表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

短編集

そこでただ、微睡むだけの話。

作者: 熊野こずえ


 ああ、ねむい。

 私は全身をゆったりと包む、心地よい気だるさに身を任せる。

 時刻は昼を過ぎている。腹の虫も今は休憩の時間だ。


(……どうしようか)


 遠くで車が走る音がした。そうか、午後の仕事に追われる人達もいる。

 私みたいにこうして横になって微睡んでいる人の方が少数なのだ。

 大変だなあ、と思う。思うだけ。だって今の私は休憩中なのだから。


(……寝てしまおうかな)


 今すぐに寝たいという程ではないけど、眠いのは確かだ。

 きっと、目を瞑って暫く大人しくしていたら眠れるだろう。だけど、今寝たら夜に響く気がしてならない。それは困る。


(皆が寝ている時間に起きているというのは、どうにも落ち着かない)


 夜更かしは、夜更かしをしたい時にするから良いものなのだ。眠くないからという理由で夜に起きているのは好きじゃない。

 よって、今のうちから寝てしまうことは避けたい。しかし、眠い。


(散歩にでも行こうかな……)


 ちらりと顔を横に向ける。空は快晴、外出には申し分ない。

 しかし行きたい場所は無い。遠出する気分でも無い。無理に近場をうろつくくらいなら、此処で微睡んでいる方が満たされる。

 

 こうして私は結局動かない。

 忙しない世間も怠惰な自分も気付かない事にして、ふわふわとした眠気に再び身を任せた。

 

 きっとこれが今一番の正解であり、私が心から望んでいる事なのだ。


「……アンタ、猫の癖に生活リズムが完全に人間だよね」

「にゃあ」


 飼い主の呆れたような感心したような声に、

 私は微睡みの中、尻尾を揺らした。



 END.

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 最後の最後まで猫だというのを気づかせない文章力が凄い! [気になる点] 特にないです。 [一言] 私も猫を飼っているので、猫の気持ちがよく解ったような気がします。
[良い点] スローテンポな日常をうまく表現できていて、とても気に入りました。 オチも素敵だと思いますし、短い文章でしっかりとまとめあげているのがすごいと思いました。 このような作品が書ける亀吉さんが…
2013/07/30 01:10 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ