第11話 ここは魔王の塔(6階から1階)
魔王の塔も半分近く降りてきた。
次はいよいよ6階だ。
6階は、フロア3分の2使ったアミューズメント施設になっていて、いろんなアトラクションがある、食堂に続いて猫兵士達人気のフロアだ。
いくつか見繕って紹介しよう。
一つめ、『猫パンチングマシン』
速度と重量、どちらかを測ることができる。
俊敏さと持久力、或いは筋力が求められ、オーソドックスながら侮れないゲームだ。
猫兵士たちの猫パンチ速度は目にも止まらない速さで、両前足がめっちゃ回転している。
けど叩き続けるうちに夢中になりすぎて、だんだん後足で立ち上がっていき引っくり返る猫兵士が続出したので、一時期使用禁止になった。
最も高重量を叩き出したのは第三の四天王シマシマらしい。
『猫ワニワニパニック』
次々出てくるワニを叩いて得点を競うゲームだ。
如何に出だしを叩くかが高得点のポイントで、動体視力と反射神経が求められる。
けど叩き続けるうちに夢中になりすぎて、ワニの穴に飛び込む猫兵士が続出したので、一時期使用禁止になった。
最も高得点を叩き出したのは第二の四天王ミケらしい。
『鼠型ラジコンレース』
ラジコンの鼠を操作してコースを走らせ、タイムを競うゲームだ。
ヘアピンコーナーをいかに早く曲がるかが勝負の鍵を握っている。
ラストの直線は毎回、ネズミ型ラジコンカーの最高速を競い、しのぎを削り合うかなり熱い展開になる。
けど走るラジコン鼠に夢中になりすぎて、ラジコン鼠を追いかけてコースへ乱入する猫兵士が続出したので、一時期レース禁止になったらしい。
『自動回転猫じゃらし』
自動でくるくる回る猫じゃらしが無限に遊べると人気の癒し系アトラクションだ。
回転速度が変えられるので高速に挑む猫兵士もいるが、基本は回転する猫じゃらしをまったりのんびり追い掛ける。
けど無限に回転し続ける猫じゃらしに夢中になりすぎて、目を回して船酔い状態になる猫兵士が続出したので、一時期回転しなくなったらしい。
不評、不満の鳴き声が夜中じゅう続いたため翌日復活したということだ。
『障子ラビリンス』
いく層にも重なる障子が作り出す、脱出高難度な迷宮探索アトラクションだ。
途中のチェックポイントにあるスタンプを集めるとスタンプの分だけ猫缶がもらえるので、いつも大行列ができている。
けど障子を全て破って突破する掟破りの猫兵士が続出したので、一時期網戸ラビリンスになったらしい。
……無駄だった。
もうお気づきかもしれないが、これはただのアトラクションじゃない。
こうして日々遊びながら気付かないうちに精鋭猫兵士部隊が出来上がる、ワークライフバランスの優れた取り組みなのだ。
そのほか、このフロアには魔王軍上級猫兵士達の居住エリアもある。
5階 魔王軍猫兵士達の居住エリア。
居住スペースはフリーアクセスだ。
いろんな睡眠グッズが置いてあるが、狭いところとか日当たりのいいところとか高いところが人気で、そういう場所は猫兵士達でいつもぎゅうぎゅうになっている。かわいい。
ごめん寝とかへそ天とかアンモニャイトとかどこを向いてもリラックスした猫の姿がある、とっても最高に幸せになれるエリアだ。
ここに入り浸ろうと思ってたら、「幹部が一般兵の部屋にずっといたらプレッシャーを与える」という理由でクール猫に時間制限された。
残念だ。
4階 ダンジョン最奥部。
侵入者を抹殺する予定。まだ誰も侵入したことがない。
最強の魔物が生活している。第一の四天王トラが2回喰われかけた。
3階 ダンジョン。
侵入者を抹殺する。これまで勇者パーティが1回侵入に成功しかけた。
2階 ダンジョン。
侵入者を抹殺する。これまで勇者パーティが5回侵入している。
1階 ダンジョン。
侵入者を抹殺する。これまで勇者パーティが50回侵入している。
魔王の塔内部はざっとこんな感じだ。
また機会があったら案内したい。
それにしても本当に、こんなにたくさんの猫と暮らせるこの世界は天国のようだと思う。
植木鉢に感謝したい。