諾してくれたし。何より向こうから凪斗を是非ともと言われたんだよ。寮なんてって思ってたから渡りに船だよね。ここはね、凪斗と変わらない年の子もいるから仲良くできると思うよ」

にこにこと微笑む先生に凪斗は…ポカンとしていたが。正気に戻り、嘘だろう~!と嘆いた。

貴族なんかと仲良くなれるわけが無い!奴らは村の子ども以上に偏見がヒドいのに!ああーー!何で俺はこの人を信用してしまったのだろうか!

手続きは大人しか出来ない。でもまさか、本人の了承も得ずにそんな事をするとは思わなかった。

「凪斗にも親友というものをつくって欲しいな。いいぞ!親友は!」

うんうんと嬉しそうな先生には言えない、俺は親友だと思ってた男に殺されたんですけどね…?

乾いた笑いしかできない凪斗は、最後まで確認怠った己を殴りたかった。

そんな事はあったが、あっという間に季節は巡り街の学校へと向かう日が近づいた。




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