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第15話 四天王、登場!~トラ、ミケ、シマシマ~

 

 敵の拳は俺に当たらなかった。

 俺の顔面にヒットする直前で、横から伸ばされた掌に止められていた。


 え――?


 腕を辿って目にしたのは背の高い男だ。

 男は掌で止めたカンガルーの拳を、軽く内側へ捻った。ように、見え――


 次の瞬間、あのでかいカンガルーの身体は扇風機のように回転し、背後の壁まで吹き飛んだ。


 ちょ、

 待っ――

 柱みたいな岩壁に突っ込んだカンガルーの巨体は壁をぶち抜き、その上に岩が崩れ落ちる。


「えっ、事案――」

「事案?」

「オーストラリアが、声明を……」

「あ?」


 膝が笑い、ガクンと身体が落ちた。

 そのまま地面に倒れる寸前の俺の身体を、カンガルーを弾き飛ばした手が伸び、襟首を掴んで腕一本で引きとどめる。


 何、すごい。

 ちょっと首締まってるけど。


「おっ、悪ィ」


 男はすぐ締まってる首に気付いて、俺を立たせてくれた。

 背中をぽんぽんと手のひらが叩く。


「大丈夫か?」


 え、何。

 いい人だ。

 体格がいかにもスポーツマン的な感じ。サッカー選手とかみたいな贅肉の無い筋肉だ。


「奴はカンガルー王国戦士長、粉砕王ガルバルだ。奴相手によくまあ一人で保ってたな。並の相手ならあの拳一発でも死にかねないってのに倒れないなんざ大したもんだ」


 粉砕王。

 カンガルー。

 粉砕王。

 カンガルー。

 ふ


 はっ。


「しかもお前、チビを守って自分の顔で当たりに行くとか」


 そうだ、ちびっ子!


 俺の右肩に、ちびっ子が短い手足を広げてしがみついている。


 良かった。

 そっと肩から持ち上げ手の中に収めると、ちょっとあくびをした後もうすやすやと寝息を立て始めた。


 ぎゃわいいィー!

 大物ー!

 この子ぜったい将来大物になるよォー!


 じゃない。


「あ、あの。助けてくれて有り難うございました。貴方は――」


 男が答える前に、にゃ王様はぽんと岩の上に飛び乗ると、尻尾をひゅいんとしならせた。


「トラ、ミケ」


 トラ、ミケ――

 四天王の名前だ。


 俺はにゃ王様の見ている方へ、視線を向けた。

 眩しい。

 ちょうど天井の岩の隙間から、太陽が見えている。

 この場所を囲む高い岩の上、天井に近い所に、二人、シルエットが見えた。


 逆光になってるから良く分からないけど、背の高そうな男と、華奢なかんじの――女の子?

 女の子がミケかな。


 にゃ王様が俺の前の男へ、顔を向ける。


「シマシマ。良く来たにゃ」


 四天王達はその場でざっと膝をついた。


 すごい、四天王っぽい。カッコいい。

 俺も早速真似して膝をつく。もう体力なくてよろめいたけど。


 いやぁ、改めて、にゃ王様に膝をつくのほんと喜びしかないな。めっちゃ嬉しい。



 それにしても――


 横で膝をついているガテン系っぽい兄ちゃんを横目で眺める。頭に白いタオルみたいのを巻いてるのがまたガテン系っぽい。


 四天王、シマシマ。

 能力、懐柔とか言ってなかったっけ。

 素で強いぞこの人。


 懐柔って素手で相手をぐにゃぐにゃ揉んで柔らかくしちゃう能力のことだったりするんじゃないか?

 いや、怖いな、それは。


 ていうか、ひとつとても気になっているのだが。


 四天王の登場、カンガルー回でいいのだろうか。


 もう少しカッコいい敵の時にするべきじゃないのか。

 見せ方っていうかさ。


 シマシマは立ち上がって俺に向き直った。

 引き締まった男前だけど気さくそうな顔で、同じく気さくそうな笑みを広げる。


「よう新入り。4番目だろ。お前、名前は?」


 


 


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