猫系女子は楽じゃない
ある日私は、『猫系』というだけで異世界に飛ばされた。
私はこの世でうんと希少でデリケートな猫系女子。人づきあいは気まぐれが一番楽。なんだかんだでやっぱりマイペース。絶滅危惧種。飾れない、偽れない、なのに不器用。
ねこじゃらし好きといった風に変なとこで神経質なためけむったがられること多々。
最悪なことには、なぜか、女の子の中に溶け込めない。男の子だと犬っぽい男子に結構話しかけたり絡まれたりするがその中には友達と呼べる人はいない。
ペットの小型犬とはよくしゃべる。仲良し。
犬系の人に関わると、そうでない不良にも絡まれたり相当な厄介ごとに巻き込まれて先生にマークされたり自分の人生の問題をより一層深刻にして人生破壊されるからほどほどにしなくてはならない。
それなのに、犬系男子には…………
体育でランニングしてる時になんとなく近づいてくる、
やたら『わりい、答案用紙見せて』とか『さっきの授業寝てたノート見せて』と絡まれる、
さりげなく微妙に他の話を交えながら私の噂を遠くから聞こえるようにしてくる、
デレデレしてる、
怪我してた時にそっとバンドエードくれる、
はぶられそうな時にそっと話をふってくれる、
などという風にすごく懐かれたり気を遣ってもらうこともある。
ちなみに知り合いで猫系男子は二人いるけど『まぶだち』だから関わっていくとそのうちいつか殺される。『まぶだち』でないと彼らは生きていけないんです。
猫系の世界は、猫系が絶滅危機に瀕しているので複雑なんです。
友達(女) はたったの二人。いるならまだいいだろと思われるかもしれないが、
それでも完全に子供扱い。子供扱いされるキャラクターであることは構わない。
しかし子供扱いばっかりじゃ成長できない!!
このまま進学して高校生になってしまったらおそらく私の未来
終わってる。
これはやばい。
社会に出たら女である以上、女の世界で上手くやっていけなくては食いっぱぐれてしまうかもしれない。社会に投げ出された時、私は一体どうすればいいのか!!
やばい。
そういうわけで無理を覚悟で茶道部に入部した。
しかし誰も私に話しかけてこないし苦痛に顔を歪めそうになっているのは私だけ。茶道やそれを通じた女性の交流にもともと興味がないことが分かりきっているのか。
みんなぺちゃくちゃぺちゃくちゃしゃべっているのだが、すべて宇宙語に聴こえる。
これは一種の病気かもしれない。話の内容について、また、彼女たちがその話をする動機というものについての実感が湧かないため、関わったとしても心の内を読もうとしないことがうつ病やそれ関連のその他もろもろの病気の発症を避ける一番有効な手段と思われた。ちなみに一回それをやり過ぎた時に吐いたことがある。それ以来人づきあいで無理しないことを心掛けている。
私が真の友情を育めそうな友達が一向に出来ず、部活動の終わった放課後、ふらふらの足取りで階段を上っていると、
誰かがすさまじい速さで階段を上ってくる音が聴こえた。
とその瞬間後ろから右足をひざかっくんをされ、思わず転びそうになった。
クラスの不良の一人だった。生徒会で遊んでばかりいる(らしい)犬系の男子。ちょっと尖ったイケメン。エロいとモテるのでモテる。
やんちゃ。他の女子との方が仲睦まじい。いろんな意味で。
「や~い!ふらふらでやんの。男女~!無理すんなよ~!」
「余計なお世話じゃ~」
だだだだっとかけていった。そうだよ、どうせ男女だよ、言われなくても分かってるさ。
どうせなら、女の子の「大丈夫?」とか、「あまり無理しないでね」とかいう言葉が欲しかった。そうじゃなくても次くらいにあれがあるくらいでいいよ。こういう犬系に所属部を詮索されるくらいだから女の子の友達ができないのだ!
それとも逆なのか。
でも「お前は自然体でいた方がいいよ」ということかもしれないと思って、なんとなく嬉しいんだけど善い解釈は危険を招くだけであると自分を説得させる。
それから、下校時。
うだうだしている同級生の野球部の少年少女たちを追い抜いた。
そして、下駄箱のある玄関を出て校庭を出た私を呼び止めた一人の大人な感じの女性が私に話しかけてきた。なな、なんと犬耳を生やし、剣を携えた勇者の恰好をした顔かたちの整った女の人だ。
「私に付いてきて手伝いなさい、私たちはモンスターを倒して強くなって、『月の雫』を魔王に奪われる前に手に入れなくちゃなりません!」
「えぇ!?」
「ちなみにセーブポイントがあって何度もやり直し利くから大丈夫よ」
『月の雫』には、勇者の双子の妹である人を癒す力があるんだそうです。
それから1時間後。
私はその犬系と思われる女子と結構いい感じで意気投合できるようになった。
少し私も成長して大人になったような気がした。
そして、私は犬系男子にも負けない、常識破りの重大な使命を背負うことになった…..??