初めての生産者ギルド。
生産者ギルドへと到着した。
冒険者ギルドと同じような建物だけど、中に入ると少し雰囲気が違った。
配置などはそれほど違いはなさそうだったけど、置いてある椅子だとか、机だとかが木工で作られたのか飾り彫りなどもされていて少しおしゃれな感じだ。また作業場のような場所が多く用意されているようで2階、3階が借りることができるスペースになっているようだった。階段も皆が利用するからか幅が大き目の物が設置されていた。
冒険者ギルドでは階段は狭かったけど、訓練場へ続く道は広かったから、そういうことなんだろう。
生産者ギルドも登録が必要なんだろうか。
とりあえず受付のカウンターに並んでみる。
周囲はガヤガヤとにぎやかだ。ところどころ各種生産について話しているような内容が聞こえてくる。ポーション、という単語もちょくちょく聞こえてきたので、ポーション不足に対して対応しているのかもしれない。
そんなことを考えていると私の番になったので、カウンターのところに座る。
「ようこそ、生産者ギルドへ。この度はどのようなご用件でしょうか?ご登録でしょうか、それとも何かご依頼でしょうか」
「初めまして。チョッキと申します。初めて来たのですが、登録と説明などをお願いしても大丈夫でしょうか」
「ギルドカードはお持ちでしょうか?お持ちでしたらカードを出してください」
「あ、はい。お願いします」
そう言われたのでギルドカードを出す。ダスティンさんに見せて以来だから、一応表示は元のように最低限の表記にする。
「確認いたします。……はい、生産スキルはお持ちのようですね。問題ありません。登録が完了しました」
表記が最低でも、冒険者ギルドと同じように水晶、のような魔道具にかざすと内容が分かるらしく、そう言ってギルドカードを返された。
カードを確認すると、冒険者ギルドの下に生産者ギルドの表記がされていた。こちらも冒険者ギルドのときと同じくFランクで登録がされている。
「何も依頼をこなさなかったり、生産した品物の納品をしなかったりする状態で一定期間が過ぎますと除名されますのでご注意ください」
「分かりました」
「お持ちの生産のやり方などはご存じでしょうか?簡単なレシピであればあちらのカウンターで販売しておりますので、よろしければご利用ください。」
冒険者ギルド同様、作業場の貸し出しや、各種スキルに対して対面での教示などもあるらしい。対面での教示ではカウンターで販売している初歩的なレシピを一緒に教えてくれるようで、レシピを購入する費用よりはかかるが丁寧に教えてくれるようだ。
「分かりました。あの、レシピがない状態でも生産は可能なんでしょうか」
「はい、生産が成功したものは自動的に各々のレシピとして登録されます」
手持ちは今250ノードだから、レシピが串焼き並みの値段じゃない限りは買うことはできないだろう。できれば対面で手本とかも見ることができると分かりやすくていいと思うけど、いかんせん手持ちがないから仕方ない。やってみてどうしてもダメだったらお金を貯めて利用しよう。
とりあえずは適当に組み合わせたり、スキルを使用した感じを試してみるのもいいと思う。できればポーションの作り方だけは、すぐに分かるものだといいんだけど。
「何かご依頼は受けられますか?現在ですと、この街全体でポーションの数が不足しておりますので、調薬や錬金のスキルをお持ちですので是非受けていただければと」
「まだレシピなどを把握していないので……」
「初心者向けの依頼としてそれぞれの生産に対して、1つレシピをお渡しして納品していただくものがあります。そちらはレシピがついてくるため、通常の納品依頼とは違い報酬がかなり少なくなっておりますが」
「そういうものがあるんですね」
これが道具屋さんが言っていた基本的なレシピは教えてくれる、というやつだろうか。おそらく今の手持ちじゃまともに何かを買ったりできないし、どうせポーションは作ろうと思っていたところだ。
依頼を1つでもこなさないと除名の危機もあるし、受けない手はないだろう。
そう思い、初心者用のレシピ付きのポーション納品依頼と、通常のポーション納品依頼を受けた。
納品クエスト
内容:初級ポーションを5個納品する
報酬:初級ポーションレシピ、薬草10個、小瓶5本(先払い)、200ノード
納品クエスト
内容:初級ポーションを10個納品する
報酬:薬草20個、小瓶10本(先払い)、1000ノード
※ただし店売りと同等の回復量のものに限る
初心者用の依頼はともかく、通常はクエストとしてではなく普通に買取のようだけど、ある程度量が必要なときは必要な材料も含めて納品クエストとして掲示しているらしい。
ただ、報酬はギルドで買取する金額と同額だから、自分たちで販売してしまった方が高く売れる場合は、依頼として出してもあまり受けてくれる人がおらず困っているようだった。
ポーションも今は不足していて、おそらくここで納品するよりも普通に自分で売った方が高く売れるだろうから、うまく回収ができていないのかもしれない。
でもまぁなんてったって今の私は手持ちが250ノードの人間だからね。薬草はともかく小瓶は買えない可能性あったし受けないわけないよね。
薬草と小瓶とあと綺麗な水が必要らしいけど、水に関しては水魔法が使えるなら問題ないと受付の人に言われたから大丈夫だろう。
依頼も受けたし、お礼を言ってから席を立った。
販売するカウンターは混んでいたから、あいている待合用の椅子に座り、ウインドウを操作してウインド上で買い物をする。
生産ギルド、と広い範囲でのギルドだから、売っているものも様々だ。どのスキルに対応しているのかなんとなく想像がつくものから、全くつかないものまで色々だった。
クエストを受けたことで貰った初級ポーションのレシピは買うと300ノードだった。他のレシピに比べて非常に安い。が、買えない。依頼を受けておいて良かったな、コレは。
とりあえず小瓶の値段を確認する。材料として渡されるということは作るのに必要なんだろう。自分が飲んだ初心者用ポーションの瓶は飲んだ後ってどうなったんだっけ。そのままインベントリにしまったつもりだったけど、今は入っていない。使い捨てなんだろうか。それならなおさら小瓶を追加で買う必要がある。
小瓶は10本で400ノードだった。400……足りないなぁ。
すぐにうまくいくとも限らないから、小瓶は多めに買っておきたい。何か売るかな。
ロープや紐は買ったから、とりあえず普通にドロップしたウサギの皮を全部売ろう。解体したウサギの皮はなんとなくとっておく。
最初は防具とかに使えるかもと思っていたけど、どのみちお金もないから作成依頼も買うのもできないし、ウサギだったら今の装備でも十分だって分かったからいつでも狩りに行ける。
そういうことでなんだかんだと売っていなかったウサギの皮を全て売ることにした。多少捕縛用の紐を作るのに使ったとはいえ、帰り道で遭遇したウサギも結構いたので600ノードぐらいにはなった。これで手持ちは850ノード。
とりあえずこれで小瓶を20本買えるようになったから買えるだけ買って残金は50ノード。串焼きすら買えない手持ちってちょっと笑えるな。
仁奈と手持ちの話になったらめちゃくちゃ笑われそう。いや笑われても買いたいものを買ってこうなってるから全然気にしないけどさ。
時間を確認すると、移動なども考えるともうそろそろ噴水の広場近くには行っておいた方がいいだろう。万が一早めに戻ってきていたら待たせてしまう。
買い物も済んだし、とりあえず今日はこれでいいかな。近くにいたギルドの職員さんらしき人に挨拶しながら生産者ギルドを出た。
さて、仁奈はどんな感じの姿になってるんだろう。
髪型1つでも結構印象は変わるから、今から楽しみだ。




