解体練習再び 1
「なんだ。こんな夜中に解体の練習だなんて奇特な奴は誰かと思ったらお前だったのか」
「ダスティンさんだったんですね。こんばんは」
「子供はしっかり寝ないと大きくなれないぞ?」
扉の先にいたのはウサギの解体を教えてくれたダスティンさんだった。
よろしくお願いします。と続けると、頭をぐしゃっと撫でられる。くしゃくしゃになった髪を手すきで整えながら話を続ける。
「小さい子供扱いしないでくださいよ」
「どう見たって子供だろ」
「幼く見えるだけでそんなことないですよ」
「そうか?旅人だし俺らとは年齢との見かけがちょっと違うのか、まぁ別にいいけどな」
「それにしても前回に引き続き時間帯が全然違うのにダスティンさんってことは、解体教えるのってダスティンさん一人だけなんですか?」
「いや?他にもいるが、家族持ちはちゃんと家に帰ってる時間帯だからな」
「なるほど」
「俺は此処で寝泊まりしてるようなもんだから、他の職員がいなけりゃ俺が当たることが多いってだけだ」
「…もしかして休んでるところを起こされたりしましたか?」
「?あぁ、違う違う。そんなことないから大丈夫だ」
手を顔の前で振りながら笑う。
「それよりもほら、今回はイノシシと狼の解体だったか?話すにしろ終わってからにするぞ」
「分かりました」
「とりあえずその二つなら狼からの方が説明がしやすいからそっちからな」
そう言って作業台を二度ほど軽く叩かれたので、生け捕りにした狼を台に載せた。
持ってきた数を聞かれたので二匹ずつだと答えると、今回は実演見せずに最初から説明しながら私が実際に解体をする形になった。
「そういえばダスティンさん、クリーンの魔法石を手に入れたので今回はこれを使いつつ解体作業をしてもいいですか?」
「お、もう買えるだけのお金が貯まったんだな。……マントみたいなもんを羽織ってるとはいえ、相変わらず服装がそのままだけど装備に使うお金をそっちにまわしたわけじゃないだろうな」
「いえ!装備は依頼したんですが、出来上がるまでに少しかかるのでこのままなだけです。ちゃんと装備にもお金は使いました」
「……ならいいんだけどな」
少し怒ったようにして尋ねられて、焦ったようにして否定する。じ、とこちらを見た後に頭をかくように手を動かしながらダスティンさんが口をひらく。
「冒険者として旅をするなら装備をないがしろにするのはやめた方がいいぞ。そういうもんを適当にする奴から死ぬからな」
「ダスティンさん……」
「さて、クリーンの魔法石だったな。道具屋のノエルのところで買ったのか?」
「あ、はい」
手に入れたクリーンの魔法石を取り出して手のひらにのせて見せる。
「使ってみたんですが、なんとなくダスティンさんが使ったクリーンとはちょっと違う気がして……これもダスティンさんが使っていたみたいに解体で使っても大丈夫ですか?」
「あー……」
ちょっと貸してみろ、みたくダスティンさんが手を出したからその上に魔法石をのせる。受け取ったクリーンの魔法石を発動させる。
「まぁ多少構成は違うみたいだけどクリーンはクリーンだし問題ないな。途中の経過が違うだけで最終的な効果としてはほとんど一緒だろ」
発動された効果を確認してから私の手に魔法石を戻しながらそう言う。
ダスティンさんの使うクリーンよりも、洗った!という感じがするけど、最終的には乾いているし効果的には問題ないらしい。
問題なく使えることも確認できたし、解体の練習に戻る。
狼の解体は、ウサギのときと同じくつるしたりせず机の上で行われた。狼と向き合う私の横から、ダスティンさんが指を指したりナイフを動かす動きを見せたりしながら細かく説明をしてくれたおかげで、多少手間取った部分はありつつもなんとか一体解体することができた。途中で発動させたクリーンも問題なく作用されているのも確認できた。
すぐに復習として二匹目、という流れだったけど、忘れないようにメモも取りたいということで受けた説明を声に出しつつ箇条書きにしていった。それを聞いて補足や間違えている部分は訂正されて、なんとなくの流れをまとめることができた。
今度はそのメモを見ながら、今度はできるだけ横からの口出しはない状態で二匹目の狼を解体していった。
途中何度か止められるところはあったけど、一匹目よりは短い時間で解体することができた。
インベントリにしまうと、ウサギのときと同じく部位ごとに収納される。
内臓に関しては動物の内臓というくくりだったからウサギのものとまとまった状態で収納された。
「おっし、狼の解体はこんなもんだな。ここまでで質問とかあるか?」
「大丈夫です」
「それじゃ次いくか」
「よろしくお願いします」
次に解体するイノシシを一頭取り出して机の上におく。
「んー、次の解体ははこれ使ってみるか」
イノシシを置いて振り向いた視線の先で、ダスティンさんがそう言って用意していたものは金属でできた大きなものだった。




