合流
ウミがイッチに近づいて話しかけるのを横目に、おりゃ、とニーナの両腕を押さえた状態で重みで倒れこんだようにお辞儀をする。
「わわ」
私の身長が小さいこともあり、ニーナがそのままの勢いでコロンと前に落ちる。腕はその時点で放していたから、ニーナはそのまま両手を地面について跳ねて前に着地した。
現実では簡単にはできない動きだけど、ゲーム内で身軽になっているからこその動きだ。おおーと小さく拍手をすると、びっくりしたなぁ、と笑いながらニーナが再び近くに歩いてきた。
「さて、それじゃあちゃんと合流できたことだし、今からのことを話そうか」
「それと合流するまでのことで面白いこととかあったらそれもね!」
「そうだね、色々話したいこともあるし」
「できるようになったこともあるしね」
イッチやウミも含めて、4人で顔を合わせるようにして話をし始めた。
私とウミの装備の話に、森での蛇達との遭遇について。ニーナやイッチ達がどんな感じで過ごしていたかや、新しくできるようになったり練習していることについて。
ニーナやイッチもHPやMPは回復していたけど満腹度は回復していなかったみたいで、合成で大きくした皮を敷物にして先ほど作った揚げ焼きやスープを食べながらそんな話をしていく。
「次の街に行ったら多少増えるけど、始まりの街だけだとそんなに食材も限られるのに結構美味しいな」
「パン粉なんて売ってたりドロップしたりした?」
「街の中にあったパン屋さんで買ったたたき売りのパンで作ったよ」
「そうなんだ」
揚げ焼きに使ったパンの話になったときに、興味がありそうだったからそこで買った他のパンを出しつつ場所の説明をする。どうやらイッチやニーナの話を聞く感じ、パン屋や農場の場所は掲示板などの中でもほとんど話題に出ていないようだった。
どんどん先に進めようとしてメイン通り以外の細道を通ったりする人はあまりいないようで農場へ行く途中にあった住人向けのお店はそんなに話題になっていないようだった。パン屋とか、特別に何か効果がつくようなものではないけど、満腹度と味についてはいい商品だと思うんだけどなぁ。
料理メインで進めてる人に教えてもいい?と聞かれたので前と同じく問題ないことを伝える。
「多分あえてあげてる人が少ないだけで普通に利用してる人もいるんじゃない?」
「いや、今軽く情報あげたけど、反応としては端から端まで歩いたのに見たことないってコメント入ってるな」
「?横道それてはいるけど普通にある道なのに?」
「そんなところに道があった覚えがないってさ」
「どういうことかな」
「なにか条件とかがある…とか?」
「チョッキは何か覚えある?クエストとか何か特殊なこととか」
「えー…?」
腕を組んで思い返すけどこういう他のゲームを普段やってるわけじゃないから、どれがキーになっているか思い当たるものがない。
「…あ」
「なになに?」
「うーん、しいて言うなら、農場もそこへ行く道もギルドで働いてる人から教えてもらった、とか?あと最初にログインしたときに屋台の人に食事処を教えてもらったりとか」
「なるほどな、会話がキーになってて情報を仕入れないと認識したり裏道入ったりできないのかもな」
「…うーん…フラグ管理とか組むの大変そうだなぁ…すごい…」
「ウミ?」
「ううん、なんでも」
そんな風に会話をしている間に満腹度の回復も終わり、今日の行先へと進み始めた。その間のイノシシも狼も話をしながらでも普通に倒せるから、これから戦うエリアボスの話をしながら進む。
エリアボスの場合は、パーティー内にまだ戦闘に勝利していないメンバーがいるときは、定められた区域に入った瞬間に戦闘が開始されるらしい。一度倒した後でも戦いたいときは関連クエストを受けると再戦が可能のようだ。
今回は私とウミがまだ戦っていないので、確定で該当する区域に入るとボスとの戦闘ということで空間が切り離される。
基本的にはパーティーを組んでいれば一定の範囲内にいればパーティーとして認識されて、区域に入っていなくても一緒に戦闘用の空間にとばされるが、かなり離れてしまっているとパーティーカウントからは外れてしまうようになっているらしい。
「はー…なんかすごく細かいね」
「そういうシステム的な距離とか設定とかを調べるのが好きな人もいるから、そういう人が調べた情報があがってるから。魔法が与えるダメージ係数とか」
「?」
「あーそういうの好きな奴はめちゃくちゃ好きだもんな」
「まぁチョッキはそういうのがあるんだなー程度で大丈夫だよ。そういうのに興味がない人からしたらそんなの気にしなくていいことだし」
「ま、そうだな。別に絶対覚えないといけないなんて内容じゃないし気軽に遊ぶ分には気にしなくていいぞー?」
「そうなんだ。覚えないといけないとかじゃないなら私はべつにいいかな」
「僕はそういうの結構面白くて好きだからあとでちょっと調べてみるのも楽しいかもね」
「そうなの?」
「うん。魔法とか魔法紙の有効範囲とかそういうのにも使えそうじゃない?」
「あー確かに」
先ほどウミが作っていた魔法紙を思い出してそんなことを話しているとニーナが少しにんまりと嬉しそうに笑っていた。
「?どうしたのニーナ」
「んー?いやぁ、お兄や私たちの都合で引き合わせたけどそれなりに仲良くなれてるみたいで良かったと思って」
「あー!確かにな。ウミもどっちかっつーとめちゃくちゃ社交的なわけじゃないし、相性悪くてギスってなくてよかったよな」
ニカッと朗らかに笑いながらパシパシとウミの肩に腕をまわして叩くイッチに、眉を寄せて重そうに腕をどかすウミ。見ていたよりも強かったのかもしれない。
「バリバリの営業職のコミュ力激高なお前と一緒にするなよ」
「あはは!悪い悪い。…ん?褒められてるよな?」
「しらね」
ウミもイッチ相手だとリア友だってこともあって私と話すよりも大分くだけた言い方で話しているのをみて、傍目には兄弟みたいな年の差に見えるけど仲がいいことが分かる。…もしかして私とニーナも身長差とか見た目的にはこんな感じに見えてるのかな。
普通に友達として話してるのに姉妹みたいで微笑ましいとか思われてたらそれはちょっと微妙だな…いや、いいか。面と向かって言われなきゃ別に。
エリアボスの動き方とか気を付けること以外に、そういうことを話していたが、私達はまさかそれがフラグとなるなど思いもしていなかった。




