表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
千年王国計画 〜第三王子による長期国家運営録〜  作者:
人材確保編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/16

動かぬ大地、動かされる価値

地属性貴族家当主――

 バルドゥス・グラニオン。


 その名は、魔物国において

 「動かぬ大地」そのものを意味していた。 


 地属性貴族家は、魔物国でも特に古い家系だった。


 「不動」

 「堅牢」

 「一対一の強者」


 それが、この家の誇りであり、価値基準だ。

 アルト・ノクティスは、視察という名目で、その訓練場を訪れていた。

━━━━━━━━━━━━━━━━━

 地属性貴族の誇りは、単純明快だった。


「地は、動かぬもの」

「動くのは、己の拳だ」


 バルドゥス・グラニオンの言葉に合わせるように、

 訓練場には岩のような戦士たちが並んでいる。


 一対一。真正面からの力比べ。


 アルトは、それを一通り眺めてから、静かに言った。


「……地属性なのに、地を使っていない」

 バルドゥスは、聞こえなかったふりをした。


「他には、いないのですか?」


 アルトの問いに、バルドゥスは渋い顔をする。


「……一人、畑にいる。落ちこぼれだ」


 城壁の外れ。

 小さな畑で、鍬を振るう大柄な青年がいた。


 無防備な姿勢。のんびりした動き。


「おい」

 アルトが声をかけると、青年は振り返る。


「……オデ?」

 一人称からして、いかにも田舎者だ。


「名は?」


「グラン」


「地属性か」


「そうだ」


「戦うのは?」


 グランは首を振る。

「……苦手だ」


 バルドゥスが吐き捨てる。

「一対一では、精鋭にも獣にも勝てん」


 アルトは、しばらくグランを観察してから言った。


「勝負をしよう。狩りだ」


 バルドゥスが怪訝な顔をする。


「狩り?」


「同じ森で、一刻。

 獲った獣の数で決める」


「馬鹿馬鹿しい」

「我らは戦士だぞ」


「だからこそだ」

 アルトは即答した。


「国は、戦士だけでは守れない」

━━━━━━━━━━━━━━━

【作戦会議】

 森へ向かう途中、アルトはグランを呼び止めた。


「グラン、地をどこまで動かせる?」


「……広く、浅くならどこまででも」


「壊すのは?」


「苦手だ」


「なら、壊す必要はない」

 アルトは地面に簡単な図を描く。


「ここに谷がある。獣は、逃げるとき高い方から低い方へ流れる。」

 だから――」

 指で線を引く。


「逃げ道を、一本に絞る」

 グランは、じっと図を見る。


「……揺らすのは?」


「局所的でいい。疑似地震だ。

 怖がらせて、考えずに走らせる。

 グラン、できるか?」


 少し考え、グランは頷いた。

「……できる」

━━━━━━━━━━━━━━━

【狩りの始まり】


 精鋭たちは、森に散った。

 一体ずつ獲物を追う。力で制圧する。

 それが、彼らのやり方だ。


 一方、グランは、アルトが指示した地点に立ち、地面に手をつく。


「……今か?」


「もう少し待て」


 獣の群れが、森の中央に集まった瞬間――


「今だ」


 ――ドン。


 地面が、ごく狭い範囲で揺れた。


 獣たちは驚き、アルトの描いた線どおりに走る。


 高低差、地面の柔らかさ、逃げやすい方向。

 すべてが、誘導だった。


「次、罠だ」


「……了解」


 グランが魔力を流す。

 地面が崩れ、獣たちは一斉に落ちる。


 深くない。だが、逃げられない。

 精鋭が一体倒す間に、罠には十数体の獣が捕らえられていた。


「……何をした」


 バルドゥス・グラニオンは、言葉を失っていた。


 アルトは静かに言った。

「彼は、地を武器にしていない。

 地を、盤面として使っている」


 アルトは、グランを見る。


「力は十分だ。使い方を知らなかっただけだ。

 彼を、もらう」


 バルドゥスは、苦々しく顔を歪めた。


「……勝手にしろ」


 アルトは、グランに言った。


「グラン、来るか」


 グランは、少し考えた。


「……オデ。考えるの、苦手だ」


 アルトは即答する。

「考えるのは、俺がやる。グランは、地を動かせ」


 グランは、ゆっくり笑った。


「……それなら、行く」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ