ハイヅリデテクルモノ
それは小さな穴だった。
とても人間が入れるような作りになっていなかった。けれどそれに魅入られ入ったが最後恐ろしい間に合うなどとは夢にも思わなかった。大人達をも巻き込み、恐ろしい目にあった私が体験した怖い話を聞かせてあげましょう。
私はクコ。
10歳。
好奇心が旺盛で、いろんなところに1人で探検するのが日課だ。
けれども、今日の日は悪かった。
友達がついてきたのだ。
何故それが悪い日かって?
行動が制約されちゃうじゃない。
あっちこっち行きたい場所はたくさんあるのについてこられちゃなかなか行けない。秘密基地なんかもそう。
そんな時たまたま見つけたのがこの小さな穴。
人1人も通れないくらい小さな穴で、中は広そうに空洞が広がっている。
持っていた懐中電灯の明かりで内部を照らすと思ったよりも広いことがわかる。
私は興奮した。
だって今までこんな場所通ったこともなければ聞いたこともなかったから。
大人達に知られてもきっといいことなんかないだろう…。
そこでついてきた仲間の中で1番小さな子に頼んで中を見てきてもらうことにした。
1人では怖いと言うので何人かで入って行った。
しめしめ今のうちに…と思った時、突然悲鳴のような声が聞こえた。
洞窟内から聞こえてくるようだ。
洞窟内から何かが出てきた。それはさっきまで履いてた子の靴の片方だけ…。他は何も出てこない。しばらく待ってみたが一向に出てくる気配がないため、私が中に入る事に。それはそうだ。言い出したのは私なんだから。
狭い通路は短くあっという間に空洞内に入る。そこで見たものとは…。
辺りが真っ赤に染まっていた。
まるでペンキをぶちゃけて付けたようなつき方をしていた。
中に入った子達は一体どこに消えてしまったのだろう…。
不安になった。
そこで私はここから大声で外にいる子達に助けを呼ぶように伝えた。大人達がこれば怒られるかもしれないが、今の状況を放って置くわけにはいかなかった。
私の他にもう1人中に入った子がいたので、2人して中を捜索する事にした。しかし天井は高く、子供の目線では遠くて見えない。
…とその時、ポタッと何かが顔に当たった気がした。懐中電灯の明かりで見てみるとそれは確かに真っ赤だった。
「きゃーっ!!」
一緒に入ったこの悲鳴が洞窟内でこだまする。
「どうしたの?」「あっ、あれ…。」そう言いながら指をさした先を照らしてみると何かの塊が山のように積み上げられていた。
その側へ恐る恐る近づいて行くとそこにあったのはついさっきまで一緒にいた子達だということがわかった。つまり…死んでいたのだ。
私も慌ててしまい、もう1人の子と焦って一緒に出口に向かった。だが小さい穴だ。一人づつしか通れないことに慌てて気付いていなかった。
仕方がないので私は後からその子について行くことにした。
しかし後ろがきになる。
あの子達のこともあるが…。大人が入ろうとするなら壊さないといけないだろう。
穴は頑丈だろうか?
じゃないと死体が埋まってしまう。
そんなことを考えていたら後ろから風が吹いて来た。
それもものすごい風だ。
後ろから押されるように前へ前へと進んで行く。その時生臭い匂いも一緒に運ばれてくる。
出口に近づいた時突然何かに足を掴まれた。
前の子は気付いていない。
どんどん距離が広がって行く…。
「たす、け、て。」私の叫びは風の音にかき消されてしまっていた。
どんどんひきづられて行く。
洞窟内に戻されようとしていた。
そこでようやく前にいた子が私のことに気づき真っ青な顔をしてどんどん出口へとはって行く。そこには大人達が数人で立っていた。どうやらここは入ってはいけない場所だったようだ。そんな張り紙など一枚も見ていない。剥がれ落ちてしまっていた。
私は大声をあげて叫んだ。届いて!お願いだから届いて!!
気付いた大人が一人私の姿を見、その後ろにあるものの姿を見た。真っ青だ。何があるのが怖くて後ろを振り向けない。
大人達はなんとか中に入ろうと穴を大きくすることにした。
手にしているのは大きな石。手当たり次第に叩く。
時間がかかるが、それでも私は待った。
その間も私は穴の奥にひきづりこまれようとしている。それでも抵抗し続けた。
一瞬の隙を見逃さず私はそれから逃げ出すことに成功した。
履いたら両手足を必死に前へ出し、出口から出た。
たすかったぁ〜。
正直な気持ちだ。
それでも私が頼まなければ犠牲者は出なかったのかもしれない。私がここに入ろうとさえしなければ…。
「クコ、中には何人入っていったんだ?」「確か…3人です。だったと思う。」
私の記憶が曖昧なのは恐怖を体験したことによる一時的な記憶喪失のせいだろう。そう言っていた大人もいたっけ。
大人が中に入るには後少し大きくしなければならない。
皆真剣に石で穴を広げようとしている。
そこに遠くから何かを持った大人も走って来た。どうやらシャベルのようだ。
二本しか用意が出来なかったらしいが、それでもないよりはいい。それに気になるのはこの生臭い匂い。
穴の中から臭ってくる。
はっきり言って臭い。
その正体が死体だとは口が裂けても言えなかった。まあもう一人も同じらしい。
あんなもの見てしまったから体の震えが止まらない。私だって同じだ。
同じものを見たもの同士で肩を寄り添いあってその場に座っていた。
暫くすると穴が大きくなりようやく大人の人一人が通れる大きさになった。その間崩れ落ちることはなかった。
大人達は慌てて入っていく。
そこにあるものがなんなのか確かめに…。
そして自分たちが何に向かっているのかもわかっていなかった。
暫く静かだったが、「うわっ?!」「ギャーッ。」などと悲鳴が聞こえる。そこで見たのだろう…。3人の無惨な遺体の山を。
そしてもしかしたら…私の足に傷をつけたものに襲われているのかもしれない。
もう一度入らなくては…。
私は一緒にいた子の手を離し穴の中へ入って行った。
そこで見たものは、腰を抜かしてしまっている大人や、倒れている大人もいた。その体からは何かが出ているようだ。多分血だろう。
洞窟内を手当たり次第明かりで見て回ったが、それらしきものは何もいない…。
大人達に聞いてもわからないの一点張りだ。
それはそうだ。早すぎて見えないだけなのだろうから。
それでも必死に何かを探した。
見えない何かを。
そこで床に倒れている大人の傷口を見て見た。鋭い何かで切られたような跡がある。
まるでカマイタチだ。
傷はあるが動くことが可能なので他の大人達と一緒に洞窟内を出ることにした。
死体はそのままにして。
洞窟内から出るとき、またしても風が吹いた。
そう、まるでもう来るなとでも言っているようだ。
だが死んだ子供達を連れ出さなくてはならない。
そこでお祓いを頼み、それから遺体を運ぶことになった。
第一発見者の私ともう一人は一緒に入っていく。
怖かったぁ〜…正直な気持ちだ。
でも、中に入ろうとしたその時に何かがさっと通り過ぎた。そんな気がした。
そして穴の中を覗くとそこにいたものは…真っ黒の塊だった。それがグニャグニャ動いているのだ。とても生きているものとは思えない。
「きゃーっ!」2人して悲鳴をあげ、その場から逃げ出した。大人やその場にいた方を残して。
その後、しばらくして戻ると誰もいなかった。
もう帰ったのかなと思い、その場を後にしたが、結局あの影の正体はなんだったのか、亡くなった子供達がどうなったのか今もわからない。(消えてしまったのだ。皆んな。今では知っているものは私達以外誰もいない。)




