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千年王国計画 〜第三王子による長期国家運営録〜  作者:
人材確保編

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11/17

燃え続けるとは、何か

 夜。


 火属性貴族の訓練場は、

 昼の喧騒が嘘のように静まり返っていた。


 焦げた地面。崩れた標的。何度も焼き直された跡。

 勝ち続けてきた証だ。


 だが――

 今夜、それは違って見えた。


 ザルディオ・フレイムロードは、

 ゆっくりと歩きながら地面を見下ろした。


(……ここに残っているのは、勝者の痕か)


 それとも、


(燃え尽きた跡か)


 思い返せば、火属性の戦士は皆、同じだった。


 前に出て、燃え上がり、倒れる。

 それを誇りだと教えてきた。

 早く燃える者ほど、優秀だと。


(だが……)


 今日、見た光景が、その前提を崩していた。


 燃やさなかった火。

 残した火。

 退路を確保し、兵を生かした火。


 ――それでも、勝っていた。


 脳裏に、痩せた青年の声がよみがえる。


「燃やす量を間違えると、己も焼かれることになる」


(火が、自分を焼く……?)


 そんな発想を、これまで一度でも教えただろうか。


 そして、光を宿した少女の言葉。

「あたたかい火は、近づいても死なない」


 ザルディオは、無意識に拳を握っていた。


(近づいても……死なない火)


 それは、戦場では不要だと切り捨ててきたもの。


 だが――

(守る場では、一番必要な火ではないか)


 第三王子、アルト・ノクティス。


 彼は、火を否定しなかった。

 戦士を侮りもしなかった。


 ただ、別の使い方を示しただけだ。


(あれは……破壊者ではない)

(価値を、組み替える者だ)


 ザルディオは、空を見上げた。


 炎の属性を持ちながら、

 炎を振りかざさない王子。


 人を集め、役割を与え、何かを始めようとしている存在。


(……火も、前に出るだけでは足りなくなるのか)


 答えは、出ない。

 だが、胸の奥で小さく灯るものがあった。


 それは、これまでのように

 一瞬で燃え尽きる火ではない。


 消えずに残る、違和感という火。


(……まだ、認めるわけではない)


 ザルディオは、そう自分に言い聞かせる。

 だが同時に、確かに理解していた。


 今日、自分の中の何かが

 初めて燃え残ったことを。

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