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新しい装備

「あれ?ウミ」

「あ、もしかしてチョッキも装備を受け取りに?」

「そうそう」

「確かこの辺りだったんだけど……」


 農場を出た後、スーサナさんが再びログインしたという連絡を受け、出来上がった装備の受け渡し場所を決めた。

 スーサナさんは次の街へも行けるようになっているけど、こちらに合わせて始まりの街での待ち合わせにしてくれていた。


 スーサナさんとの待ち合わせ場所へ来ると、同じくログインしていたらしいウミと遭遇した。ウミの装備も同じように完成したらしく、ここでの受け渡しの予定だったようだ。


 二人で少し言葉を交わしつつ周りを見ると、スーサナさんが手を上げつつ小走りでこちらへやってきた。


「ごめんね、待たせちゃったかな」

「いえ、私は来たばかりなので」

「僕もついさっき来たところなので大丈夫ですよ」

「そっか、ならよかった!早速だけど装備の確認していこうか」


 噴水広場の近くの邪魔にならなさそうな壁際へと移動して、スーサナさんと装備とノードの交換を行う。

 余った素材は買取ということで、支払いは思ったより少なくて済んだ。もしかしたら何が何個でどれぐらいが買取で、と計算も見た方がいいかもしれないけどその辺はそこまで細かく見なくてもいいかな。

 代金と装備の交換が終わり、早速システムウインドウから装備を変更する。

 とりあえずはつけていた狼のなんちゃってマントを外してインベントリにしまう。そうして完全な初期装備になってから、作って貰った装備に切り替えていった。


 上は襟が少し大きめのオーバーサイズのシャツに、ズボンは膝丈の狼の皮でできたズボン。丈が短いからか、ズボンの下に着るピチッとした黒色のレギンス、これはフォレストスパイダーの糸から作られたものを着色したものらしく、触ると案外するっとしていて気持ちがいい。

 胸当てはつけ方は分からなかったけどシステムから装備すると勝手に装着された。手袋に靴、そして最後にグラスウルフのマント。

 マントはなんちゃってマントと同じように狼の頭部分がフードのような形になっており、端や裏側がきちんと処理されている。前で留める部分は太目のバンドをボタンで留めるような形になっていた。フード部分にはウルフの耳が、マントの中央下にはウルフの尻尾がそのまま活用されていた。マントの防御力はそのまま羽織っていたときと比べると、処理がきちんとされているからか2から10まで上がっていた。ちゃんと制作されているって大切なんだなぁ。


「わ、さすがに一式そろうとかなり防御力が上がりますね」

「チョッキちゃんはほとんど初期装備だったから余計にそう思うかもね。数値に関しては素材でできる装備の範囲内だけど」

「スーサナさん……これはなんのために」


 戸惑い気味にそう尋ねるウミが持っているのは、ローブのフードについているウサギの耳だった。

 ウミは私とは違って自分で揃えた装備もあるから一式ではないものの、スーサナさんが作った装備はどことなく私のものに似ている雰囲気だった。ウミの場合はマントではなくローブだし、そのローブはウサギの耳がついているけど。

 シャツは襟の形が私のものとは少し変えられていて、ズボンは私のものよりももう少し長い。ズボンの丈が長めだからレギンスはない。


「ウミくんのもチョッキちゃんのも、可愛いからっていうのが大きいけど、つけるとほんの少しだけ効果が追加されるみたいなんだよね」

「私の方にもですか?」

「ウミくんのは俊敏さに少しプラス補正が、チョッキちゃんのは物理攻撃に少し補正がかかってるんだ」

「僕とチョッキ、ウサギと狼で逆の方がよかったんじゃ……」

「でもウミくんは話した感じ、魔法がメインで物理で戦うことはあまりないんだよね?」

「確かにそうですね」

「ぐ」

「可愛いし補正もあるしいいかなと思ったんだけど、あんまり気に入らないなら外すけどどうする?」


 私やウミの事情についてはスーサナさんには話していないから、スーサナさんは私たちの中身が大人だということを知らない。だから外見から似合うだろうと思って作ってくれたんだと思う。

 確かに少し恥ずかしいけど、外見が子供だし、自分からは見えないから耳と尻尾がついてるな、とは思うけど私はそこまで嫌ではない。

 ウミも白色のローブが可愛いし似合ってるけど、イッチの友人だから多分成人男性だしウサギ耳は恥ずかしいのかもしれない。

 ウミは耳しか気にしてないけど、ちら、と見たら小さくて可愛い尻尾もついていた。可愛い。尻尾はこちらから受け渡した素材から使ったのかもしれない。ウミは尻尾まで気づいていないみたいだったからそのまま黙ってどうするのか様子を見ることにした。


「……」

「似合ってるよ?」


 折角作ってくれたものを作り直させるのも申し訳ないのか、でも自分がウサギの耳を被るのは、というように困ったようにこちらを見たから、そう伝える。

 似合ってるのは嘘じゃない。


「耳もフードを被らなければそこまで目立たないと思うよ?私のもついてるけど」

「……このままで大丈夫です。ありがとうございます」


 ぐしゃぐしゃと頭をかいてから顔にそのまま下ろして手のひらで目元あたりを覆いながらウミはそのまま使うことを決めた。

 耳が赤くなってるのを見て、どうやって反映してるのかは全く分からないけどこのゲームは本当にすごいなぁと思いつつ私もスーサナさんにお礼を伝えた。


 スーサナさんは嬉しそうにしながらよかったらまた作らせてね、と伝えて去っていった。


「……」

「……」

 まだ少し恥ずかしそうにしているウミをちら、と見る。フードを下げていても耳部分が気になるのか手でいじっている。


「今度頼むときはどういうのがいいとか希望言う?」

「……希望というか苦手なものは言おうかな」

「そうだね」


 スーサナさんはそんなに気にしてないようだったけど、どうしても我慢ができない部分があるならお互いに余計なトラブルがないようにするためにも譲れない部分は伝えた方がいいだろう。


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