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千年王国計画 〜第三王子による長期国家運営録〜  作者:
人材確保編

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16/16

評価は、声にならない

 戦が終わった翌日。


 最初に変わったのは、命令でも、配置でもなかった。

 視線だった。


【第一王子派・前線】


「……生き残ったな」

 焚き火のそばで、兵士が呟いた。


「勝った、はずなんだが……」

 装備を外しながら、別の兵が言う。


「正直に言うとさ。

 第三王子殿下の側の部隊……楽だった」


「楽?」


「死ぬ気で 突っ込まなくていい。

 退く場所が、最初から決まってた」


 誰も、第一王子を悪く言わない。


 だが――

 比較は、止められなかった。


「命令が、分かりやすいんだ」

「やることだけ、やればいい」

「余計な気合は、いらない」


 それは、第一王子派では口に出せない言葉だった。

━━━━━━━━━━

【第二王女派・執務区画】


 書類の山。

 官吏たちは、静かに仕事をしている。


 だが、会話の端々に、変化があった。


「この案件…

 第三王子殿下の周辺を通した方が、早いですね」


 誰かが、小さく頷く。


「差し戻しが、来ない」

「基準が、明確だから」


 評価は、感情ではない。

 効率だ。


「派閥色が、ないんですよね」

「だから、責任の所在がぼやけない」


 それは、第二王女派が誇ってきたはずの強みだった。


 だが今は――

 別の場所にあった。


 離脱というほどのものではない

 誰も、宣言しない。


「第三王子派に移ります」とは。

 

 ただ、忙しいから、今の配置が合っているから、

 一時的な応援だから、


 そう言って、戻らなくなる。


 第一王子派では、前線経験者が後方に残るようになり、


 第二王女派では、有能な官吏ほど調整役として

 第三王子周辺に回された。


 理由は、どれも正当だ。

 評価は、口にしない。


「第三王子殿下って……」


 誰かが、言いかけて、止める。

 代わりに、別の言葉が出る。


「……やりやすい」


 それだけ。


 だがその一言が、すべてだった。

━━━━━━━━━━

【ルシエル視点】


 ルシエルは、それを遠くから見ていた。

 近づいてくる人。目を逸らす人。


 嫌悪も、警戒も、まだ消えない。


(……選ばれている)


 第三王子が、ではない。

 やり方が。


「……静かですね」

 ぽつりと、言う。


「そうだな」

 アルトは答える。


「人が動くときは、大抵こうだ。

 声が大きくなるのは、後からだ」

━━━━━━━━━━

 その夜。


 第一王子派の名簿から、数名の名前が自然に消え、


 第二王女派の予定表には、「調整中」という 空白が増えた。


 どれも、小さな変化。


 だが――

 戻らない変化だった。


 誰も旗を掲げていない。

 だが現場では、すでに判断が下され始めていた。


 第三王子は、まだ何も宣言していない。


 それでも。

 人は、勝手に集まり始めていた。

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