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貧しき人  作者: 寒村の住人
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第二話

2月15日

 ミーザさん、ひょっとすると、逆に私の方があなたからの返信を受け取れていないのかもしれません。なぜかって、私とミーザは中学の同級生のしっかり接点のある間柄じゃないですか。ということはやっぱりあなたが私に返信しており、それがなにかシステム上のトラブルで私に届いていないという方がしっかり筋が通るじゃありませんか。

 そうだとしたにしろ、あなたからのメッセージが私のもとに届かないのはとても残念です。これまでのやり取りがあなたにとって全くかみ合わないものであったということになりますからね。私としましても、こちらからのメッセージに対する反応であったり、あなたの近況や、あるいは私には思いもよらぬ内容のメッセージが届いたりして私とあなたとの心と心のやり取りができていないのだろうと思うと気持ちが焦れるばっかりなんですよ!

 ということで、システム上のトラブルによってあなたの返信が私に届かないためにこれまでのやり取りが上手くできなかったのだと信じてあなたとのメッセージのやり取りを続行します。

 あなたからの返信が私のもとに届かないのが残念でなりません。ですが、なのでこうしましょう、私が察する限りのあなたが知りたいと思うことや日頃の出来事、SNSの表には書き込めないようなあなたに知ってもらいたいことなどをあなたに発信し続けることにします!


―返信なし―


2月17日

 親愛なるミーザへ


 2日前のメッセージであなたの私への返信が届いていないと知った時、あなたが幾分かショックだったであろうことはお察しします!

 あなたへのメッセージの送信が2日ぶりであるのも、毎日やりとりが続いては自分からの返信が届かないミーザには酷であろうということからの私からの心遣いであります!しかし、私からの自発的な配慮とはいいながらメッセージの送信を我慢した昨日1日と言ったらなんとウズウズしたことか!ミーザとのやりとりの無い1日はもはや私にはまるで空腹に耐え続けるかのような苦痛であります!ミーザとのやりとりの充実を思えば寝ることも退屈であり何を食べようとも私には無関心になる程であります!というのはもちろん朝起きてさて今日はミーザにどんなメッセージを送ろうか、そういったことで頭がいっぱいになるからです!

 ですが、ですがどうかメッセージの無い日を私のそうしたじれったさを慮って気を重くなさらずに、私があなたに与えるそこは節制という戒めと思って心の均衡を保っていて欲しいものであります!

 これでも、あなたへのメッセージの送信に夢中になっているなりにあなたへの配慮であったり話題を選ぶなどの配慮には神経を使っていますからね?これを私からあなたミーザへの優しさとして受け取ってもらえるのならなによりの嬉しさであります!


 あなたの今も変わらぬ美しさを確信し愛し続けるアントノフより


―返信なし―


2月18日

 微かな息吹が私を安心させてくれるミーザへ


 私は返信を受け取れないのだと信じる反面無事に生活をしているのかという一抹の不安をあなたに対して抱くことが、実はあったのであります。いつもミーザと話すときはこのメッセージ編集・送信画面や送信履歴の画面ばかりを見ているので、返信が受け取れないということから徐々に芽生えた不安であります。ミーザが今も変わらず愛嬌に満ちた美しさと可愛さをを備えている確信が、皮肉にも変な男から絡まれていやしないかであったり、危ない男とかかわることになってはいやしないかという不安をも引き起こしているのであります。中学時代ミーザが天然キャラであったことからも、なにかしらの悪徳に騙されていやしないかとも思っているのです。

 ああ、ミーザ、あなたのアカウントのログイン履歴の頻度が、3日間更新が無いのは一体どういうことがあってのものですか?返信が無い不安を補ってくれていたあのログイン履歴が絶たれているのはミーザ、君に一体何があったというのです?もしかしたら他の別の男からもメッセージが来ていて、私からのメッセージからではなくその男のメッセージに引き寄せられ、挙句には騙されてミーザの身に危険でも及んだというのですか!?それともミーザを取り巻いているのかもしれない怪しげな男に悩まされ自ら早まったりしてしまったのではないですか!?ミーザ、ミーザ!頼むからミーザにそのようなことがあっての消息ではないであってくれ!ミーザは必要とされる存在なのです!少なくとも私が、ミーザの存在が私の心を躍らせ退屈で死んだような日々の鬱屈さに彩りを添えてくれているのであります!私はあなたミーザを愛しています!

 ですが私の方からも欲を申しださせて欲しい!それは君の更新であります、ログイン履歴の更新であります!そのミーザのログイン履歴の更新こそが、ミーザがまだ息吹ある身なのだとして私を安心させてくれるのであります!

 まさかミーザに何かあったことではないであって欲しい、ないであってくれ、ミーザに息吹あれ!

 ミーザよ、現世にあれ!!


 ミーザから肺を片方借りているアントノフより


―返信なし―


2月19日

 その息吹が美しき花の香りのごとく私を活気づける我が愛しきミーザへ


 あっ、あ!あああっ!ミーザ!我が愛しきミーザ!無事でありましたか!今さっきミーザのログイン履歴の更新を確認して、息の詰まる思いがパァッと解き放たれたところであります!今はもう夜10時です。昨日の一通を送って不安が一気に増大した私にはミーザの消息がなにより頭から離れず、もう20分おきにミーザのユーザーページを確認しないと冷静にはいることができないありさまでしたよ、しかし人間と言うのは、自分にとって大切な愛しい人間ほどその無事に関して極端な不安を抱いてしまうものですな。

 ただ、今はその安心からの肩の力が抜ける思いで頭から上手く言葉が出てこない状況にあります。書こうとして忘れてしまった内容は次回にすることとします。


 久しきその香りに酔い痴れ眠りにつくアントノフより

以下のブログに重複投稿済みです。

http://murahazure.blog.jp/archives/8199456.html

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