新たな知り合い
その後遭遇した敵と交戦はしたものの、街へは特に問題なく戻ることができた。
道中薬草を見つけたときは採取するために立ち止まりつつ、依頼に必要な分程度は採取することもできた。勿論皆を待たせることになるから根元から掘ったりはせず採取用ナイフを使用しての通常の採取だ。
街に戻るとイッチとニーナの案内で噴水広場へ行き、端の方にいた女性に声をかけた。
テラコッタ色の髪にマリーゴールドの瞳を持つボブカットの女性だ。
「スーサナ!」
「あ、やっほー。イッチ、ニーナ。……に、二人が紹介したい人達かな?」
「チョッキと言います。よろしくお願いします」
「僕はウミと言います。初めまして」
「はーい、私はスーサナ。防具メインの生産中心で遊んでるよ」
ヒラヒラと手を振りながら話すスーサナさんはにこやかで感じがいい。
「あー……にしても二人とも可愛らしいね。今はまだ素材の種類が少ないからできないこと多いけど創作意欲が湧くわー」
いくつか話をした後、しみじみとそう言ってスーサナさんが頭を撫でようとしたけど、フレンドではないから私もウミも触る10センチぐらい前に見えない壁に阻まれたように手が止まる。
「あ、ごめんね」
パッと手を離してスーサナさんは謝る。
「大丈夫です」
「気にしてないです」
子供相手に思わずという感じだったからそこまで気にしてない。視界の端にセクハラとして通報しますかみたいな表示が出たからいいえを選択しておく。
「チョッキちゃんはまだ初期装備なんだね。あとそのマントは何かな、初めて見たけど」
「気休め程度に皮でマントみたいに羽織りました。防御力は2だけですけど」
「そうなんだ、制作しなくても効果が出るんだね」
「マントに使ったのはドロップじゃなくて解体でゲットした素材なのでサイズが普通のものより大きいからかもしれないです」
「ニーナが言ってたスキルか。素材も見たいし、欲しい防具や費用はどれくらいとかはある?素材持ち込みで余った分は買取して費用から引くとかもできるよ」
「素材が足りるなら一通りとりあえずお願いしたいんですけど、今持ってる素材はこんな感じですが足りますか?」
とりあえず使えそうなものを見せようと手持ちの物を確認する。
狼の皮にイノシシの皮、角ウサギの皮、フォレストスパイダーとランドロードスパイダーの蜘蛛糸を渡して数が足りるかを尋ねた。
「グラスウルフとグラスボアはよく見るけど、角ウサギの皮はあんまり数が出回ってないしランドロードスパイダーの蜘蛛糸は初めて見たから嬉しいねー。せっかくだしこの辺使って作りたいな。あと通常ドロップより皮のサイズが大きいのも嬉しいねぇ」
これだけあったら一揃えは作れると思うよ。
その言葉に、とりあえず全部預けて装備を作ってもらって、残った素材は買取してもらうことに決めた。
「あ、そうだ。これも……」
「ぐっ、システム的にパパっと着替えるのは何も思わないけど、着ているものを脱がせるのって罪悪感すごいからそれは大丈夫!」
羽織っていたなんちゃってマントの結び目を外そうとすると、両手を前に出すようにして断られた。マントはちゃんとした装備じゃないからシステムとしてつけたり外したりはできないからそうしたんだけど、いらないと言われてしまったのでそのままにしておくことにする。
ウミも一部は装備が変わっていたけど、まだ旅人系の装備をつけているものもあったから、一緒にスーサナさんに装備を作ってもらうように依頼していた。
私とウミの二人はフレンド登録をスーサナさんと行い、出来上がったら連絡をしてもらうことにした。
「さて。スーサナへの橋渡しも終わったし、このあとは皆どうする?」
「私とイッチは諸々終えたらまた狩りに出ると思うけど、チョッキ達もくる?」
「うーん、私はもう少し薬草とってポーション作ったら納品に行きたいかな」
「僕は一旦ログアウトして色々片付けたあとは一人で色々ぶらぶらしようかなと」
「そっか!じゃあとりあえずは一旦解散かな。今日はありがと」
「了解。それじゃあ二人ともまた今度な!またなんかあったらいつでも連絡してくれ」
そうして一旦解散することになった。
ニーナとイッチはランドロードスパイダーやスキルの件を掲示板で共有したり、素材を売ったり道具の補充をした後に再び外に狩りにでるらしい。ウミさんはまだお風呂などに入っていないから一度ログアウトすると言っていた。
私はというと、もう少し薬草を採取してから、ポーションを作って納品までしたら今日はもう明日に備えて寝ることに決めた。ただ、時間によってはダスティンさんがあいていたらイノシシと狼の解体について教えてもらいたいからポーションの納品が終わった時間でまた考えるつもりだ。
ニーナ達とは次の街へ行くためのボスに挑戦しようという話になったから、明日またログインしたら連絡をすることになった。ニーナとイッチなら普通にすぐに次の街へ行くこともできるメンバーがいるだろうけど、私やウミさんだけだと心配だからということだった。どんな敵か分からないけどさっきのランドロードスパイダーのことを考えるとその気遣いはありがたい。
その時のためにも多めにポーションも作りたいし、もう少し効果があるものが作れないか試してみよう。色々済ませた後の手持ちによってはレシピを買うのもありかもしれない。
そうしてその場を後にして今度は南門へと足をすすめた。




