0.別れの言葉
新作です。騙されたと思って最後まで読んでみてください。
「君がどんな姿になっても、俺はずっと君のそばにいるよ……」
その言葉を最後に言いたかった。
その気持ちを最後に伝えたかった。
目の前で笑いながら涙を流している少女を俺はぎゅ、と抱きしめた。
「……あたたかい……」
俺は青白く薄い紅色の彼女の唇に、そっと自分の唇を重ねた。
一頻り彼女を感じていると、彼女から唇を離した。
「私が魔人になっても、あなたは一緒に来てくれる?」
「……ああ、一緒に逝こう……」
身体から溢れるほどに黒印が彼女の肌を塗りつぶしていく。
ついにその時が来たのか彼女は
「……さようなら」
そう言って目を瞑った。
直後、彼女はまるで叫び声のようで唸り声のような声をあげた。
「ゴガァァァァ!!!!!!!!!!」
最早人間の形をとどめていない。目にも留まらぬ速さで一気に距離をつめ、俺に噛みついてきた。
噛まれた場所は……
右肩。
魔人になる前に彼女は言っていた。
"魔人とはゾンビのような存在で、人間のどこか部位に噛みつけば、増殖する"
彼女曰く、魔人の説明は不思議と頭の中に浮かんでくるらしい。
彼女の話が本当なら、俺はいままさに魔人になろうとしている。だが、俺はあらかじめ彼女がくれた"魔人にならない薬"を服用しているため、魔人にはならないはずだが……。
[……あなたは一緒に来てくれる?]
今、逝くよ……。
俺は魔人の弱点だという右腰にナイフを突き刺した。
「……待ってろ、麻美……」
そう一言だけ言って、俺は目をつぶった。
不定期連載となります。
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小説家になろう様にて『天使と悪魔と人間と』(著:同名)連載中です!!!
気が向いたら是非こちらも読んでみてください。本作品と違って、のんびり(?)アクションコメディですので。
次回投稿予定日は未定です。