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第1話 ペットショップでヘッドショット

 





 世界は滅びるだろう。








 猫を見ていたのだ、俺は。


 外回りの帰りのペットショップの前で、この後会社に戻りたくねぇなとか、帰って課長の隙あらば捻じ込んでくる他下げ自上げ話聞きたくねぇなとか、帰ったらまた残業で終電なんだろうなとか、こんなに毎日終電、土日まで働いて人生何が楽しいんだろうとか、とにかくそんなことを考えながら、(はた)から見たらかなりヤバイ感じで大通り沿いのマンションの1階にあるペットショップのガラス窓にへばりついていた。


 二人組のJKが気味悪そうにチラチラ俺を見てるけど知ったこっちゃない。

 30近い俺はどうせ守備範囲外だし。

 あ、彼女等のね。間違っても十も上のおっさんのリーマンに選択権があるとか思っちゃいけない。

 そんなのは夢でもあり得ない。そこら辺は弁えてる。大体俺の外見で女の子にモテるとかビタイチ思ってないし。


 でも、ガラス窓の向こうには夢の世界があった。

 まだ生後一、二か月ほどの子猫が微睡んでいたり毛繕いをしていたり、猫用おもちゃの小さなボールを追いかけて飛び跳ねていたり。

 あれは狩りの練習なのかな。小さいのに本能かな。

 毛がポワポワでマジ可愛い。


 俺はひどい猫アレルギーだから猫飼えないけど、ほんとマジ可愛い。

 こんな可愛い猫たちとガラス越しでしか触れ合えないなんて、シェイクスピアばりの悲劇が一本書けてしまうに違いない。

 生まれ変わったら俺、絶対猫アレルギーを無くしてもらうんだ。


 誰にって、良くあるじゃないか、不慮の事故で死んだら神様に予定外で死んじゃったから生まれ変わらせてあげるねって軽いノリで言われて異世界に生まれ変わるやつ。

 めっちゃチートな能力もらってぶいぶい言わせてハーレム状態で人生謳歌するアレよ。


 古い?

 時代は今異世界転生じゃない?

 いや、いいんだ。俺は今異世界転生したい。

 そんでもって、チート能力はいらないから猫アレルギー無くしてもらう。


 そんでもって、今目の前で腹を出して眠ってる茶トラのちびっ子を飼う。

 へそ天って言うらしいよ、あの寝相。


 そうだ、猫ハーレムにしてもらおう。

 ここにいる子猫たち全部俺が飼う。


「へへ……」


 そんな想像をしながら愛くるしい子猫達をガン見していたら、鬱屈してた気分が軽くなって何となく幸せになってきたから、そろそろ会社に帰ろうと体を起こした。


 そしたら上から、植木鉢が落ちてきて俺の頭に直撃した。




 おい、横にいたJK吹き出したぞ。

 漫画みたいに、あんまり見事に植木鉢が割れたからか。

 くそ、そりゃ笑う。



 ダンプとか飛び込んで来なくて良かったと――猫達に被害がなくて良かったと、そんなことをぼんやりと考えながら、俺の意識はブラックアウトした。






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