蛇達との対峙。
うまくいくかどうかは分からないけど、試すだけ試して駄目だったら全力疾走で改めて逃げることにした。
「……チョッキ」
「うん」
「大丈夫?」
「オーケー、いつでも大丈夫」
「よし。……それじゃ、いくよ?」
ウミの掛け声と共に動き始めた。
私達が使うのは武器を使った攻撃じゃない。攻撃魔法でもない。どの攻撃も避けられるならそれらに賭けるのは意味がない。
ウミが風魔法の初期スキルで蛇たちを旋風で囲むようにし、ちらばったり逃げたりしないようにする。攻撃にはならないが、少なくとも範囲内にとどめることはできた。
そしてその外側の位置にクリエイトブロックを何度も使い、レンガを積むように、壁を作るようにしてぐるりと囲うように土の壁を作る。
高さは自分の膝上ぐらいだ。
蛇が尻尾を地面に叩きつけて身体をバネのようにしならせてジャンプして逃げようとしたのを、今度は上から勢いと量を増やしたクリエイトウォーターで一気に水をためるようにして水を流し込んだ。どれぐらいのMP消費でどのぐらいの量が出るか分からなかったから練習のときには使わなかったぐらいのMPを一気に消費する意識で、一気にだ。
水の勢いで沈むように、水流に合わせて囲った壁の中を勢いのままぐるりと流されるように動く蛇たち。
見ている限りダメージはなさそうだ。
「溺死はやっぱり無理みたいだね」
「…いや、チョッキは水止めてそのままで!」
今度はウミがファイアショットの弾を放つ前にとどめて球の大きさを大きくしてからためられた水の中へとゆっくりと下ろした。水に着弾した瞬間ジュッという音と水の蒸発する音が聞こえた。それと共に熱された水蒸気で少し視界が悪くなる。中を覗こうと背伸びすると、ウミはそのまま通常のファイアショットを何発か続けて撃ち込んだ。
私がウミに話したのは水で溺死させられないかと、動く範囲が狭くなったらナイフなどで仕留めることができないかということだった。一発目は大きな火の玉を作ってゆっくり入れたから、茹でるのを試してみるのかと思ったけど、そのまま至近距離で放たれた攻撃に、驚いて思わず耳をふさいでウミを見てしまう。
左手首を右手で押さえるようにしてファイアショットを発射していたウミが、はぁ、と大きく息を吐いて手をおろした。普段は杖を使うけど、杖を介するよりも手から直接魔力を操作した方がやりやすいというのがここまで来る間に初期魔法で魔力操作の練習をしているときにウミが感じたことだった。
「……ど、どうなった、かな」
「……わからない」
二人でそろそろと武器を構え直しつつ近づくと、蛇は3匹だけぷかりと浮いていた。囲んだところから逃げたところは見ていないし、姿が見えるのはそれだけだったので残りは倒せたと考えていいだろう。
「これは……動かないね」
つん、と杖でつつくように蛇に触るけど、蛇は浮いたまま何も反応がない。
「気絶?してる感じかな」
「ばっあぶ、……チョッキ!」
ウミの杖にも何も反応はなく、つつかれるままに揺れる蛇を見て、何とはなしに手を突っ込んで蛇を掴んで取り出す。ウミがそれを見て驚いたように声を出したけど、蛇はなんの反応もなく、掴まれたまま重力に従うようにくたりと垂れていた。
心配するウミにヘラリと笑って蛇を軽く振って大丈夫だということを示してから、ナイフを使ってとどめを刺すことにした。
ウミはそれを見て小さく息を吐いてから同じように蛇を仕留めていた。
インベントリを見ている感じ、それまでに倒した蛇のドロップらしきものは何もなかった。ウミが仕留めた蛇もドロップはなし。私が最初にとどめを刺した蛇もドロップはなし。
「あれだけ大変だったのに全体的に渋くない?」
「確かに……経験値も少ないしドロップも全然だね」
最後の一匹だけは試しに細い紐で首をキュッとしばって捕縛もどきのような状態にしてからナイフで首元を刺し、テレビで昔見たウナギとかを捌く感じでこんな感じかなと思うままに解体したら、蛇肉と、蛇の皮、蛇の目玉を手に入れることができた。サイズ的にも仕方ないことかもしれないけど、非常にしょっぱい。
「……一旦帰ろうか」
「そうだね」
解体して獲得した3種を手に持ちながら、ウミと二人顔を見合わせてから、どちらともなくそう言った。




