ウミと魔力操作と。
北門から街を出発した私達は昨日と同じように次の街へ行くルートではなく西側の森に向かって足を進めていた。
森に入るまでしばらくかかるため、その間に遭遇したイノシシと狼は、捕縛してから解体をしていった。実際に解体を行ったからか昨日よりも得られる素材の種類と数が増えていた。勿論普通に倒した時もパッシブの効果でドロップする素材の数は増えていた。
森に入る前に採取できそうな物があった場合は、ウミにことわってから採取も行った。これにより薬草も南門側ほどではないがいくつか採取することができた。
道中、接敵しないときは話をしながらクリエイトウォーターで魔法を操る練習をしていた。空中で水を発生させて、それを水の塊として保持したり、ホースの水のように自分の思った方向へ水を出したり、その勢いを変えたりだ。
気づいたら取得していた魔力操作のスキルのおかげで昨日よりも気持ちばかりだけど思ったように動かせている気がした。
「チョッキのそれはどの魔法を使ってるの?」
「これは初めから使えるクリエイトウォーターの魔法だよー」
「そうなんだ?結構色々な使い方ができるんだね」
「土魔法にもクリエイトブロックがあるけど、火魔法とか風魔法にもそういうのがあったりするの?」
「風魔法も火魔法も初期魔法でそういうのはあるけど、濡れた服を乾かしたりとか火種にしたりとかに使うぐらいかな」
「そうなんだ。火だとすぐには思いつかないけど、風だったらうまく扱ったら攻撃以外にも使ったりできそうだけどね」
「確かに……」
「ウミは魔力操作とかのスキルは持ってるの?」
「初めの時にポイント振って取得して、魔力紙に魔力を流す練習をしてたらいくらかレベルが上がった感じかな」
「そうなんだ。私は色々試してたら気が付いたら取れてたからレベル上げとかもそんな感じなのかもね」
バシャンッ
「……」
「……」
「ごめん」
「いや、大丈夫大丈夫」
ふわふわと浮かせた水の塊を四角い箱みたいに維持していたら、話で意識がそれたためかうまく維持できなくて水風船が弾けるみたいに暴発した。魔力操作のスキルが生えたおかげで扱いやすくなったような気がしていたけど、やっぱり気のせいだったかもしれない。
暴発した水で私だけでなく隣を歩いてたウミにもかかり、二人してそれなりに濡れてしまった。
申し訳なくて謝ると、ウミが笑いながら風魔法を使って乾かしてくれた。温かくも冷たくもない風は不思議な感じがしたけど、それほど経たないうちに乾いた。
……そういえば。
「ウミは火魔法も使えるから、両方使ったら温かい風とかも出せそうだね」
「?」
「ダスティンさんが水魔法と火魔法で複合魔法として使ったらお湯も出せるって言ってたから、風でもできるのかなって」
「……そのダスティンさんって人、ちょくちょく気になること教えてくれるね」
「教えてくれるというか話の種は投げるけど詳しい説明は気が向いたらって感じかも」
「冒険者ギルドの人なんだよね?僕も見たことある人かな……」
「どうなんだろう。機会があったらどの人が教えるね」
「うん」
そんな会話をしながら、途中でイノシシや狼を倒しつつ、私が採取をしているときは周囲を警戒しつつウミも風魔法で色々試したりしていた。
そうこうしている間に森に入る頃にはウミが指笛で利用した魔法紙を使って注意をひきつけて狼を集めてから、風魔法で周囲をぐるぐると囲むようにしてからそこを火魔法で攻撃。弱ったところをロープで私が一気に捕縛、そして解体という流れも何度か行えるようになった。ただレベルアップに伴ってかウミの火魔法の時点で死ぬことも多かったけど。
何度かウミだけで倒してしまってからは種火にしか使わないような初期の火魔法で、火力を強くして死なない程度に燃やすということもできるようになってしまった。
私よりもウミの方が魔法の応用を覚えるまでが早い気がして少し悔しいぐらいだった。魔力紙関係で魔力操作に慣れているからだと思うけど。
それでも攻撃魔法として使わないを実用できる感じで扱うウミに、自分も根気よく色々試そうと改めて思った。
そんな風に結構ゆっくりとした歩みで西の森の入口まで辿りついた。




