ウサギと戦闘。その後
ステータスを確認するとHPは結構ギリギリな状態になっていた。あと一発、もしくは、もう少しでも腕を噛まれたままだったら死んでいるところだった。
とりあえず初心者用ポーションを飲んで全回復する。
いくらかレベルがあがっているだろうとは思っていたけど、確認したらレベルが5になっていた。
スライムいくらかとウサギ(角)としか戦ってないからこの上がり方はどういうことかと思いログを確認したらスライムと戦っているときにレベルが1あがり、ウサギと戦ったときに一気に5まで上がったらしい。
スライムと戦ってHPが増えていなかったら多分ウサギの蹴りを受けたときの衝撃で死んでいた可能性もある。
それにより全回復しようと思うと初心者用ポーションが6本必要になったので、残りは3本となった。案外10本あってもすぐになくなっちゃいそうだ。街にあとで戻ったら買うか作るかしないといけないな。
とりあえずSTPは6PあったからAGIに4Pふって、2Pは保留にしておいた。
ポイント数的に、レベルが1上がると1P、レベル5になったときに3Pもらえたんだと思う。SKPはそのまま使わずに最初の残りと合わせて18Pだ。
スキルやドロップ品などの確認もしようと操作をしていたら、ガサガサという音を耳が拾ったからウインドウを閉じて周囲を見渡す。
音のした方から現れたのはウサギだった。
角がない。
大きさは先ほどのウサギ(角)より小さく見えるけど、それでも現実のウサギに比べるとサイズは大きい。でも、角はない。
先ほどウサギを倒した後に拾ったナイフを構えておく。
MPは50のうち残り30とまだ少し余裕があったから攻撃される前にとウォーターショットを放つ。今度もちゃんと目を開けて、だ。
すると放たれた魔法はきちんとウサギにあたり、そしてウサギは消えた。
「……魔法、あたるじゃん」
しかもウサギはウォーターショット一発で倒れた。
どういうことかと思いつつ周囲を窺いながら歩いていると、ガサっという音と共にぴょこりとまたウサギが現れた。
こちらも角がない。毛並みはごわっというよりは柔らかそうな感じだ。
今度はとびかかってきたウサギにナイフを振る。ナイフを握る拳が当たって地面に落ちたウサギを思い切り踏みつける。それだけでウサギはまたしても死んだ。
……。
おっとー?これはもしかして基本的にはこの角のないウサギが出るよって意味でおじさん達も比較的弱いっていってたのかな?
そりゃ魔法一発とか数発殴っただけで死ぬなら弱いって表現するよね。
依頼のところを見たらウサギの討伐のところが2匹達成となっていた。最初のはカウントされていないということは、つまりそういうことなんだろう。
最初に遭遇したウサギはウサギではない別の何かだったのだ。
ふっと気が抜ける。
あんな苦労するウサギを10匹なんてどうしようかなと思ってたところだったから、安心した。これならエンカウントさえできればなんとか普通に10匹倒せるだろう。
そう思うと足取りは軽くなったし、採取なんかも合間にやろうという気になる。
ウサギを探しつつ、採取もしつつ、出会ったらスライムとも戦いつつと進めていった。
その間に2回ほどウォーターショットを使ったけど1回は当たり、1回は避けられて外した。
やっぱり魔法に関してはナイフとは違って当てることができるようだった。
最初の角がついたウサギのときは、目を瞑って勢いで放ったのがいけなかったんだろう。こちらも安心した。ナイフが現時点で当たらないので、攻撃方法が増えるのはありがたかった。
途中、複数のウサギに一度に遭遇した。同時にとびかかってきたから一匹はナイフで受け、もう一匹は左で対応しようとしたらそのままうっかり両耳を掴んでしまう。いや、偶然にしろ耳つかめちゃうのか。
耳を掴んだ状態でそのままナイフで受けていなした方のウサギへと振りかぶる。両方とも大きさはそこそこだから外さない。ウサギ同士でぶつかり、そのまま2匹とも倒れた。
残ったウサギには思い切り石を投げてみたら、当たりどころが悪かったのか気絶するように動かなくなったから、ナイフでとどめをさした。
動かないもの相手ならナイフは刺せるんだよなぁ。なんで動くもの相手だとあんなにことごとく当たらないのか……。そんなことを考えながら探索を続けていく。
多少落ち着いて対応できるようになったから、先ほどは確認できなかったドロップ品を見たけど、ウサギの肉とウサギの皮以外に、角ウサギの肉、角ウサギの角、角ウサギの皮が入っていた。
モンスターの名前がウサギじゃなくて角ウサギになってますね。しかも1匹で複数のドロップ品を落としている。通常のモンスターじゃなかった可能性すらあるのでは?後で街に戻ったときに聞いてみよう。
そうしてしばらく経った頃、なんとなく身体が重い気がするなと思って満腹度を確認したらかなり低くなっていた。身体が重いように感じたのは空腹からだったようだ。試しに携帯食料を1つ食べてみたけど、ぱさぱさでぼそぼそ味も美味しくないから本当に空腹を満たすためだけのもの、という感じだった。できれば食べたくない。
口直しに屋台のおじさんから買った串を食べようかとも思ったけど、せっかくウサギのお肉があってスキルで料理をとったんだから肉でも焼いてみよう。
そう思って再び最初にいたスライムぐらいしか出てこなかった野原まで戻り、周囲を確認した後に初心者の料理セットを取り出す。街の中で座り込んで料理とか作業はできないかもしれないし、ここでいいだろう。門はもう少し向こうだから人もいないし迷惑もかからないだろう。
初心者の料理セットも旅セットと同じく大きな袋にまとめて入っていて、中を確認したらフライパン、フタ、両手鍋、包丁、まな板、小さい瓶に入った塩が入っていた。
……あれ、菜箸がはいってないな。罠では?まあお肉をステーキっぽく焼くだけなら手でひっくり返すとかでもいけるか。
そう思いつつウサギの肉を取り出した。
切ろうかと思って肉を見て、気になることができてしまった。
「……肉の大きさ、おかしくない?」