家族物語
天啓の儀を終えステータスの確認をしようと、早々に帰路に着くために馬車へと歩く道中、噂話のような声が各所から聞こえる。
「今年は天啓持ちが出たってよ」
行商人らしき親とローブを着た親、そして子供二人でなにやら話しているので聞き耳をたててみた。
「ああ、二人も出たんだろ?可哀想に」
「しかも片方は聖女持ちらしいよ」
「うわぁ学校行きたくないないけど魔法特化なんだよな俺」
「ご愁傷さま俺は特性、商売繁盛でたからそっち進むから巻き込むなよ」
うーんもしかして天啓ってメシマズなん?てゆうか俺だけ知らない感じ?皆多くの情報を手に入れてるのwhy?こりゃあステータスの前に親父に聞かないとなぁ。
「なぁ俺のスキルってさ……」
「馬車の中で話す黙っていろ」
・・ゾクッとした。
いつもの親父とは思えない冷めた声色で、こちらに顔を向けることも無く、おおよそ子供に接する態度ではなかったからだ。
行きとは違い気難しい空間での帰り道は風景もどこか仄暗く、煌びやかな街並みもピエロの1人劇場に感じる。
黙々と歩いていると人の顔がよく見える。
泣いて喜んでいる者、ホッとしている者、諦めている者友達同士で近況を報告している者まで様々な事情があるのだろうが俺には関係ないな。
草を食べ元気が回復した様子の我が家の馬を、鎖から解き放ち馬車に乗り込もうとした所
「こちら、落としませんでしたか?」
「ああ、済まないなありがとう」
そう言って手紙を受け取る親父はいつもの親父よろしく優しい顔だった。
手紙を拾ったその人は綺麗に深々と礼をし1度こちらを見た後、クルっと方向を変えて他の憲兵と合流し警備に戻っていた。
きっと俺の顔がイケメンだったんだろう。
「さて、遊汰よ質問か?俺から話すか?」
「いや、大丈夫。親父の答えはでてるんだろ?後は帰って皆で話すことだと思う」
「クックックハハハ流石俺の子だ。聡いな。だが時間はあるんだ、答え合わせと情報の補填といこうじゃないか?」
「不確定要素はあるけど、まず親父って実力と地位を隠してるの?それとも隠密部隊かって所。それは、先程のやり取りで誰にでもわかる。」
「ああ、それはそうだな。それで?」
(うん。否定も肯定もなしか、具体性にかけたやり方は認めないって所か。)
「そんな親父と母さんの血を受け継いでるマサ兄や未知姉ちゃんは魔法特化の特性で魔力もあるし俺だけ戦闘系がなにもなかったのは矛盾を感じる。」
「それは、成長段階や本人の資質もあるだろう?」
「親父。面と向かって息子に才能ないとか辛辣だよね。」
「ウッすまん。」
茶化しながら話を進めていく。
主導権を取らせたままの方が漏らしてくれる情報も多く有利になるからだ。
実際優位にいるのは親父で、こちらはあくまで推測でしかない。
この駆け引きが前世のスロットを思い出させて、なるほど面白い。
「矛盾とゆーか説明がつかない部分かな。俺達、人族は遺伝を色濃く受ける、だから母の魔法特性が顕現した、俺の特性は思考特化?そんな特性かあることすら親父から聞いてない。秘匿したか、稀に顕現したかのどちらかだ」
「待て、遺伝を色濃く受けるなど誰から聞いた?そして俺が特性のことを教えていないと決めつけているし、それを根拠にしたら推測をこえて暴論に聴こえる」
「1つ今日来た子供達の特性はほとんどが親の職業に通じるものだった。ローブを着た子供は魔法や座学の特性。商人は計算や人を見る心眼など。 2つ天啓の儀を終えた子達は揃って感情的になっていた落胆し安堵し皆で情報を共有していた。なぜ?それほどまでに天啓の儀での特性が人生を左右すると教えられてきたからだ。しかし、俺には知らないことが多すぎた。例えば有名な聖女って天啓、知らない方がおかしいぐらいの知名度だったよ親父」
「・・・・・・」
(無言は肯定だよ親父)
「教えないって事はきっと俺には知られたくないもしくは、俺か、家族にとって不利益なのだろうと思う。だって首都の憲兵相手にあの態度、地位ある親父が知らないなんて事はまず無いだろう?」
「・・・・・・」
「あの憲兵、俺を見て一瞬だけど表情を変えたよ?こちらのステータスでも見るスキルがあるのかな?でもそんな人がただの憲兵?ちょっと整合性とれないよね、親父の部下なんだろ?そしてあの手紙に俺のステータスの詳細が記されている特異がある、隠密部隊にはもってこいじゃないかな」
「……ふぅ。さすがに俺の息子だ誇らしい。が勘違いをするな、天啓とゆうのはマイナスではないんだ、しかし間違った判断では危険因子となる。だから正確な情報を知る義務がお父さんにはあるんだ。それとさっき少し強く当たったのは許して欲しい。あの場では口を軽くするのは危ないと判断たんだ。」
「うん、大丈夫。謝る事はないよ。だって親父が世界で1番大切なのは家族でしょ?」
「ああ、そうだ(世界で1番か…静香。遊汰はこんなにも立派に育ってるぞ。俺達の自慢の子供だ)」
「それで親父のこれからの展望は?俺をトーキョーの学校に行かせること?」
「安心しろ遊汰、1番の懸念事項は取れたし元から遊汰の意志を尊重するつもりだ。好きな道を選び進みなさい(正直6歳の考え方じゃない、これから確実に神々の悪戯の影響はあるだろう。でも息子は息子だ成長は親の喜びだ、それを脅かすものは俺が切り捨てる。それに遊汰は手強いぞ)」
『 たっだいまー』
帰宅第一声が親父と声が重なる(ふざけんなオイなんで1日男とシリアス決めてハミングまでしなアカンのや!あー尻痛いボリボリ)
あれ?マザーは?シスターは?マサ兄はどーでもいっか。
「おかえりなさい、遊汰どうだった?」
恐る恐るマイマザーは聞いてくる。
なんだかとても顔が青白く体調が悪そうだウィットにとんだジョークをかました方がええんやろか?
「これから話す皆を集めてくれ」
親父はキメ顔でキリッと命令をする。
おいコラ親父、マミーの顔見てみろ休ませてやれよ話し合いは明日でいいだろ!もう。
「親父、母さん調子悪そうだから明日にしようよ、俺も疲れたし」
「ごめんなさい遊汰が疲れてるとは思うけど、母さん早くお話を聞きたいわ。心配してくれてありがとうね。」
「母さんが大丈夫なら俺は平気だけど、無理しないでよ。」
俺はハイハイ時代に母のおっぱいに恋し、今も尚若いマザーは推しキャラを称えるが如くの勢いで崇拝しているのだ。
だからこそ無理はさせたくないが強く出られたらイエスとしか言えない。
「遊汰ぁ!どうだったー?お姉ちゃんと一緒の学校行けるー?」
「未知は落ちつきなよ?遊汰のほうが余程大人に見えるよ」
うん、未知姉ちゃんは7歳だし普通だよマサ兄ィ。
マサ兄が9歳とは思えない心を持ってるんだよ、あと顔滅べばいい。
「2人とも今から話すから座りなさい。」
親父が荘厳たる態度でキリッとイキリトしてる。
俺のアスナはどこだよキリト。。
「思考特化ぁ?なにそれ?てゆーか遊汰だけたくさん顕現しててずるーい。でもうれしいテヘヘ」
あー姉ちゃんかわい。
もう姉ちゃんさえ居れば俺幸せだよ。
彼氏なんて連れてきた日には絶対殺すマンになるよ俺。
「思考特化とは、諜報や貴族院向きの特性だ。事象の最適解を見つけ対応対処する能力に長けている。それよりも天啓が問題でな…」
「貴方・・・いいじゃないの。私達が信じないでどうするの?」
「ああ、そうだな。天啓とゆーのはこの世の歴史に関わる人物に顕現する称号のようなものだ。詳しい内容は解明されていないがある程度は名前で判断され国の監視対象ともなる。だが隔離されたりイタズラに人権を侵害する事は禁止されているから安心してくれ」
「なるほどね、遊汰は特別って事だね、やったね僕の弟は凄い」
「政宗の弟じゃなくて未知の弟だから凄いの!ねぇー遊汰?」
「フフ母さんの息子だから特別に凄いのよ。勿論、政宗も未知も特別に素敵だわ」
あーいいな。家族ってこんなに暖かいんだな。
なんか目からあ…せ…が・・・・・・
「…………ヴッ」
俺もびっくり、先に親父が泣いていた。
威厳あるのか無いのかわからん。
「それでさ、マサ兄は来年から学校だよね?どこの学校通うの?」
ここ、各領主の治める場所に学校は1つ。
チーバも1つ例外はトーキョーとオーサカだけ北と南で2つある。
木更津家からはチーバでさえ距離があるので親元を離れて通う事になる。
学校は10歳からは3年間過ごし、その後院生となり3年過ごすのは文官や貴族などエリートコースだ。
大体は13歳からは家業を継ぐため、帰省したり騎士団の門を叩く者や、冒険者として夢を持つ者ばかりだ。
入る学校にも強みがありチーバは騎士団育成が強く、北トーキョーは様々な分野でのマルチプレイヤーがメインで、南トーキョーは文官輩出が多く、カナガワは研究や産業などに力を入れていると聞く。
「もちろん南トーキョーで勉強に勤しむ予定だよ。あそこを図書館がでかくてね、そこで司書手伝いをしながら3年かけて知識を蓄えるつもり」
「ありがとう、参考になるよ(さすがマサ兄ィ略してさすマサ9歳でコレは怖いよ)」
「未知はねぇチーバに残るよ」
「「「え?」」」
俺以外が綺麗にハモっている。
まぁ俺は昔からよく聞かされていたから知っている。
「騎士団に入って家族を守るの!」
「あらあら立派ねぇ。でもお母さんより強くならいないとダメね、それと女の子なんだからキレイにもならないとね。」
うちのマザーは未知姉ちゃんに対して当たりが強いように思えるが、それだけ愛しているのだとすぐにわかる。
だって心底嬉しそうだし、なんだかんだで否定しないのだ。
「遊汰。お前はまだ時間はある今回の天啓の儀で余計に悩むかもしれないが、それは選択肢が増えたのだ。より豊かな人生の為に。相談なら聞く。好きに選ぶんだ。いいよな母さん?」
「ええ!もちろんよ母さんはいつだってあなた達の事を応援してるわ。」
母さんの顔が綻び元気が戻ったみたいで良かったわホント。
ひとまず話も終わり、夕食をいただきあっとゆー間に寝る時間だ、はぁー眠いおやすみー。
「よかったの?」
「ああ、あいつは遊汰は知ってて気付かないフリをいくつもしてるよ。俺としては是非ともうちの部隊に欲しいぐらいだ。天啓の事もあるからトーキョーに連れていかないと陛下から何を言われるかハハ。だが、やはり俺は家族が世界で1番好きなんだ。見たろ政宗も未知も立派に育ってる。親の心配なんてドコ吹く風だ」
「そうね、本当に今日は嬉しいことばかりよ。改めて貴方を好きで良かったわ、惚れ直しましたよ?」
「バッバーロー///からかうなバーロー」
いずれくる問題を口には出さずに先送りにしたが2人は幸せそうに夜を共にした。
遊汰「絶対これチートきたよデュフフ」