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第10話 ここは魔王の塔(10階から7階)

 


 ここは魔王の塔――



 通称、「キャットタワー」



 ――

 通称か?



 あ、おはようございます。


 俺がここで暮らし始めて、今日で4日目になった。

 なんだか未だに良くわからないけど、だいぶこの環境にも慣れてきた。


 職住近接なのもいいな。出勤がめっちゃ楽。

 前は職場の近くに住むなんてほんと絶対やだったけど、ここはいい。


 だってそこら中に猫がいるし。

 もう見てないフリしつつ横目でガン見しなくても堂々と眺められるし、何よりみんな不審そうな顔をして俺を見たりしない。


 天国かな?

 うん、天国だ。


 まあみんな、魔王軍の兵士なんだけどね。

 この子らが「出陣にゃ!」とかいってわらわら集まってる様を想像すると、ほんとかわいい。


 それに何と言っても、にゃ王様のおそばだし。

 この言葉、にゃ王様のおそばにいると言う事実。


 猫アレルギーだった俺が――

 信じられない。


 俺は本当にすこぶる幸せだった。

 朝も早く目が覚めてしまったし、にゃ王様や猫兵士たちに会いたくて、早く出社? 出仕? したくて仕方ないくらいだ。



 ちなみに今日は四天王としての任務は無いようなので、にゃ王様の城でもあるこの魔王の塔(キャットタワー)を紹介したいと思う。




 まず、この塔は10階建だ。真っ直ぐに空へと伸びる、白く輝く外観は遠くからでも良く目立つ。

 高い岸壁の際に建てられていて、周りには建物がないこともあり、あたかもシンボルタワー、ランドマークみたいな感じだった。


 当然、天辺の10階フロアにはにゃ王様が暮らしている。


 フロア全てがにゃ王様のお部屋で、ダイニングルーム、リビングルーム、ベッドルーム、バスルーム、プレイルーム、お昼寝ルーム、日向ぼっこルーム、ひんやりルーム、かくれんぼルーム、爪研ぎルーム、毛づくろいルーム、バトルルーム、おやつルーム、宝物ルームなどなど全部で20部屋ある。


 各部屋が細い通路や階段で繋がり複雑に入り組んでいるのが特徴だ。

 敵の侵入防止の為か?


 否。

 猫だからだ。


 にゃ王様は気付けば狭いところにいるから探すのが大変だ。

 お世話係のたおやかS系美少女アーレちゃんがしょっちゅうにゃ王様を探して歩いている。


 俺はにゃ王様にもアーレちゃんにも近付きたいので手伝おうかと毎回提案するんだが、毎回ホコリを見るような目で見られた後、無言で通り過ぎられる。


 ……いい。


 ちなみに、各部屋日当たりがとてもいい。




 続いて9階。

 ここのメインは謁見の間だ。俺が転生後初めて目にしたのがここだった。


 にゃ王様の玉座(ミニキャットタワー)がある、とても広くて豪華な広間で、魔王軍幹部が時折ここに勢揃いするみたいだ。

 幹部達が謁見の間に集まってるのを見たことがないから、早く勢揃いしないかな。


 他にもクール猫たち魔王軍幹部の、居住と執務スペースになっている。

 歩いていると猫幹部達にいっぱいすれ違う、幸せなフロアだ。


 俺が四天王の一人だから、みんな挨拶してくれる。

 にゃあとかみゃあとか脚に寄ってきてくれたりとか、尻尾でぽんと叩いてくれたりとか、クール猫以外は気が向いたら撫でさせてくれたりもする。

 幸せなフロアだ。




 8階。

 ここに俺達四天王の部屋がある。四つのスペースに区切られている。

 その他には倉庫とか色々ある。

 あまり猫達に会わないから大して興味はない。




 次は7階に降りよう。

 7階には食堂がある。

 魔王軍なら誰でも無料で食事ができる、広い食堂だ。


 カウンターに置かれた銀色の呼び出しベルを押すと、チリンチリン、という音と共に猫コックさんたちが現われて注文を聞いてくれる。

 味はとても良いしバランスもいいしメニューも豊富。


 一番人気なのはチュールだがすぐに売り切れてしまい、数少ないチュールを巡って高校の売店で焼きそばパンを奪い合うような壮絶なバトルが起きた過去から、今はチュールは整理券制になっている。


 ちなみに現実の高校で、焼きそばパンの奪い合いが発生したとか聞いたことはないけどね。


 食事の時間は1日3回と決まっているのだが、猫兵士たちはいっつもカウンターのベルをチリンチリン鳴らして催促している。


 カウンターの丸椅子に両脚をふんばって乗り出し一心不乱にベルを鳴らしている姿がめっちゃかわいい。

 猫のふんばる姿の可愛さは格別だ。尻尾がぴんと伸びてるのもかわいい。


 あと、時々突然飛び上がってアクロバットを決める猫兵士がいるが、別段訓練をしているわけではない。

 よく見ると足元に緑色の細長い物体が落ちている。きゅうりだ。


 一回、にゃ王様が飛び上がるのを俺は目撃した。



 それからお風呂場も7階にある。

 ジャグジーや打たせ湯付き大浴場があるんだけど、ここでも時折、ものすごい悲鳴と共にずぶ濡れになった猫兵士が飛び出してくる姿に出会える。


 別段訓練をしているわけではない。

 浴槽を覗き込んでて足を滑らせたんだろうな。

 でもお風呂が好きな猫兵士も結構いて、毎日盛況だ。

 一番人気は砂風呂だ。


 にゃ王様は水が苦手だから、このお風呂は部下達のための福利厚生の一環で用意されている。


 けど昨日、お世話係の儚げS系美少女アーレちゃんに洗われて、にゃ王様はしょんぼりしていた。

 俺は羨ましい。激しく羨ましい。





 次、6階以下を案内しよう。




ねこナビ編集部ぶるる編集長へ、追悼の意を表します

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