イタズラと罪
「慧ちゃんは他の子が好きなの?」
15㎝の身長差から見つめる彼女の瞳は綺麗な茶色な瞳
その瞳はかすかにうるんでいた
「俺が好きなのは遥香さんだけですよ?」
いつものように優しく撫でて
彼女の唇に優しいキスをした
ただ、僕は知っている
僕をこんなにも虜にさせる君は
本当は僕を好きじゃない事を
それでも傍に居たいと願う僕は頭がイカレているのかもしれない
家に着いた僕らは
二人だけの時間を過ごす
ただ、同じ空間にいるだけの
そんな時間
テレビをぼーっと見ていただけな僕に
少しの体重がかかる
さっきまで携帯をいじっていた彼女が
僕に寄りかかりながら寝ていた
「遥香さん?」
彼女からの返事はない
優しく抱き寄せて
持ち上げ、ベッドまで運んで
僕は彼女のおでこに優しくキスをした
「好きになってよ...おやすみ。遥香さん」
僕は彼女の隣で目を閉じた
シングルベッドに二人
触れられない
そんな距離感
どうしてなんか今の僕にはわからなかった
目覚めた時には彼女は隣にいなかった
仕事かな
僕はホットミルクを飲んだ
なんとなくソファに座って
なんとなく寝転がって
なんとなくテレビをつけて
なんとなく携帯を持って
なんとなく彼女の連絡先を見つめて
癖になったのかな
こんな風に見つめてるだけの自分
携帯から着信音
彼女からだった
「もしもし」
「どうしたの?遥香さん」
電話での遥香さんの声は少しかすれていた
「ううん、やっぱりなんでもないや」
「遥香さん」
「ん?なーに?」
僕はツボを飲み込んで
「帰り待ってるよ」
僕にはこんな事しかできないなんて
情けないけどこれが僕の役目
彼女が犯した罪を見ないフリして
見守って支えて
いっその事
浮気でもしてやろうか
僕を好きなんて人いるのだろうか
傷口は広がるばかり
「慧ちゃん」
帰ってくるまに
僕の腕の中に来る
「おかえり」
様子が可笑しいのももちろんだが
また、男の人の臭いか...
溜息が出るのはそれだけじゃなく
この前と臭いが違う
何人もいんのか
「今日ね、休み貰ったの。今度の連休でどっか行かない?」
彼女は人ごみが苦手で
あまり社交的な人でもないし
外に出るのは必要以外には出ない
「いいけど、遥香さんはいいの?」
「慧ちゃんとなら行きたいなって」
不覚にも照れてしまった
好きでいっぱいになった
「慧ちゃん?」
上目使いで見つめないでよ
照れてしまう
「うっうん」
「行きたくない?」
「えっ行きたいです!」
所詮、僕も彼女からしたら
簡単な男なんだなと思った瞬間だった
自然と繋がる手と手
見つめては視線を外して
「遥香さん、聞いてもいい?」
「どうしたの?」
「どうして僕なの?」
ずっと聞きたかった
どうして僕を選んでくれたのか
「この人がいいなって思ったからかな」
下向きながら彼女はそう答えた
ここからが本当の悲劇
1つの着信音
彼女は携帯を一度見て
出なかった
「でないの?」
「うん」
「どうして?」
「言わなきゃだめ?」
「いや...そうゆうわけじゃ...ないよ」
初めてだった
遥香さんからの返事でここまで絶対的に拒否する返事は
「慧ちゃん!」
彼女は強く僕の手を握った
「次、どこ行こっか!」
さっきよりも明らかにテンション高く
「慧汰くん?」
俺の名前を呼ぶその子は
「やっぱり慧汰くんだよね!めっちゃかっこよくなってる!」
「ひさしぶりだな」
「うん!久しぶり!元気だった?」
彼女は中学時代の唯一の女友達
「慧ちゃん」
俺の右手を強く引く遥香さんに
少しいじわるしたい気持ちになった
「恵美」
恵美に目で協力してほしい事を伝えた
恵美はすぐ察して
うなずく
「遥香さん、友達の恵美です」
「恵美っていいます!」
さっきよりも強い力で僕の右手を引く
「慧ちゃん」
「ん?」
「嫌い(小声)」
彼女は僕に背を向けて
走り出した
すぐに追いかけて後ろから抱きしめた
「ごめんね...ごめん」
「嫌い..。離して」
「許してください」
彼女は僕にこんな言葉を言うのです
「私以外の女の子と話さないで」




