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TS、部活に入る 1

 放課後、借りた教科書をC組の友達に返しに行った。教室に戻ると、担任の篠塚先生と河合が、深刻そうな顔つきで話していた。


「それじゃあ、河合さん。そんなことで宜しく頼むわね」

「はい、先生。善処してみます」


 オレは先生と入れ替わるようにして、河合の隣の席に座った。


「河合、先生と何かあったか?」

「あったあった。あのね、拓巳君。ボランディア部って知ってた?」

「いや、初耳だが」

「ボランディア部が、その昔、この学校にあったんだって。けど、部員がいなくなって、早3年。今では、名前だけの幽霊な部活に」

「へー、そんなのがあったんだ。それで?」

「うん、それでね。部員がいた頃は、地域ボランディアなんかやってて、近隣の空き缶拾いしたり、幼稚園なんかで紙芝居をしたりしていたんだって。ちょっとそういうのっていいかもねー」

「確かに、悪くないよな」

「それで、このまま名前だけの存在になって、廃れてしまうのは惜しいんじゃないかって。そう職員会議で議題になったみたい。だから、先生が、部員になってくれそうな人に心当たりないかって尋ねてきた

んだ」

「うーん、そうか。なら、やってみようか?」

「え? それって、私と拓巳君とで、部活をするってこと?」

「そうそう」

「それ、いいかも!」


 河合は、パチリと指を鳴らした。


「相沢さんと加藤さんもどうかな?」


 オレは、二人を見遣る。


「あ、ゴメン。私、女バスやってるから。どうにかレギュラーになったばかりだし」

「あたしもゴメーン。いや……実のところ、推しの追っかけがあって」


 相沢さんと加藤さんは、手を合わせつつ断った。相沢さんは女バスで、加藤さんは推し活か。


 4人で少し喋っているうちに、相沢さんが部活に行かなきゃと慌てて去って行った。加藤さんも推しのイベントがあるそうで、急いで帰った。


 オレと河合は、取り敢えず職員室に行くことにした。二人して篠塚真由美先生の所まで行き、ボランティア部に仮入部してみる旨を伝えると、彼女は大喜びした。


 先生は、2つ、3つ注文をつけた。オレ達はそれを聞き、お辞儀をして、職員室から出た。


 河合と一緒に、1階から3階まで階段で上がっていく。ウチの学校は、3年の教室と職員室が1階にあって、学年毎に階が上がっていく。


 3階に着いた。1年の教室を横切っていき、一番端の部屋に着いた。


「お邪魔しまーす。って、開かない!」


 河合が先生から預かった鍵で開けたものの、扉が開かないようだ。彼女に代わって、オレが扉を押し開けた。何年も使われていないせいか、ドアの滑車の滑りが悪くなっていたみたいだ。


 部室にはいくつかの机があり、横一列に並んでいた。他に、書類や本を入れる棚がある。いずれにも埃が積もっていた。


「こりゃ部活動以前に、掃除しなきゃ駄目だな」

「そうねぇ」


 河合は、やれやれと頭を振った。そうしてから、気を取り直すと「私、隣のクラスに行って、箒とちり取りを借りてくるね」と言って、部室から出て行った。


 少しばかり待つと、彼女は箒とちり取りとバケツを手に持って、戻ってきた。オレは、バケツを彼女から受け取り、廊下にある手洗い場まで歩いた。

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