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解体の説明

ウサギの解体の説明があります。苦手な方は注意願います。

「と、その前に」

 ダスティンさんがパチンと指をはじく。その瞬間に解体したウサギ、作業台から血が消える。もう一回指を鳴らすと私についた血が、最後にもう一つ鳴らすとダスティンさんが浴びた返り血が綺麗さっぱり消えた。


 なんなら自分の服についていた土汚れとかも綺麗に消えていた。


「えっダスティンさん今のなんですか魔法!?格好いい。あとすっきりしました!ありがとうございます!」

 いきなり目の前で起きたそれにテンションが上がって声が大きくなる。


「あはは、せわしないな。今のはただの生活魔法だろ。それを詠唱しなかっただけだ」

「生活魔法?詠唱なし?」

 生活魔法なんてスキル取得時のリストの魔法が載っていたあたりにはなかったと思う。


「あぁ、攻撃とかではなく生活する上で結構便利なやつな。洗浄したり明かりをつけたり料理の加熱をしたりとかそんなん。魔法が得意じゃない奴はそれぞれ必要な魔法がこめられた魔法石を買って使ったりする。あーでもそういやそうだな。異邦人はあんま使ってるところ見たことないな。なじみがないのか」

「生活魔法に魔法石……そういうものもあるんですね」

「今使ったのは洗浄魔法、クリーンだな。汚れとかを消せるから外に出て戦ったり旅に出るなら覚えておくと便利だな」

 難しい魔法じゃねぇから詠唱なくすのもやりやすいしな。詠唱破棄練習するのにもいいと思うぜ。

 ダスティンさんはそう続ける。


 解体もそうだけど聞きたいことがどんどん増えてくんだけど


「ま、そんなもんは後でも説明できっから、まずはこっちな。とりあえずおろした素材しまいな」

「えっでもこれはダスティンさんがさばいてくれたんですし、教えてくれるんだからダスティンさんがもらってください」

「俺はギルドからちゃんと給料もらってるし業務内だから別に気にすんなよ」

「いやいや、大丈夫です!」

 どうぞどうぞと手で素材をさす。


「まぁそういうのも後から話すからとりあえず素材をしまえ。作業の邪魔になるから。な?俺今は保存用の袋も持ってねぇし」

「う、……はい」

 確かにそう言われるとインベントリに入れられる私がしまった方が楽だろう。


「よし、じゃあしまったことだしとりあえず次のウサギ出して」

「はい」


「とりあえず驚いたかと思うが、別に解体するのにあんなに派手に行う必要はない。普通の解体用ナイフで十分だ」

「えっ」

「まぁ聞け。採取用のナイフはモンスターに使われることは想定されてないから使わない方がいい。解体用の包丁やナイフなら道具屋に聞いたら出してくれる。普段は購入するやつがほとんどいないから裏にしまいこんでるかもしれないけどな」

「確かに」

 道具屋さんで開いたウインドウには載ってなかった気がする。


「包丁かナイフかは、大きさもあるから好みの問題だ。獲物が大きいものにも対応できるのは俺が使ったような包丁だけど、ナイフでもできないことはない。逆に細かい作業はナイフの方がやりやすいだろうが、さっき俺がやったみたいに包丁でもできないことはない。要は慣れと好みだな」

 あぁでも皮膚が硬いやつなんかは別途技術か道具が必要になる。そもそもそんな硬いやつを生け捕りにしてくる奴なんかほとんどいないからよっぽど稀だけどな。

 ダスティンさんが続ける。


「なるほど……」

「解体する手順は血抜きとかもやろうと思えばできるが、洗浄魔法が使えて血が飛び散っても問題ない場所でやるなら別にしなくてもいい。血抜きも熟成も面倒だし時間かかるしな」

「臭みとかガス?とかは大丈夫なんですか?」

「それも洗浄魔法を使えば問題ない。気になるなら作業途中で素材に洗浄かければ作業中の匂いもそれほど気にならない」

「便利ですね洗浄魔法」

「だからこその生活魔法だしな。なくても対応できるがあると生活する上で便利」

「いいなぁ」

「ソレについても後から説明してやるから、一旦置いとけな」

「はい」

「とりあえずチョッキ、お前は小柄だし手も小さいからナイフの方が最初はやりやすいと思うから、そっちで説明するな」

「あ、はい」

 確かにダスティンさんに比べると小柄だろうから妥当だろう。


「まずは動いてやりにくいなら首を刺すか骨を折るかで息の根を止める」

「え、息の根を止めるとモンスター消えちゃわないですか」

「一旦生け捕りにした状態でしめると解体できるから、消えない。ドロップ品にもならない」

「あれ」

「どうした?」

「や、だいじょぶです」

 ドロップ品通じたしモンスター消えるのも通じたじゃん。じゃあおじさんとの聞き返しは単に聞こえなかったからとかそんなんかな。


「俺の場合は多いのは皮を最初に剥いで、順繰りに肉を切ってくことだな」

 洗浄魔法なしで血抜きからやるなら、血抜き、内臓とる、毛皮剥ぐの流れになる。


 そう説明しながら今度は丁寧にナイフを入れて皮を剥いでいくところを見せてくれる。

 最初の方だけナイフを使って、そのあとは意外にもするっと皮がめくれていた。ただ、顔や足の部分はゆっくり行っていたけど。

 皮を剥いでいくダスティンさんの手は滑らかだ。


「逆さにした方が皮も剥きやすいしさばきやすいが釣り上げるのが面倒だから、このままいく。この部屋、別に解体専用ってわけじゃないし道具もないしな。

 皮は剥いだ後、お腹から切れ目を入れて腸を取り除いていく。肝臓、レバー、肺とかもな」


 ほれ、これ。

 そう言ってお腹に入れた切れ目からそれらを出す。うーん、グロ。でもホルモンって思うと別にそこまでではないかな。

 そこまでぐちゃみそリアルって感じではないけど、そこそこの肉加減だ。もしこれがグロ表示不可になっていたときは全面的にモザイクがかかったりするんだろうか。そうすると説明に意味なんてないよな。


 今回は丁寧に説明してくれるから見ていることも含めてメモをとっていく。メモしているのを見たからか、私が文字を書いているときは説明や手を止めて待ってくれている。優しい。


「内臓類は焼いて食べることもできるが、新鮮じゃないならやめておいた方が無難だな。鑑定できるならしてみな」


 言われて鑑定する。

 鑑定するとウサギの内臓(新鮮)と出ている。


「今は抜いたばっかだから新鮮だが、解体に時間がかかるとすぐに劣化する。そうすると食べない方が無難だと俺は思うね。クセが強いから味も好みが分かれるし」

 そう言いながら内臓類を一山にしてまとめて置き、続きをする。


「ウサギはサイズにもよるが丸まんまで食べてもいい。ギルドでは皮の内臓の処理がされてれば丸のままでも買取してるぞ」

 ただ結局はギルドでばらして売ることになるから、自分でばらしてから売るか生け捕りの状態で持ち込むかした方が割はいいかもな。

 とりあえず今回は解体の説明だから切ってくぞ。


 ダスティンさんはそう言いながら説明をはさみながら、私が見ているか、メモしているかを確認しながら作業を続けていく。


 ウサギに関していうなら、皮と内臓の処理が終わったら後ろ足から始める。

 ここ、まぁ尻の筋肉の分かれ目からナイフを入れる。関節に包丁を入れて股関節を外す。反対側も同じように外す。これで後ろ足の分割が終了。


 ……メモ終わったか?次は前足だ。

 後ろ足と同じで筋肉の分かれ目に沿ってナイフを入れる。触ると肉が離れるから分かりやすいと思う。ほら、こんな風に。

 ここで筋肉の分かれ目以外にナイフを入れるとぐちゃぐちゃになって品質が下がるから気をつけてな。


 残りは胴体だ、ということで、そのあとは胴体を頭側のカタとお尻側のロインの2つに分け、ロインは牛豚と同じようにロース、バラとに分けていった。

 頭側のカタは開くと心臓が出てきた。横隔膜にはハラミだと思われる部位もついている。

 ウサギにしては大きいとはいえ、牛とかのものよりは小さい。背骨に沿ってろっ骨を折りながらカットして背骨と切り離す。

 解体自体はこれで終了。食べるときに更に小さい骨とかはトリミングするみたい。


 ここまでの作業が終了して、ダスティンさんにもう一回置いてある内臓を鑑定するように言われる。

 再び鑑定した内臓からは新鮮の文字が消えていた。


 さっき言っていたことはこういうことなんだろう。思った以上に新鮮表記が外れるのが早い。

 ついでに他の部位も鑑定していくと、ウサギ肉という表現ではなく、それぞれウサギのバラ肉、ロース、など部位別に表示が出た。


「新鮮じゃなくなった内臓とかはどうするんですか?ゴミとして処分ですか?」

「いや、内臓類は処理すれば肥料や動物の餌にできる。ギルドでは解体時に出た内臓はまとめて農場に持っていくことが多いな」

「農場があるんですか?」

「そりゃあるだろ。隣街への道がふさがってるいま、自分たちで食べるもんを育ててなきゃ何も食べられなくなるだろ」

「さらっと街をみてまわったときにはなかったので」

「あぁ、そりゃ表通りだったからだろ?住人達の居住区の向こう側に農場も住人が使うような店もある。パン屋とかな」

「私たち旅人でも利用できますか?」

「?別にできるぞ」

「そうなんですね」

 言われてみると確かにそうなんだけど、農場ではどんなものを育てているのか気になるし後で場所とか聞いてみよう。あとパン屋も気になる。


「ちなみに内臓を刃物でとっていくやり方を今回説明したけど、皮を剥ぐ前に素手で内臓を飛び出させて手早く内臓をとるやり方もある」

「えっこわ」

「でもこっちは皮のサイズが落ちたりとか色々あるから、とりあえず今回はノーマルなやり方を説明した。他の生き物だとそれぞれ注意しないといけない点とかも別途あったりするから、ウサギの解体は、って感じだな」

 ダスティンさんが一匹目と同じように洗浄魔法をかけたから、素材をしまい3匹目を取り出す。


「じゃあこのナイフ貸すからやってみような」

「はい!」


 差し出されたナイフは戦闘用のナイフより小ぶりで、採取用のナイフよりは大きくてしっかりしている。

 緊張する。けど、一回目でうまくできなくてもいいだろう。もう少し生け捕りにしてこればよかったな。

 そんなことを思いながらウサギにナイフを入れた。


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