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初めての任務達成報告。

 

「お疲れ様です」

「あぁ、お帰り。大丈夫だったかい?」

「はい。依頼も無事達成しました」

「そうか。ちゃんと門から戻ってきてくれてよかったよ」


 門番さんに挨拶をしつつ街へ入ると、笑顔と共にそんな声をかけられる。笑顔で軽くやり取りしてから、おじさんの屋台へと向かう。


 門番さんも朗らかそうな男性だった。

 門から戻ってきてくれたというのは、異邦人の旅人は祝福があるから死なないとはいえ、たまに門を通らずに帰ってくるから、とのことだった。

 多分死に戻りのことを言っていると思うけど、住人の中でもそういうものだと認識されているらしい。別の街に行ったわけでもないのに一方通行で出て行ったきり、というのは幾分気になるものがあるんだろう。


「おじさん!さっきぶりです」

「?おぉ、嬢ちゃんか。街の外に出てたのか?大丈夫だったか?」


 おじさんの屋台まで行って後ろから声をかけると不思議そうに振り向いたあと、覚えていたのかすぐに反応がくる。

 門番の人といい結構皆心配してくれるんだね。


「はい。途中危ないところもありましたけど、ギルドで受けた依頼も無事達成しました」

「そうか、よかったな」

「はい。おじさん今話しかけても大丈夫ですか?お忙しいですか?」

 対応しているお客さんはいなさそうだけど、とりあえずは確認をとる。


「ははは、子供がそんな風に気にするもんじゃない。今は客もいないし大丈夫だ」

 またしても子供扱い。どうなってるんだおじさん、と思いつつ些細な事だからそのまま話を続ける。


「おじさん、多く狩ったお肉は食事処におろしているって言ってましたよね?」

「あぁ、そうだな」

「おじさんはウサギを狩ったあとって自分で解体とかしてるんですか?」

「基本的には自分ですることもあればギルドに任せることもあるな。最近は旅人が多くギルドへ売ってくれるから自分で狩りに行かなくても肉はあることが多いけどな。それがどうかしたか?」

「おじさんってウサギを狩ったら荷物に肉の塊が入ってたり……」

「ん?」

「いや、なんでもないです。ウサギを何匹か生け捕りにしたんですが、自分では解体する方法が分からなくて……。おじさんはやり方を知ってるかな、と思いまして」

「手ぶらなのにどこに……あぁ、なるほど。異邦人ってのは便利な道具を持ってるな」


 インベントリはいっぱい入る道具だと思われているらしい。

 ドロップとか諸々はおじさんの反応的にどういう扱いになってるのか分からないから深堀りしないことにした。

 が、後日ひょんなことから普通にモンスターからのドロップ品が通じて、今回の聞き返しがただ単に聞こえなかったから聞き返されただけだと判明することになる。


「俺が教えることもできるが、ギルドでも解体できる職員がいるからそっちで聞くといいぞ。どのみち解体するには場所が必要だから俺が教えるとしてもギルドで場所を借りてやることになるしな」

「ギルドで聞いたら教えてくれますかね」

「まぁ異邦人が持ってくる肉ってのは決まったサイズのものだけだから、解体して他の部位もおろせるようになるってんならギルドも喜んで買取するだろうし、教えてくれると思うぞ」

 まぁもし教えてもらえなかったら店をしめたあとでよければ説明するけどな。あんまり説明とか得意じゃないけどよ。

 おじさんがそう続ける。


「なるほど……。じゃあとりあえず依頼の達成報告ついでに聞いてみますね」

「まだギルドに報告しに行ってなかったのか」

「おじさんに先に話を聞こうと思って。もしダメだったときはおじさんに教えてもらいますね」

「あぁ、任せとけ。……」

「?」

 おじさんが急に黙ってこちらを見る。


「……いつまでもおじさんって呼ばれるのもな。俺はロルフってんだ」

「あっ!私はチョッキって言います」

「チョッキな。お嬢ちゃん呼びしてるのもアレだし今度からそう呼ぶよ」

「はい。私もロルフさんって呼びますね」


 初めての住人との自己紹介。

 当たり前だけど名前がそれぞれついているみたいだ。

 店の人とお客さんとで、わぁ初めましてこんにちは、私の名前はーとはならないしね。

 名前を教えてもらったのもこれが初めてだ。なんだか嬉しい。


 自己紹介もしたしそれじゃあ、ということでおじさんに小さく手を振ってからその場を離れた。


 あ、そういえば角ウサギのこと聞き忘れたな。まぁギルドで聞けばいいか。


 冒険者ギルドまで行くと、やはりほどほどに人がいた。けど最初に行ったときほどではない。

 最初に受付してくれたお姉さんのカウンターがあいていて、目があったらこちらへどうぞと手を席に向けられたからそのままお姉さんの前に座る。


「任務達成の確認と他にもいくつかあるんですけど大丈夫ですか?」

「はい、とりあえずまずは結果報告をしましょう」

 ギルドカードをこちらへ。


 そう言われたのでギルドカードを渡す。

 討伐に関しては討伐した証拠として部位の提出とかではなく、自分でも依頼を確認できるように職員の人もカードを通して任務の進み具合とかが見られるようだ。


「はい。スライムの討伐とウサギの討伐、達成確認しました。薬草の採取についてはいかがでしょうか」

「あ、とってきました。それなんですが、どういう状態でとった方がいいのか聞きそびれたので、一応こういう形になってるんですけど……」


 そう言いながらインベントリから根付きの薬草を10個と、ナイフで切ったもの、手でむしったものを取り出す。


「ナイフで採取されたものを納品される方が多いですね」

 こっちは状態が悪いので報告としては数に入れることができません。

 そう言って雑にむしった品質マイナス値の薬草はそっと返された。


「根付きのものだとより使用に幅がでるためこちらの方がありがたいです。手間もかかったでしょうし報酬に少しだけプラスしておきますね。ありがとうございます」


 そう言って依頼は3つとも達成し、初めての報酬をもらった。

 討伐依頼2件と採取依頼1件とで若干色をつけてもらって計450ノード。所持金はこれで1,850ノードだ。金額としては微々たるものだけど初めてバイト代をもらったみたいな嬉しさがある。


「初回の任務を達成したので、ギルドのランクがEになります」

 そう言ってギルドカードを返される。カードに書かれた冒険者ギルドのランクはFからEへと上がっていた。

 とりあえずこれで除名はなくなったな。


「他にもあると言われていましたが、何についてでしょうか。素材の買取に関してはこのままこのカウンターで行うこともできますよ」

 お姉さんがそう続ける。


 買取も流れでそのままやってもらえるのか。買取カウンターでまた並びなおしたりする手間が省けた。


「いくつかあるんですが、まず南門側の方へと行っていたのですが、そこで角の生えたウサギと遭遇しまして、それについて聞ければと」

「角の生えた……角ウサギですか!初心者の段階で出会うには少し大変だったのでは?無事で何よりです」

「あまり出ないんですか?」

「そうですね。ほとんど聞かないので南門側の話をする際にも説明されないことが多いと思います」

「なるほど……。最初に出会ったウサギはそいつだったので皆さんがウサギと呼んでいるのが皆角が生えてるのかと思って驚きました」

「初めてで遭遇とは運が悪いのかいいのか迷うところですね」


 お姉さんに同情されている。確かにうっかり死にかけたもんね。


「角ウサギからとれたものでしたら通常のウサギよりも高く買取できますがどうされますか?」

「素材買取については、とりあえず防具とかを作るのに使えるかもしれないので角ウサギの素材はやめておきます。

 ウサギ肉とスライムゼリーを。あとこのへんも買取できますか?」


 いくらかは残しておいて、多めに持っていたものだけ受け渡しをした。

 食用草とかはどんなかなと出してみたけど、それに関しては食べられますが雑草区分のため買取はできません、とお姉さんを困らせてしまった。大人しく食用草はインベントリにしまった。


 買取金額はそれほど高くはないけど、それなりに数があったから800ノードぐらいにはなった。討伐依頼が報告だけで素材はそのまま自分で使ったり売れたりするのは嬉しい。

 財布にも嬉しい。


「……はい、では買取は以上になります。他にも何かありますか」


 さて、次は任務達成報告以上に自分にとっては本命の用件だ。

 できれば今の財布の中身でやり方を教えてくれますように。そう思いながら次の用件を口にした。


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