二つ目の魔法
スーサナさんが去ったあと、ウミと話した結果しばらく一緒に行動することになった。
昨日最後に決めたように、ニーナ達がログインしたら次の街まで行く予定だし、どうせ後から合流するならそれまで二人で一緒に狩りをしてもいいだろうという理由からだ。
ニーナ達へはウミと一緒に行動していることと、装備を無事受け取ったこと、周辺へ狩りをしに行くことをメッセージで残しておいた。私がニーナに、ウミがイッチへ連絡した。
狩りに行く前に、ウミと話しながら魔術師ギルドへと再び向かった。
ウミが使える魔法とは違う種類の魔法を使えるようにするためだ。道すがら魔術師ギルドの話をしながら歩く。
「チョッキも魔術師ギルドに入ることにしたんだ?」
「うん、そう。それでとりあえずもう一つ何か魔法を使えるようにしたいんだけど……」
「何にするか決まってない?」
「というよりコレだ!っていうものが今は特にないから折角だしウミと被らないものにしようかなと思って」
「なるほど」
「一緒にパーティー組んだ時は火魔法だけだったよね?」
「そうだね。そのあと貯まったお金で僕は風魔法を使えるようにしたよ」
「そうなんだ。……ちなみにどうして風魔法にしたか聞いても?」
「うーん、うっかり燃え移った時のために水魔法とかでもいいかなって思ったんだけど、火と風はそれぞれ相性よさそうだったから」
「相性?」
「そう。風は火の勢いを増したりできるから」
「はー……なるほど。そういうのもあるのかぁ」
「折角だし被る被らないとか気にせず好きなものを買うといいと思うんだけど、僕と被らずこの街で手に入れることができる魔法ってなると土魔法だけどそれでいいの?」
「うん。大丈夫」
そんな風に話しながら歩いていると、周りにいる人からちらちらと見られているのに気がついた。目が合うとパッとそらされてしまうし、前に絡まれたときと違い話しかけられてりもしないけど。
「なんか、見られてたりする?」
「うーん、少しだけ?」
そう言いながらウミはローブのフード部分から垂れているウサギ耳を首元に入れて見えないようにしまう。フードを被らなくても二つの長い耳が垂れているのが嫌なんだろう。
「……そんなに恥ずかしい?」
「チョッキは平気なの?」
「まぁ、多少はあるけど、ガワで考えたらリアルでの自分って感じがそこまでないから別に問題ないかなって」
「ガワっていう言い方」
「ウミも別に違和感ないし似合ってるよ。それは嘘じゃない」
「うん」
「あぁ、でも、ただ……」
「?」
「中身を知ってる人に見られるのはちょっと恥ずかしいかもなぁ、とは思う」
ニーナとかイッチとか。
まぁ二人は普通にカラッと笑って似合うね!!で済みそうな感じもあるけど。
その辺は自分の中で恥ずかしさがどうなるかってだけだ。
「……確かに。特にイッチ……」
想像して少しうなだれたウミに、男同士だしイッチの反応は私へのものとはまた違うのかもしれないなと思いつつ、なだめるように背中を軽くたたいた。
そのあとは小鳥亭で貰ったお弁当だったりパン屋さんの話とかをしながら進み、魔術師ギルドでは土魔法を取得するアイテムを購入した。
壁際で購入したアイテムを使用すると、分厚い本が目の前に現れた。
『スキルポイント5Pを使用して土魔法を取得しますか?』
目の前のウインドウに表示され、了承する。
目の前の本が淡い光に包まれながら宙に浮きパラパラと勝手にページがめくられるような動きをする。そのまま最後までページがめくられた後、少しだけやわらかく光って胸の中に吸い込まれた。
目を大きくして胸のあたりを掴んで驚いていると、ウミがくすっと笑う。
「驚くよね、やっぱり。僕も風魔法を覚えたときは驚いたから」
「ウミも今の」
「いや、僕には見えてないよ。多分チョッキにしか見えてない。多分アイテムを使用した人にしか見えないようなエフェクトなんだと思う」
「他のスキルの取得のときはそんなのなかったのに」
「もしかしたらアイテムを購入してのスキル取得だったからかもしれないね」
「……ちょっと綺麗だった」
「うん」
最初のユーザーデータを決めるときはこんなエフェクトはなかったから、もしかしたらアイテムを購入してのスキル取得だったからかもしれない。
他のスキルを取得したときも、シンプルにSKPを振り分けて取得するだけだったから少し驚いた。ファンタジーって感じだ。
ステータスを確認すると確かに土魔法を使えるようになっていた。
使える魔法を確認すると、水魔法と同じように土を生成するであろうクリエイトブロックと、ウォーターショットと同じように土の塊を撃ちだすアースショットが使えるようになっていた。
まだ練習が足りないけどクリエイトウォーターでもやりようによっては色々とできそうだったから、土魔法でも何か工夫ができるかもしれない。
狩りに出かけたらまずは通常の使用感と、クリエイトウォーターの応用の練習をしよう。いつの間にか魔力操作のスキルも取得していたから、その練習にもなるだろうし。
そんなことを考えながら、そのまま私は魔術師ギルドへも無事登録することができた。生産者ギルドと同じように簡単な説明を受けてからその場を後にした。
来る途中でウミに聞いた感じ、魔法紙とインクはギルドに入っても今の手持ちでは十分に買えなさそうな値段だったから、それはまた後にまわすことにした。いや、興味はすごくあるんだけどね。
ウミと歩きながら相談した結果、北門から出て道中狼やイノシシを倒しつつ昨日と同じように西側の森へ再び行くことにした。途中薬草なんかの採取可能なものがあれば採取しつつ、場合によってはポーションとかの補充をしつつだ。
ウミも私も多少はその辺りの消耗品は昨日の道具屋で補充していたからよっぽど奥まで行かなければ大丈夫だと思うけど、使った量によってはニーナ達と合流前に補充する必要があるかもしれないから。




