05_執行神、珍しく犯人を追い詰める!
「死刑!次!」
リリィ様は学業を終え、冥府に帰宅すると即座に審判服に袖を通し『死刑執行』を始められた。
「リリィ様、次の案件ですが……」
勿体ぶる神官。
神官達は資料に目を一通り通してから必ずリリィ様に執行対象者を通す。
――逆に言えば、ある程度『神官達の采配』にて刑は執行されているのだ!
当然『死刑執行』である。
基本的にリリィ様に通す案件は『走馬灯より帰還』が許されそうな者だけだからだ。
付け加えるなら、『神官達が死刑執行した者達』の裁きが例え間違っていようともリリィ様は神官達を咎めない。
アルカトラズに来る案件は『死刑執行』が当たり前なのだ。
むしろ『転生や一命を取り留める』方が珍しい。
そもそも、病気・寿命等の場合は『三途の川<軌の川>』が担当している。
ここ、アルカトラズ案件は基本、『殺人・自殺・不注意』の3パターンが主だ。
リリィ様は『自殺』は無条件で『差し戻し』としている。
……何故か?
自殺に成功した者は『三途の川<阿里陀川>』送りになる。
自殺に失敗した者は、そもそも『死のうとしたが躊躇した』パターンである事が多くなっている。まだ未練があるとみなし、生還の道へとしていた。
よって、大半は『ドジっ子』か『殺人未遂』かの2つに分類される事が多い。
神官達が躊躇する時は……。
「ふむ……殺人案件か」
リリィ様はスッと立ち上がり……。
「我、リリィ=アマリリスの名においてエンカウントする!」
リリィ様は『裁きの鉈』を取り出した!
鉈と言ってもリリィ様の身長を超える超大型の鉈だ!
「彼の者……」
鉈を振り上げ……!
「……」
「……すまん、名前なんだ?」
リリィ様は対象者の情報を確認せずエンカウントしようとした!
「あ、はい……リリィ様。対象者の状況ですが……」
◇ ◇ ◇
対象案件……〇△×案件
対象者:中学生13歳女子<処女>
あ、そうそう、『非処女』だと死刑です。
……案件に戻ります……。
……コホン!
対象案件……〇△×案件
対象者:中学生13歳女子<処女>
氏名:高田 ゆみあ
場所:自宅付近道公園
時間:PM17時
状況:腹部脇腹より多量の出血及び多数の打撲痕
状況を鑑みるに『通り魔殺人』の案件と推測
備考:目撃者あり。
同場所近辺にて数件の犯行があった。
他の者は即死の為、『三途の川<阿里陀川>』送りとなっています。
◇ ◇ ◇
「ふむ、ということは、『警察の職務怠慢』……とまでは言いたくはないが、通り魔殺人が数件行われてるっと……」
「ちなみに……ゆみあ……身長は幾つだ?」
なぜそこが気になる!?
「対象者、ゆみあの身長ですが、『136cm』となっております。どちらかと申し上げれば……」
リリィ様はスッと左手を振り払い!
「構わん!すべて申す必要なし!事件のあらましには入れ!」
「……」
ジト目を決める神官。
……。
「……続けます……」
神官は何か思うところがあったか?
「おい!今何か言ったか!!」
――ノーッサーーー!!!!マム!!
「……よろしい、続けろ!」
「はい……今回の事例ですが……」
対象者『ゆみあ』は、下校途中の公園にて彼……!
「死刑!」
「お、お待ちください!リリィ様!まだ彼としか言っておりません!」
「……続けろ……」
「彼方 ゆうき……」
「死刑!」
「だ、か、ら!!もーう!同級生の『女子』の『ゆうき』ちゃんです!!」
リリィ様は鉈をブンブン振り回し!!
「今すぐ続けろ!!先に女子と言え!」
……神官達はジト目を決める……!
モブ神官は小声で……。
「……彼氏とか男とかだったらどうせ死刑なんだから案件にするかよ……」
……死刑!
「おいコラ!勝手に死刑にするでないわ!!」
……おっと、死刑にしないのですね……。
「……続けます……あと!外野!要らん事しゃべるな!話が進まんわ!」
同級生の『彼方 ゆうき』を待っていたところ。
「ちょっとまて、彼方 ゆうきとやらは……」
「……当然、未経験です」
「……」
「よろしい、続けろ」
小太りの、通称:早撃ちの『デブ山 発射太郎』にマークされ……。
……!
ツッコミなしですか……。
デブ山 発射太郎の性の捌け口として襲われそうになった……のではなく……。
デブ山 発射太郎は女子中学生を『性の対象』としている『だけ』の為、彼はノータッチ発射という曲技を持つ。ベンチに座る対象者『高田 ゆみあ』視姦プレイしていただけだった。デブ山 発射太郎の曲技……。
「おい、私がツッコミ入れるまで『デブ山 発射豚野郎』の事を繰り返すつもりじゃないよね?」
「デブ川 包茎租チン太郎は犯人ではない事は明白……ただの変態童貞だろ?」
「……いえ、それが童貞ではありません」
「小学生時代はイケメン小学生男子だった為、大人の女性に筆おろしされた過去がございます。それ以来、年上の女性に対して嫌悪感を抱くようになり、性の捌け口として『女子中学生』を『視姦』するようになりました」
「……ふむ……死刑にしたいところではあるが……」
「いかんせん、私は死神ではないからな」
そう、リリィ=アマリリス様は、『死神』ではない。
走馬灯に堕ちた者の運命を決定させることができる。
……ここで疑問になるのが『神官』と『心の声』を無条件に死刑にできる件だ……。
ここ、『アルカトラズ』自体が人々の『生死の間』走馬灯から出来ている。
リリィ様の下で使える者たち全員『リリィ様によって』生存を許可された選ばれた者達だ!
よって、リリィ様が気に入らない神官は死刑となる!
――発言を一歩間違えれば即死刑にると一同心得て職務にあたれ!
振り回していた『鉈』を一旦納め、執行神愛用の椅子に腰かける。
革張りのいかにもの御方が座っている様な椅子ではなく、『ヤコフセンの卵チェアだ!』
リリィ様のお気に入りの椅子だ!
クルっと椅子を回転させて考え込むリリィ様。
「……まあ、社会的にはアウトではあるが、犯罪者ではない。視姦程度でいちいち豚を殺処分していたら日本の人口の7割は消失しかねん」
「だいたいだ、イケメンに見られたら『潮』を吹き、萌え豚に凝視されたら『視姦』扱い」
「住みにくいセカイになったなあ……まあ、私は金髪ロングの美少女だから、麗しき幼女を視姦しても咎められることはない!」
「私、個人の見解だが、そもそも『殺す前に犯す』だろ」
「視姦プレイでパンツを汚しているようなゲス豚野郎が『人殺し』までしない。そもそも『レイプ』の方があり得る……が、それほど愚か者でもない」
「んで、第一容疑者扱いになってるわけだな……」
その、デブ山 発射太郎が今回の事件にあたる『第一目撃者』にあたる。
刺された腹からの出血を抑える為に『高田 ゆみあ』の腹部を必死で押さえている所を『彼方 ゆうき』に目撃された。
そしてテンプレートの如く『デブ山 発射太郎』は現行犯逮捕され、『高田 ゆみあ』は現在救急搬送後ICUにて『走馬灯』の最中。
しかし、『デブ山 発射太郎』は『高田 ゆみあ』を殺害しようとした『通り魔殺人鬼』を当然目撃しているだろう。
『高田 ゆみあ』をずっと『視姦』して発射5秒前状態だった。当然、一部始終を見ていて不思議ではない。
だが、『デブ山 発射太郎』は犯人について『何も話さなかった』点だ。
デブ山……ええい!長いわ!!以後『太郎』とする。
『太郎』は『ゆみあ』が刺される現行犯を目撃して彼女の腹部を抑える事で一命を取り留めた。
きっかけは……性癖はどうであれ、『太郎はゆみあを救った』事になる。
「ふむ、犯人の目星を付ける事……が、それは、さして重要事項ではない」
「私にとって、『ゆみあ』をどうするか?だけだ」
神官達は『いつもドライなリリィ様』に若干ではあるが不信感はある。
神官の中でも若手の一人でもある『由良』が口火を切る。
「リリィ様、この案件ちょっと掘り下げてみませんか?」
リリィ様の眼光が鋭く、神官達が氷つきそうな位鋭く!!
「さすが……腐女子の由良……『掘る』はイヤらしい……」
リリィ様のフリを無視して説明を続ける由良。
「……確かに、リリィ様の『能力』では、仮に『犯人が判った』としても、犯人を『直接』裁く事はできません」
リリィ様が深入りしない理由……その一つに、『犯人を裁けない』からだ。
リリィ様は『走馬灯に迷い込んだ者中心とした時』だけを裁く事ができる。
裏を返せば、『走馬灯に迷い込んだ案件以外』は何も手出しができない。
……よって、仮に犯人が判ったとして『犯人を死刑』にできない。
『ゆみあ』を中心として巻き込む形として犯人を処罰する事は可能ではある。
「ですが、『大山 早太郎』と『高田 ゆみあ』は、きっと犯人を目撃しています」
「そこでですが、この2名……具体的には『高田 ゆみあ』に今後の経緯を負わせてはいかがでしょうか?」
リリィ様は組んでいる足を組み替え……チラッと『クマさんパンツ』を神官達に見せつけて……!
「死刑!!『デブ山 発射太郎』って名付け親がいるわけないだろ!!」
……コホン……改めてましてナレーター3号が……引き継ぎます。
……。
リリィ様は細く白い美しい御足を組み替え……。
……。
「……続けろ……」
由良の進言に対してリリィ様は持論を仰る。
「リリィ様は、確かに『犯人を直接裁く事』は出来ません。しかし、『走馬灯』より戻った『高田 ゆみあ』の証言と『大山 早太郎』の2人の証言が取れれば、『犯人を逮捕』ならびに『死刑』へとできるのではないでしょうか?」
「また、リリィ様の能力『導き』を活用すれば、『犯人に厳罰を処する』事も可能ではないかと?」
そう、現時点では『犯人が誰か?』とは判明していない。よって、『ゆみあ』を中心にしたとしても『執行対象者』が不明だからだ。よって、『ゆみあ』が走馬灯より戻り、『証言』を取らない限り『犯人が確定しない』事になる。
由良の提案にリリィ様は『解』を下さる。
「……ふむ……」
「確かに、それは面白い」
悪びれた笑みをリリィ様は神官達に見せつける!
……あ、これヤバいパターンだ!
神官達は『リリィ様の悪巧み』に恐怖する!!
こ・れ・・は『高田 ゆみあ』は死んだ方が幾分マシなパターンの可能性がある!
「そうか、今回は由良の提案を受け入れることにしよう」
リリィ様はスッと立ち上がり『裁きの鉈』を振り上げて執行する!!
「リリィ=アマリリスの名において『高田 ゆみあ』を生還とする!」
◇ ◇ ◇
その後……。
犯人は『高田 ゆみあ』の証言と『大山 早太郎』の2人の証言によって『彼方 ゆうき』が逮捕されることにより事件は解決した。
『彼方 ゆうき』が巧妙に同学校の生徒を誘い出しては『猟奇殺人』を繰り返していた。
その餌食になった『高田 ゆみあ』ではあったが、『大山 早太郎』に視姦された事が、結果的に命を繋ぐことになった。
リリィ様の計らいで『高田 ゆみあ13歳』と命を助けた貰った『大山 早太郎39歳』と結ばれ、幸せな人生を送ることになった。
「……リリィ様……酷いテンプレート堕ちですね……39歳のロリコン野郎に13歳の少女が肉便器堕ち!?」
由良は当然、ブチ切れた!!……。
「そうか?13歳なんて生理来てるBBAなんだから別にいいじゃん!」
「よくあるパターンじゃん!助けてもらった男と結ばれる『模範解答!』」
全くブレないリリィ様であった。
『彼方 ゆうき』は未成年者であった為、死刑にはならなかった。
……『彼方 ゆうき』……彼女は収監中に『自殺未遂』した。
リリィ様は『自殺』は無条件で『差し戻し』としていた……?。
リリィ様の力をもってすれば『ゆみあ』を中心とした者達も裁けるが……何故ここまで回りくどい方法を取ったのか?
そして……。
『彼方 ゆうき』は自殺未遂すると何故……リリィ様は考えたのか?
「『彼方 ゆうき』……走馬灯アルカトラズの主!、死刑執行神!リリィ=アマリリスによって命じる!!」
――リリィ様は今日も『刑を執行』する!!
『彼方 ゆうき』に重い運命の枷を付けて……。