3.止まってはいられない
白い部屋を歩き続けたスズキ君。
腹を強打し、スネを強打し、額まで強打してしまった。
それでも歩みを止めなかったスズキ君の耳に両親の声が聞こえてくる。
光の中を歩き続けたスズキ君の目に映る物は。
知らない天井・・・。
初めて見る天井がそこにはあった。あの白い部屋から出る事に成功した。
そして僕はいつの間にか仰向けになっていた。
すると母さんが覗き込んできた。
「ヒロシ!私がわかる?」
「・・・・・・」
おかしい。しゃべろうと口を開こうとしているのに中々口が開いてくれない。
すると母さんが変な形の容器で液体を口元に垂らしてくれた。
水だ。口がパサついて口が動かないのか、唇が渇いてくっついているのかもしれない。
僕は動きの悪い口を無理矢理動かした。
「・・・母さんだろ?」
母さんは涙を浮かべたと思ったら僕の視界からすっと居なくなり。今度は父さんが覗き込んできた。
「俺はわかるか?」
「・・・?父さんだろ?・・・2人共何言ってるんだよ?」
僕は2人の方に目線を向けると、どこかのベッドの上に横たわっている事がわかった。
母さんは泣きながら「あぁ神様」とか変な事を言っている。
父さんは今にも泣き出しそうな顔でベッドの脇にあるボタンを押している。
身体を動かそうとしてもさっぱり動かない。体が重い。指は何とか動いている気はする。
少しすると誰かが走って来た。
その音のする方に目線を向けると知らない男性と女性が居た。格好からすると医者だろう。
・・・・
・・・
・・
・
母さんに聞いた話では、僕はアパートの前で暴走した乗用車に跳ねられて、腹部を強打し内臓の一部を損傷し、右足を複雑骨折し、額を打って3年間も意識が戻らなかったそうだ。
そして、目を覚ました事も記憶の混濁等も無かった事は奇跡なのだとか。
僕は今リハビリ中で歩行器無しでも数mは歩けるようになった。
医師に身体が動くのは、父さんと母さんが毎日関節を動かしてくれていたからだと教えてもらった。
あの白い部屋で歩みを止めていたら、僕は目を覚まさなかったのかもしれない。
そして歩ませてくれた両親には感謝してもしきれない。
最後まで読んでいただき誠に有難うございます。
本当に短編で良い長さです。人によっては短編でも短いと思う長さだと思います。
駄文まで読んでいただき本当に有難うございます。
また何か思い付いたら投稿させていただきます。有難うございました。