戻る道中にて。
ダメージはそれほどないとはいえ、私とウミとで一旦街の方へと戻るという意見で一致した。
MPもかなり減っているし、満腹度もかなり低くなっていた。もう少しで行動に制限がかかりHPが削れていくぐらいに数値が低くなっている。
「うーん……やっぱり簡易食料って美味しくないよなぁ」
「あ、串焼きなら移動しながら食べれるけどいる?」
「あ、ありがと。そっか、こういうときにこういう物だと食べやすいね」
ウミは持っていたMP回復ポーションを飲んだあと、簡易食料の包みを剥がして微妙そうな表情でもそもそと食べ始めた。
その表情があまりにも美味しくなさそうだったから、インベントリに入れていた串焼きを取り出してウミに一本渡した。ウミが受け取った串焼きに口をつけるのを見てから、自分も串焼きを食べつつとりあえずの空腹をしのぐことにした。
本当は落ち着いて何かを食べたかったけど、ここでゆっくりしていてまた先ほどの蛇と遭遇しても困る。
さっきの蛇と再び戦うぐらいなら、蛇や蜘蛛が出る区域で食事をした方がマシだった。
しばらくあの蛇とは遭遇したくないというのが二人の総意だった。
「ウミは簡易食料以外の食べ物は買ったり作ったりしてないんだ?」
「うん、まだ最初に貰ったのが余ってるし、とりあえずそれがなくなってから買おうかなって。あとMPポーションにお金まわしたらそっちまでまわす余裕がなくなっちゃって」
どうやらウミはMPやHPを回復できるポーションを優先で買っていたのと、まだ余ってるからという理由で携帯食料以外の食べ物を買っていないようだった。
私が毒消しやMP回復ポーション、防具を後にまわして魔法石やスキルに必要な道具を買うのを優先したように、ウミは食料を後にまわしてポーション系や魔法紙とインクを優先したらしい。
優先順位は違うけど、必要なものも後にまわすあたりに少しだけ親近感がわく。
そのことを伝えると「簡易食料はあるし最低限のものはさすがに揃えてたけどね」とカラッとした感じでにこやかに言われてしまった。悪気ない感じなだけにぐっと言葉につまってしまう。いや、私も防具を買わない代わりにそんなに一人で遠出したりしなかったし無理もしなかったけどね。……遭遇するつもりのなかった角ウサギは別だけど。
「なにはともあれ、とりあえず隣街行く前にうっかり死ななくてよかったよ、ね!」
「そうだね」
そんな話をしながら襲い掛かってきた蜘蛛や蜂を処理していく。さっきの蛇のことを考えると、なんて攻撃が当てやすいんだろう。縄だってすり抜けない。大きさもそれなりだからかがんだ状態を維持する必要もないし、的だって大きいから当てやすい。蜘蛛の糸を使っての移動にも、蜂の飛行しながらの移動にも慣れてきて、サクサクと倒していけることが楽しい。
「攻撃がちゃんと当たるっていいなぁ!」
そう言いながらウミがウインド、水魔法で言うところのクリエイトウォーター、を使って攻撃をしていく。
本来なら攻撃には使えず、風を起こすだけの魔法だけど、道中色々と試して敵を囲んで動けなくするだけでなく、発生させる風の吹き出す面積を小さくして勢いをつけて飛ばして当てるなんてこともできるようになっていた。威力としてはまだ普通の攻撃には及ばないけど、消費するMPも少なく、蜂なんかはそれが当たるだけでも体勢を崩すからそこから杖で物理攻撃するには十分だ。
杖を持つからと一緒に取った杖術のスキル上げと魔力操作の練習も兼ねた戦い方をしていた。皆と行動していたときは魔法がメインで接近戦はしていなかったから杖術はあまり上達していないんだそうだ。
私の方も多少慣れてきたのか、クリエイトウォーターで少し威力の強い水鉄砲ぐらいの勢いで水を戦闘中でも出せるようになっていた。こちらもダメージとしてはほとんどないけど、相手の顔に当ててひるませたりはできるからそこから拳をたたきこむなり捕縛するなりしてとどめを刺していく。
クリエイトブロックでつかみやすい大きさに土の塊を作り、それをそのまま投擲してぶつけるなんてこともスムーズにできるようになっていた。
相手の動きに慣れてきて自分たちのレベルも上がったからこそできる練習だった。
「……」
「?どうかした?」
「チョッキ、……それはえぐいよ」
「え」
森を抜け、イノシシや狼が相手になった頃。
クリエイトウォーターの応用で狼の頭周りに水を作り出して溺死させたときに言われた一言だった。前は失敗したけど慣れたおかげもあってある程度の時間は維持できるようになったからできることだ。
「……いや、ウミも同じようなものだと思うよ」
「え?」
ウミがこちらを振り向いたとき、燃えるような音と共にイノシシが宙を舞った。
イノシシが向かってくる線上、ちょうど足元にファイアショットを発射させずにそのまま静かに置いて簡易の地雷みたいなことをしていた。
そして浮いたイノシシに杖を上から振り下ろして地面に叩きつけてとどめ。
こちらも色々試すうちに加減やら操作やらがうまくなったことでできるようになった応用だった。
「「二人ともどっちもどっちだよ」」
その後合流したニーナとイッチにその話をしたら、二人ともそう変わらないと言われ、思わずウミと顔を見合わせてしまった。




