そこでただ、微睡むだけの話。
ああ、ねむい。
私は全身をゆったりと包む、心地よい気だるさに身を任せる。
時刻は昼を過ぎている。腹の虫も今は休憩の時間だ。
(……どうしようか)
遠くで車が走る音がした。そうか、午後の仕事に追われる人達もいる。
私みたいにこうして横になって微睡んでいる人の方が少数なのだ。
大変だなあ、と思う。思うだけ。だって今の私は休憩中なのだから。
(……寝てしまおうかな)
今すぐに寝たいという程ではないけど、眠いのは確かだ。
きっと、目を瞑って暫く大人しくしていたら眠れるだろう。だけど、今寝たら夜に響く気がしてならない。それは困る。
(皆が寝ている時間に起きているというのは、どうにも落ち着かない)
夜更かしは、夜更かしをしたい時にするから良いものなのだ。眠くないからという理由で夜に起きているのは好きじゃない。
よって、今のうちから寝てしまうことは避けたい。しかし、眠い。
(散歩にでも行こうかな……)
ちらりと顔を横に向ける。空は快晴、外出には申し分ない。
しかし行きたい場所は無い。遠出する気分でも無い。無理に近場をうろつくくらいなら、此処で微睡んでいる方が満たされる。
こうして私は結局動かない。
忙しない世間も怠惰な自分も気付かない事にして、ふわふわとした眠気に再び身を任せた。
きっとこれが今一番の正解であり、私が心から望んでいる事なのだ。
「……アンタ、猫の癖に生活リズムが完全に人間だよね」
「にゃあ」
飼い主の呆れたような感心したような声に、
私は微睡みの中、尻尾を揺らした。
END.