表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/62

西の森へ

 

 フレンド登録をそれぞれで済ませた後、イッチをリーダーに皆とパーティー登録をする。


 なんとなく三人は立ち回りが想像できるけど、自分だけはどう動くと邪魔にならないかいまいち現時点では想像できない。ポーション投げてぶつけたらヒーラー的な動きになる、のか?違うかな。ウミさんに確認したら回復できる魔法はまだできないということだったので、体力を回復するのはもっぱらポーションになるようだ。


 ニーナとイッチの二人が言うには街の西側には森が広がっており、そちらに行くと虫系のモンスターが多くでるらしい。次の街へ行くのにそちらに行く必要はないから、ニーナ達もまだあまりそちらには進んでないらしい。


 次の街への道をふさいでいたエリアボスはワールドアナウンスのログにあったようにすでに誰かに倒されており、次の街へ行けるようになっている。普通に自分たちで進む場合は、ボスと戦う必要があるけど、戦闘がメインじゃない人たちは街から街へと出ている乗合馬車をお金を払って利用すれば同じく次の街へ行くことができるらしい。

 それに付随した乗合馬車の護衛任務とかもギルドのランクによっては受けることができるのだとか。

 一度次の街へ着いたら、ポータルというものを利用すれば街の行き来も可能だそうだが、こちらもある程度距離に応じて費用がかかるようだ。


 ニーナとイッチは言わずもがな、ウミさんも少なくとも初期装備からは服装が変わっている。その中で自分だけ初期装備のままというのはよくないかもしれないけど、お金が他のことにとんでったんだから仕方ない。

 なんとなくないよりはマシかなと、解体スキルで手に入れた狼の毛皮(全身)を頭部分を被って前足部分を首元で結んでなんちゃってフード着きマント(狼)をつけておいた。

 もそもそと毛皮を被る私に、ウミさんは怪訝な顔を、イッチとニーナにはツッコミを入れられた。


「ワイルドすぎない?」というのはイッチの言。

「頭齧られてるみたいなんだけど」というのはニーナのツッコミだった。


 こんなものでもないよりはマシ判定だったのか、若干、本当に+2程度だけど防御に追加されていたからとりあえずそのままつけておいた。ニーナが試しにと通常のドロップで手に入れた毛皮を羽織ってみたけど、サイズの問題なのか何も効果はなかった。


 また、ロープはいちいち取り出すのが手間だったから、ぐるっと丸くまとめておいて、腰にぶら下げておいた。ぶら下げるのは、同じく狼の皮をナイフで四角くざっくり整え、帯みたいになるように畳んで腰に下げているナイフのベルトに通す形で行った。

 糸と針があったらなんちゃってで縫えたかもしれないけどないから仕方ない。


「ちなみに皆虫とかは大丈夫か?」

「現物は一部の虫は無理だけどゲームだし倒せるから大丈夫でーす」

「僕も多分問題ないかな」

「私も多分大丈夫だと思います」


「よっし、じゃあとりあえず西の森に行くか」


 初期装備ではさすがにボスに挑むには心もとないということで、とりあえずは動きを見るのも兼ねて、西の森に向かうことになった。

 移動している間に遭遇したイノシシや狼と戦いつつ、捕縛と解体について共有しておいた。


「生け捕りにして実地で解体教えてもらうなんてチョッキちゃんは面白いなぁ!」

 意外だったのかイッチには面白そうに笑われた。

 素材がどうなるかも説明したけど、見たいということで何回か実際に生け捕りにして解体を行う。解体で獲得した素材が、通常ドロップよりも細かい部位に分かれていることに興味深そうにしながら、イッチを先頭にしつつ進んでいく。


 とりあえず捕捉されるより前に石を投げてぶつけて戦闘を開始、こちらに向かってきた敵に向かって遠距離からウミさんが魔法で迎撃、近くまで来たらイッチが盾で止めたところをニーナがメイスを振りかぶってぶん殴る。途中回復が必要なときはポーションを投げてぶつけて回復。慣れてくると同時に複数を相手にするとき等はそんな感じの動きで進めることが多くなっていた。

 とはいえ、イノシシや狼ぐらいなら誰かの攻撃数発、ニーナやイッチに至っては一発で敵は倒せるから、滅多に戦闘中にポーションをぶつける必要はなかったけど。


 まだウミさんは魔法をぶつけるときに、攻撃がそれて味方にぶつけそうになることがあるということで、敵が近くまできた後は確実に大丈夫だと思った時か、動きを誘導したり制限するような位置に魔法を飛ばしていた。

 私の方も、ニーナの攻撃が入る前に相手が離れようとしたときに、拳と蹴り、そして掴みで動きを阻むように動いていた。イノシシはさすがに完全に動きを止めるのは無理だけど、狼ぐらいなら掴むところを考えれば掴んで動きを止められるようになっていた。

 個々人で相対するときは、弱らせることができたら、捕縛からの解体。弱らせる前に倒したら、解体スキルの効果で通常ドロップが多めに獲得。そういう感じで進めていた。


 ただ、この動きができていたのは、森に入る前までだった。

 森に入ると、木々が多く、また飛んでいる敵も出てくるため、最初に石をぶつけることが難しくなっていた。

 急に羽音がして驚いたり、姿は見えないけどニーナやイッチが反応して警戒するから、敵がどこにいるのかとキョロキョロしてしまったりしたため、途中で余っていたスキルポイントを使って気配察知を取得することにした。レベルは低いから距離の問題はあるけど、このスキルのおかげでなんとなく何かいるなというのが視界に入っていなくても多少近づいたら気づけるようになった。

 ついでにそのタイミングで振っていなかったステータスポイントを振り、他にもとれるようになっていた中で面白そうなスキルも取得しておいた。


 西の森に出たのは、蜂や蜘蛛といった虫だった。サイズは大きく、ウサギぐらいの大きさだった。的が大きいのはいいことだけど、身体に生えた産毛みたいな毛も見えてしまうから、結構うわ、と思ってしまった。

 蜂は体当たり以外にも針を飛ばしたりもしてくるし、蜘蛛も噛みつき以外に糸をはいたりして攻撃してくる。

 ただ、この付近にいる種類の虫には毒などの効果はないようで、攻撃があたっててもどうとでも対応できていた。


 なんならサイズがイノシシや狼よりも小さいから、私個人でいうと、うまいことタイミングを合わせることができれば掴むこともできた。

 複数の蜂に囲まれてそれぞれで対応しているときに、捕まえた後にそのままぶちっと力任せにちぎって倒したら、それをたまたま見ていたニーナにうわ……と言われてしまった。


 いや、だってちょうど掴めるサイズだったから……。

 メイスでつぶすのと素手でちぎるの、多分それほどグロさ的には差はないと思うよ。


 敵と戦いながら、途中で採取できそうな物があったら断りを入れてから採取も行う。

 途中で蜘蛛の巣がはられていたから、その辺の木の枝で、巻き取ってみたら、素材として蜘蛛糸を採取できた。

 ドロップとしての蜘蛛糸とは違い、ねばっとしていて、鳥もちを持っているような気分になってしまう。

 試しに飛んできた蜂に向かって鳥もちもどきを振ったら、それはまぁ距離感ミスって当たらなかったけど、持っていた棒に自ら勢いあまって突っ込んできた蜂はそのまま棒にくっついて動けなくなった。


「ねぇ見てニーナ!くっついたよ!」

 倒さずにニーナに向けて棒を振りながらくっついた蜂を見せたら、倒してるときはそうでもないけど至近距離でまじまじと見るとやっぱりサイズが大きいから嫌だねって微妙な顔をされた。

 戦闘中で勢いがついてるときは掴めるしどうこうできるけど、確かにこうしてマジマジと見たあとだと剥がしてわざわざ倒すというのはしづらいなと同意してしまった。

 こういうときの遠距離攻撃だよなということで、くっついた蜂は棒ごと地面に放ってウミさんの火魔法で倒してもらった。


 一回蜂をくっつけた後は、新たに棒ではられた蜘蛛の巣を巻き取って回収したら、鑑定時の名称が蜘蛛糸ではなく鳥もちになっていた。実際の鳥もちとは素材が違うけど、まぁ粘着力のある道具的な意味合いで使われているんだろう。

 ちなみに鳥もちは投擲で飛んでいる敵に投げつけたら翅にくっつくと動きをとられて落ちたりしてそこそこ効果があることが分かったから、それまでは武器で払って道をあけていたところを、はられている蜘蛛糸があったら木の枝で回収してインベントリに突っ込んでいくことにした。


 そんなこんなで進んでいく中で、何十回目かの蜘蛛の巣を回収した頃、ボワッっという音と共に空気が変わったのを感じた。


「!!」

「イッチ、これ……!」

「皆、警戒しとけ、ボス壁だ!」

「え?」

「ボス壁ってな……うわ」


 そんな風に警戒する二人と戸惑う私たち二人の前に現れたのは、今まで戦っていたものとはサイズが違う巨大な蜘蛛だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ