第二王女 独白
結果は、すでに数字になっている。
死者、零。
暴動、未発生。
軍の投入、なし。
王家の名、未使用。
報告書を閉じ、第二王女は指先で机を軽く叩いた。
(及第点)
感想は、それだけだ。
第三王子が何を考え、何を恐れ、何を背負ったか。
そんなものは、評価対象ではない。
王とは、結果を出す装置だ。
感情は誤差であり、理想はノイズであり、
倫理は条件次第で変動する数値にすぎない。
(古い貴族は、力で測る。
武闘派は、血で測る。
日和見は、安全で測る)
それぞれ、間違ってはいない。
だが、それぞれが測っているのは、自分にとって都合のいい価値だけだ。
(第三王子は)
第二王女は、ふと考える。
(何で測った?)
秩序でもない。
武威でもない。
安定でもない。
彼が測ったのは――
(継続可能性)
今この瞬間をどう終わらせるかではなく、
「次も同じ手が使えるか」を考えていた。
それは、短期的には弱く、長期的には厄介な選択だ。
(王向きだ)
冷たく結論づける。
王とは、賞賛される者ではない。
嫌われ、誤解され、それでも続ける者だ。
(忌み子を救った?)
いいや。そんな幻想はない。
(民を救った?)
それも違う。
第三王子がやったのは、破裂を一度、先送りにしただけだ。
(それができる者は、少ない)
多くの者は、今すぐ終わらせるために、未来を切り捨てる。
第三王子は、未来を残すために、今を曖昧にした。
(危うい。だから、面白い)
第二王女は、視線を窓の外へ向けた。
王城の外では、今日も何事もなかったかのように、国が回っている。
だが、盤面は確実に動いた。
貴族たちは、第三王子をどう扱うか、計算を始めている。
(次は、もっと明確な問いを投げる必要がある)
曖昧さでは、いつか必ず限界が来る。
血か。
権力か。
切り捨てか。
選ばせなければならない局面が来る。
(そのとき、彼は、どの価値で測る?)
第二王女は、答えを予想しなかった。
予想は、期待につながる。
期待は、判断を鈍らせる。
(私は、ただ見る。壊れるなら、それまで
生き残るなら――)
その先は、考えない。
それが、彼女自身の価値のはかり方だった。




