表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

― 3 ―

 慌てて電車を降りた。

 彼女は、まだ言葉を発し続けていたから。


 下りの電車が発車する。

 女子高生が、ゆらゆらと、電車の進行方向へと、追いかけるように歩いていく。

 俺は様子を見ながら後退してホームの壁に寄りかかる。


「大丈夫、あたしは、きっと」


 大丈夫じゃない。

 そんな泣き腫らした顔で。


「キラい」


「大っ嫌い」


「嘘つき」


「浮気者」


「キラい」


 声を殺して、現実に戻り切れなくて。

 ここはもうあんたの世界じゃないのに。


 カンカンカン…

「2番線に電車が到着します。危ないですから…」


 アナウンスと共に、彼女が立ち上がる。


「明日、あたしがいなくなってたらどうする?」


 掠れた声が聞こえた気がした。


 俺がいなくなったあの日、彼女がいなくなったあの日。

 俺が見たものが、彼女の見た光景になるならどんなに楽だったか。

 こんな現実が、まだマシかもしれない。


 黄色い電車が、見えてくる。

 女子高生はその電車をぼんやり見つめている。


 ドサッ


 カバンをホームに置く。というよりは、落とす。


「あたしは、本当のあたし、好きになってくれる人がいい」


 ゆらゆら。

 どうして、わがままなんだろう。

 昔も今も。

 自分を認められないまま。

 果てなんて見つけられないまま。


 女子高生と目が合う。

 咄嗟に、苦い気持ちが溢れる。


「ごめんね」


 俺には、こう償うしかなかった。

 現実に引き込まれるようにして、俺はまた虚構へ飛び乗る。

 飛んでいく。

 彼女の虚構が止まりますように。

 俺の見る光景が、キミの見る光景になりますように。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ